出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第四章:想う心と○○な味の……

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「……透さんとうまくいっちゃったらさ、もう俺とはエッチ出来ないでしょ?」

「……! し、しないよっ、好きな人としかしないって、言って……」

「だから、最後に一回だけしよっか、さっきの続き」

 俺が最後まで言い終わらないうちに、みっきーがとんでもない発言を被せてきた。

「いっ……一回だけって……駄目だって!」

 もーっ、何考えてるんだ、この人は! つか、もうすでに みっきーの手は俺の服の下を弄っているし!

「んーー、ケチだなぁー」

「……んな事にケチも太っ腹も、関係ないしっ」

「じゃあ、キスは? キスくらいいいでしょ?」

 背後から顎を捕らえて俺の顔を振り向かせると、唇を近づけてくる。

「そんなの、いいわけ!……や、やめっ、…… んっ」

 何とか避けようと、みっきーの膝の上でバタバタと暴れても、敢え無く唇を重ねられてしまう。顔を背けて逃げてもまた追いかけられて、また啄ばまれる。

「ちょっ、まじ、もっ、しつこいっ!」

 クスクスと笑いながら、何度もキスを仕掛けてくるみっきーは、完全に俺で遊んでいる。

「ほら、ちゃんと逃げないと、舌入れちゃうよ?」

 近づいてくるみっきーの顔を押し退けようとすると「キスに気を取られ過ぎ」と、言いながら服の下に入れた手に肌を撫でられる。

「……ふ、ぁっ……、」

 胸の突起に辿り着いた指に摘まれて、出したくない声を漏らしてしまう。

「あはは、感じやすいんだよね、直は」

「うるさいっ! も、やめ……てってば!」

 みっきーの膝の上から逃れようと前屈みの姿勢をとると、項に顔を埋められて、ねっとりと舐め上げられた。

 ――――その時、

「何やってんだよ!」

 大きな音を立ててドアが開けられて、怒鳴りながら部屋に入って来たのは……

「……桜川、せんぱい……」

 またもや、こんな場面を見られてしまって、背中に冷たい汗が流れた。

「なんだ勇樹、お兄ちゃんの邪魔すんなよ。森岡さんに誰も入れるなって言っておいたのになー」

「馬鹿か! 仕事もしないで、何やってんだよ!」

 ――うわーっ、桜川先輩なんかめちゃ怒ってる……。

「あ、あの、これはちょっとふざけてただけで……」

 俺が焦りながらも取り繕おうとしているのに、みっきーときたら何食わぬ顔をして「今からセックスしよーと思ったのにー」とか、言っているし……。

「とにかくっ! 仕事しろよ、兄貴」

 桜川先輩は眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら、冷めた切れ長の目で俺を睨み言い放った。

「わーった、わーった」

 桜川先輩の迫力に押されて諦めたのか、やっとみっきーが俺を解放してくれた。 

 ――よ、よかった……。本当にふざけてただけだとは思うけど……助かった……。

「あー、でも先に直を送ってくるわ」

 な? って、俺に同意を求めるみっきー。透さんのマンションまで送るって言ってくれてるんだ。

「あ、いや、いいよ。一人で行くから」

「ちゃんと行けるの?」

 なんかすごい心配してくれてるみたいだけど、子供じゃないんだから、ちゃんと行けるってば。

「ありがとう。でもちゃんと自分の足で行きたいんだよ」

 俺がそう応えると、ミッキーは「そうか」と言って、ニッと、口角を上げて微笑んだ。


 **


 みっきーの店を出ると、外の冷たい風が、少し火照った頬を気持ち良く掠めていく。

 これから透さんに会いにいくんだ。そう思っただけで、なんだか嬉しい。

 透さんに会えたら、ちゃんと自分の気持ちを伝えたい。

 どうなるかは分からないのに、なぜか気持ちはスッキリしてる。

 透さんのマンションまでは、電車で数十分。俺は背筋を伸ばして足を踏み出し、駅へと向かう。

「――おい!」

 だけど、数メートル歩いた所で、突然後ろから知った声に呼ばれて足を止めた。

 振り向くと、俺を追いかけて店から出てきた桜川先輩が立っていた。

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