出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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「それに、直はモテるんだろ?」

 ――え?

「可愛い顔してるもんね? 学校中の女を食ってるって、噂訊くよ?」

 それは、少しは当たってるかもだけど……。

「が……学校中なんて、そん……なこと、ないです」

「そうかなぁ、まあ、モテるのは分かるよ」

 桜川先輩がそう言うと、他の二人も同じように言ってくる。

「いいねぇ、可愛いナオくん。よりどりみどりで」

「今度、イイ女いたら紹介してくれるー? なんちって」

 苦しい会話が続いて、早く切り上げて帰りたいけど、なかなかキッカケをつかめない。

 ――それに俺……なんだか……

「……あ、あの、俺、そろそろ帰ります」

 早くこの場を立ち去らないと、いけない予感がする。

「え? まだいいじゃない。電車もまだあるでしょ?」

「……じ、実家に帰らないと、い、けないんで……と、遠……いから……」

 なんだか上手く喋れない……。

「えー、そうなんだ、じゃあ、引き留めちゃ悪いかぁー」

「す、みませ、ん」

 俺はそう言って立ち上がり、壁際の長椅子の所に置いてある、自分のジャケットを取りに行こうとした……。

 だけど何故か足が重い気がして、思うように動かない。

 目の前の柱に掴まろうと、手を伸ばしたけれど、遠近感が鈍くなっているのか、あると思った位置に柱は無くて、掴もうとした手は空を切り、バランスを崩してしまう。

「おーっと、危ないよ」

 伸びて来た桜川先輩の腕に支えられて、なんとか床に倒れる事は免れたけど……、

「……ッ」

 体に触れられた途端、どくんと心臓が跳ねて一瞬のうちに全身が熱く火照った。

「どうしたの?」

「あッ……だい、じょうぶ」

「大丈夫そうじゃないけど? そこの長椅子にちょっと座ろうか」

 そう言って桜川先輩は、今にも床に崩れ落ちそうな俺の体を引き寄せるように、腰に腕を回した。

 「……ッ」

 また、ビクンと体が戦慄く。

 腕を回されている腰の奥が熱くてドクドクしてる。

 ──この感覚は、まるで……。
 
 漸く椅子に辿りつき、這い上がるように椅子に座って、背もたれに身を預けた。

「なんか顔が赤いよ。熱、あるんじゃないの?」

 そう言って、桜川先輩が額に触れた途端にまた心臓が跳ねて、咄嗟にその手を払い退けてしまった。

 ゾクゾクと、甘い痺れが背筋を駆け上がる。

「あ、す、みません、俺、なんか……変……で……」

「ホント、変だね?」

 そう言いながら、桜川先輩は俺の隣に腰を降ろした。

 俯いて顔を隠している俺の前髪を、桜川先輩が指で掻き分けながら、クスクスと可笑しそうに笑う。

「…………だね」

 桜川先輩が、何を言ったのか、最初は聞き取れなかった。


「……え?」

 訊き返すと、桜川先輩は俺の耳元に顔を寄せる。

 今度は、はっきりとした低い声が耳に届いた。

「これはきっと、女の子食べ過ぎて、いい気になり過ぎた罰だね」

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