出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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 1月も4日にもなれば、お正月ムードも薄れてるだろうと思ってたけど、街を歩いてると、まだ破魔矢を持ってる人とか、福袋持ってる人とか見かける。

 まだまだ、おめでたいモードの人混みの中を、俺は一人でブラブラしていた。

 サークルの新年会の時間は19時からだから、まだあと1時間以上もある。

 会場となるバーは、何でもサークルの会長のお兄さんが経営してるバーらしくて、今日まで店は正月休みだから、新年会の為に貸切にさせてもらえるらしい。

 料理や飲み物などの準備は、女の子達が中心でやってくれるらしくて、1年なのに、俺は開始時間に入れば良いと言われたので、服でも買おうかなとブラブラしながら時間を潰していた。

 大通りの歩道を歩いていると、反対車線の車が、突然うるさくクラクションを鳴らした。

 俺は反射的にそちらを見遣り、向こう側の歩道に知った顔を見つけて、思わず立ち止まった。

 ――透さん……?

 遠くから見ても、背が高くてスタイルの良い透さんは、人目を惹く。

 俺は立ち止まったまま、歩いていくその姿をただ目で追う事しか出来なかった。

 ……透さんの隣に歩いているのは、バイト先のカフェにいつも透さんと一緒に来ていた人。透さんと別れて、別の人と結婚して、アメリカに行ったはずの彼女だった。

 彼女と透さんは腕を組み、二人で楽しそうに会話を交わしながら歩いていく様子が、大通りを挟んだこちらからでも、よく分かる。

 ――どうして……。

 なんで一緒にいるんだ、別れたんじゃなかったの? それとも、よりが戻ったとか?

 透さんのマンションのリビングに飾られていた写真が頭を過ぎる。

 啓太に言われて、今度マンションに行った時にまだ飾ってあったら、ちゃんと訊いてみようと思ってたんだ。

 なのに……。

 透さんは俺に全く気付かずに、距離がどんどん離れていく。

 二人は今から何処へ行くのか……、考えると胸の奥がツクンと痛み、息が苦しくなってくる。

 人が途切れなく行き交う歩道で、俺は暫く立ち尽くしていた。二人の姿が見えなくなっても。


 ****


 直接訊いてみないと分からない……。

 携帯で透さんのアドレスを呼び出しては、閉じる。 呼び出しては、閉じるを繰り返していた。

 訊いてどうするんだ。

 確かに曖昧な関係だと思う。

 お互いの気持ちを確かめる事をしていない。

 会う度に身体の関係はあったけども。

 セフレだと言われれば、そうだと思う。

 彼女と二人で楽しそうに、腕を組んで歩く透さんを思い出すと、やっぱり胸が痛くて息も苦しい。

 ――『早く、こうしたかった。直くんを抱きたかった』

 透さんの言葉を思い出して、また胸の奥に感じた痛みが段々と広がる。

 抱きたかったから、会いたかったの?

 そう考えると、息が苦しい。

 ――『本当は真っ直ぐ帰るつもりだったのに、直くんの可愛い格好に、思わず欲情しちゃったよ』

 やっぱり女性を抱く方がいいに決まってる。

 苦しい……。

 痛む胸の辺りをキュッと掴んで、大きな溜め息を吐いた。

 ……俺は……どうしたいんだ。この胸の痛みは何なんだ。

 透さんが、女性の方がいいと思うのと同じで、俺だって……。女の子の方がいいに決まってる。

 透さんとの関係は、ただ……、男同士でヤッてみたら意外と気持ちよくて、また機会があったらヤリたいと思ってるだけなのかもしれない。

 だから、セフレって言うのが一番正しいと思う。

 なのに……なんでこんなに胸が痛くて、息が苦しいのか。

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