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新しい年

67.プロポーズ

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 チカチカと視界を行き交う光に意識を呼び起こされた重盛は目を覚ました。
 珍しく日付が変わるまで起きていた真紘は起きる気配もなく、隣で静かに眠っている。白く輝くハリのある肌は陶器のようで、たまに息をしているのか心配になる。重盛は彼を起こさぬようにそっと頬に手を当てて体温を確かめた。
 王都に戻ってからずっとバタバタとしていて、予定が何もない日は久しぶりだった。
 
 昨日はレミーから連絡があったので、依頼を受けた礼として真紘と二人で夕食をご馳走になってきた。
 マリーとポールは無事に婚約。トランシルヴァ伯爵家との婚約もローザが積極的に動いているそうだ。
 一方、怪盗アンノーンは事件の翌日に隕石を盗りに来た。
 真紘に吹き飛ばされておいてよくもまあのこのこと現れたものだ、と重盛が感心するほどアンノーンはタフだった。
 対獣人用に撒かれた薬品のせいで重盛は苦い思いをしたが、その晩は真紘が甘やかしてくれたので良い思いもできた。アンノーンの言う通りになったのは癪に障るが、悪い薬、いい薬とは考えようである。
 レミーの作ったラタトゥイユを食べながら重盛はそんなことを考えていた。
 真紘はダブルビー社ととことん揉めているというレミーの愚痴を聞きながら、そうなんですね、大変ですね、たまにはレミーさんも休んでくださいね、なんて聖母のように穏やかな笑みを浮かべながら相槌を打っている。
 レミーはかなり童顔だが、酒が入ればそこらの四十の男と悩みはそう変わらない。タルハネイリッカではマルクスやノエルからも色々と相談を受けていたようだし、ブルームとも何度か連絡を取り合っていた。
 この年上キラーめ。
 年下の美人が尊敬した眼差しで自分の全てを肯定してくれるのだ。嫌な気分になる者などいないだろう。それでいて本人も年上の前では随分気を許している自覚はあるのがより質が悪い。
 いつの間にかへべれけになったレミーの背を擦って水を飲ませる真紘をじっと見つめていると、重盛は明日までお酒は我慢だよ、と笑われた。
 アルコールじゃなくてお前がほしい、と言ってしまえるほど素面で酔っ払ってはいない。
 不満を顔いっぱいで表現すると、真紘は困った様に眉をハの字にして微笑んだ。

 追懐を繰り返していると真紘が寝返りを打ち、向かい合うような体勢になった。
 重盛は自分の半分もないのではと思う程薄い腰を引き寄せた。長い銀色の髪を鼻で掬うように距離を詰めると、人肌の柔らかい香りがした。
 世界で一番好きな匂いだ。
 人より少し低い体温が腕の中でもぞもぞと体勢を変える。納まりの良いところに落ち着いたのか、穏やかな寝息が鎖骨あたりを撫で始めた。それは眠りに誘うには十分な温もりで、重盛は二度目の眠りに落ちていった。

 次に目を覚ましたのは真紘がベッドから抜け出したあとだった。
 枕元にちょこんとプレゼントが置かれていて、開けてみると中には真紘のリボンによく似たものが入っていた。
「真紘ちゃんのリボン? 似てるけど違う。誕プレか、うわわ、誕生日だ、はっは!」
 真紘は自分が普段使いしているリボンと似た物を贈れば重盛が喜ぶだろうと理解して選んだ。この一本に愛情や独占欲や思いやり、全てが詰め込まれているようで、重盛はたまらなく嬉しく、口元はだらしなく緩んだ。
「だあ~! なんだよ、もうとっくに俺の一番好きなもん分かってんじゃん!」
 箱ごと抱えて、クリスマスプレゼントをもらった子供よろしくリビングに飛び込む。
「おはよう重盛。零時にも伝えたけど、改めて二十歳のお誕生日おめでとう」
 水色のエプロンを着た真紘は鍋の火を止めてシンクに寄りかかった。
「あんがと……。プレゼントも、お揃いのリボン、すっごい嬉しい。ありがとう、ずっと身に着ける。ねえねえ、結んで!」
「喜んでもらえて良かった。勿論だよ、貸して」
「この端っこの刺繍も超綺麗。俺に似合うと思って選んでくれたの?」
「刺繍糸の色は悩んだんだけどね。瞳や髪の色と同じにした方が馴染むかと思って。いつも貰ってばかりだから君にも身に着ける物をあげたかったんだ」
 リボンを手渡すと真紘は器用に重盛の胸元に蝶結びを作った。
 重盛が体を揺らすと金色の刺繍がチカチカと光りを反射して、より特別感が増す。
「ふふっ、パジャマにリボン付けて、なんだか面白いね」
「可愛いっしょ?」
「うん、可愛い。室内飼いの猫みたい」
「猫じゃなくて狐だよーん」
 そうだった、と真紘はケラケラと笑う。
 朝からかなり上機嫌だ。もうほとんど昼なのだけども。
「そういえばなんで枕元にプレゼント置いてたん?」
「本当は日付が変わった瞬間におめでとうって言って渡そうと思って準備してたんだけど……」
「安定の寝落ちしたと」
「仰る通りで……不甲斐ない。朝回収し忘れて少し早いクリスマスプレゼントみたいになっちゃった」
「おっちょこちょいじゃん。俺のハニーは今日も可愛い。最高の誕生日だ……」
「もう、まだ誕生日始まったばかりでしょ。あと少しでシチューも完成するから待ってて」
 こくりと重盛が頷くと、真紘はもう一度コンロに火を付けて鍋を温め直した。
 家でまったりしたいという誕生日のリクエストに応えてくれるようで、いつものように着替えておいでと促されることはない。
 しかしこの後も人生において重大なイベントが控えているので、二十歳になった大人の重盛は言われずとも白いワイシャツへと着替えるため、寝室へと戻っていった。

 顔を洗って着替えを終えた頃にはシチュー皿とパンがローテーブルに並んでいた。
 向かい合って真紘が作ったシチューと近所のパン屋の目玉商品であるクルミ入りのパンを食べる。
 一緒に行きたかったが、二度寝した自分が悪いので素直に買ってきてくれたことに対する礼と料理の感想とを伝えた。
「ついでに食パンも買ってきたんだよ」
「はいはいコロッケ用ね」と口元を片方だけ上げると、真紘は口を尖らせてテーブルに伏した。白い頬がつきたての餅のようにぽよんとテーブルに乗っている。重盛は人差し指でツンツンとその柔らかさを堪能しながら、食べ終わった食器を端に寄せた。
「真紘ちゃんは食パンが食べたいんじゃなくて、食パンをパン粉にしたいんだろーが」
「たまにはサンドイッチにしたいのかもしれないじゃないか」
「したいのかもしれないって他人事じゃん。素直になれよ。コロッケに対する情熱、俺の母さんが聞いたら泣いて喜ぶだろうな」
「重盛のお母さんの話を持ち出すなんて反則だよ、否定できるわけない。ああ、そうだよ。百パーセントパン粉希望で買ってきたよ。悪い?」
「うははっ、開き直った」
 真紘はイヒヒと頬をテーブルにつけたまま笑う。
 こういうのが幸せっていうんだろうな、なんて言ったら彼はなんと答えるだろうか。
 重盛も同じ態勢を取り机に頬をつけてみる。木製のテーブルは意外にも温かくて心地が良かった。
「これローテーブルだし、大きい綿布団みたいなの挟んでコタツにするのもありだなぁ」
「そんなんじゃ僕ますます引き籠っちゃうよ。家と本屋と王城の書庫の往復で百年くらい経ってそう。いつの間にかクルーズトレインも開業百周年に……」
「くっ、ははっ! おい笑かすなって。テンションが眠い時のそれじゃん。まだ昼だぞ」
 シチューで温まったとはいえ、寝るにはまだ早い。夜はすぐに寝てしまうが、真紘が昼にうつらうつらしているのはタルハネイリッカで告白された日以来だった。
「真紘ちゃん、もしかして具合悪い?」
「そんなことないよ。すごく元気。ただ二人でこうやってゆったり過ごすのも久しぶりだなって思ってさ。なんやかんや王都に戻って来てからも依頼や報告であちこち回っていたし、幸せを噛み締めていたら、すうっと体の力が抜けたというか……。あれ、僕今めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってない?」
「ねえねえ、隣行っていい?」
 いつの間にか顔を腕で覆っていた真紘の手を握ると駄目だと断られた。
 耳の先からうなじまで真っ赤に染まっている。
 いつまで経っても恥ずかしがり屋なところは変わらない。振り切れた時に見せる蠱惑的な姿が夢だったのではないかと錯覚するほどだ。
「よし。オッケー。真紘ちゃんに時間をあげよう。これからもっと凄いことするから覚悟して待ってて」
「もっと凄いこと?」
 重盛は席を立つと真紘の視線を感じながらリビングを出た。

 同じタイミングで幸せだと思い、口にしてくれたのが嬉しくて涙が出そうだった。
 今からこんな調子で大丈夫か、と頬を叩いて喝を入れる。
 寝室に入り、ワイシャツの上からフォーマルなグレーのジャケットを羽織る。結び直してもらった紺色のリボンも重盛の決意を後押しするようにキラリと光った。
 ワイレッドのベロア生地の小箱をポケットに忍ばせ、こっそり買っておいた白いバラの花束をまっぽけから取り出す。
 九十九本。
 花言葉は、永遠の愛、ずっと好きだった――
 これ以上ないほど自分の気持ちを表すに相応しい言葉だ。
 生花というのは想像以上に重く、花屋で受け取った際も笑ってしまうほどだった。

 レミーの店で入籍の話が出た時はドキッとした。
 同性同士、異種族、ありとあらゆる差別が表面上取り払われたこの世界は本人同士の同意があればどんな人でも十六歳以上から入籍できる。知らぬふりで通したが、随分前に王城で補講を受けていた際にノエルから聞いていた。
 こっそり見せてもらった戸籍には九条院重盛・フォン・タルハネイリッカと記載されていた。
 同じくマルクスが後見人となっている真紘も志水真紘・フォン・タルハネイリッカになっており、同様に新しい世帯として登録されていることも確認済みだ。
 身分を証明するために便宜上タルハネイリッカの分家になっているだけなので、気にすることはないとノエルは言っていた。
 ノエルから色々学んだ後、重盛は王都の宝石店で指輪を依頼した。
 家族経営の小さな店だったが、磨き上げられたショーケース内で展示されている品はどれも上品に光り輝いており、どれも真紘に似合う気がした。
 一度寝ると朝まで目覚めることのない真紘の指のサイズを測るなど造作もないことで、注文までそう時間はかからなかった。
 この段階では真紘と付き合っていない。いつか好きになってもらえるように、渡せる日が来るようにと願掛けに近いものだった。
 この指輪たちも想定より早いお披露目に驚いているだろう。
 我ながら恐ろしい執念であると重盛は苦笑いを浮かべる。
 リドレー男爵の屋敷で吸った薬品のせいで、強制的に薄暗い気持ちと向き合うことになったが、そういう薄暗い心の一部を見て見ぬふりをしたまま今日を迎えることにならず、返って良かったとすら思っている。
 心の雑念を整理した今、真ん中にあるのは真紘が好きだという純粋な気持ちだけだ。

 想いが通じてからは手紙のやり取りを通じてさらに細かくオーダーを出し続け、王都に戻って来た日に完成したと店から連絡があった。
 野木と遊ぶ前に受け取りに行ったので、あれからずっと暇さえあればケースを取り出しては手の中でコロコロと転がしていた。
 姿見を確認し、ジャケットの襟を正し気合を入れる。
 プロポーズの場所は自宅を選んだ。
 雰囲気の良いレストラン、見晴らしの良い王城のゲストルーム、候補は山ほどあったが、真紘が断りやすい環境で告げたかった。
 付き合い始めて半年でプロポーズは、たとえ百歳までしか生きられなくても早いことだと理解していた。
 これで距離を置きたいとか言われたらどうしよう、と一度考え出すとキリがないため、重盛は無心でギコギコと左右の手と足を同時に動かし始めた。

 リビングのドアを勢いよく開け放つと、真紘は食べ終わった二人分の食器を洗っている途中だった。
 口をポカンと開けて重盛の手元を見る。呼び掛けると、えっえっと声を上げながら手についた泡を水で洗い流して水道を止めた。
 汚れた食器も生活魔法で綺麗にできるが、できるだけ今まで通りの生活がしたいという彼の希望を尊重し、重盛も倣う事にしている。
 大分混乱しているようで、目の前にある手拭き用のタオルをスルーして真紘はエプロンで手を拭った。
 水分を含んだ水色は濃くなって染みがじわりと布に広がった。そんな所帯染みた行動一つが胸を打つ。
 冷えた真紘の手を取って、ソファーまで誘導する。
「志水真紘さん」
「は、はい。これは一体なんでしょうか松永重盛さん」
「ちょっと待て。分かってて茶化してる?」
「全然分かってないんだけど、本当に何? そんな格好してどこか出かけるの? 誰かと誕生日パーティーの約束でもした?」
 プロポーズされるとは微塵も思っていない反応。
 これ、百パー断られるやつだ。
 重盛はぎゅっと目を閉じた。
 だが、真紘も入籍の話題が出てから結婚に対して意識しているのは確かだ。
 もっと意識してもらって、いつかは頷いて欲しい。
 プロポーズを決めた理由の一つであり、今までも考えなしに結婚式の話をしていたわけではないのだ。
 重盛は真紘を愛していて、生涯共にいたいから家族になりたいというのが一番の理由ではあるが、別の文化圏では一人と一人としてしか認められないかもしれない。そんな時に家族という繋がりは自分達を守る切り札になる。旅を続けていく上でも重要なことだった。
 断られても何度でもプロポーズする覚悟はできているのだから大丈夫、と重盛は自分に言い聞かせ、大きく息を吸い込んだ。
 もう一度、真剣に真紘を見つめると彼の頬は先ほどよりも赤らんでいるような気がした。
「真紘ちゃん。ずっと、ずっと好きだった。俺と、松永重盛と結婚してください」
 花束を手渡し、ポケットから取り出した指輪の箱を開ける。
 二十歳になってもまだまだ青臭い恋心を丸ごと明け渡した。
 永遠にすら感じられそうな時間が流れ、ごくりと唾を飲む音がやけに響いた。
 そういえば、なんて断られるか考えていなかった。
 ごめんなさい。
 まだ早いんじゃないかな。
 もう少し待って。
「はい」
 はい。
 はいってどういうお断りの言葉だっけ――。
 頭は混乱を極めているのに、ドクドクと鼓動がこれ以上ないほど高鳴っている。血管が見えそうなほど薄く平べったい重盛の耳の先がひくりと動いた。
「はい? はいってはい?」
「はい」
「はいってイエスってことだよな? 結婚ってあれだよ、入籍するってことだよ。法的にも家族になるってことだよ、分かってんの⁉」
「はい」
 大人しく受け入れるのは自分の方だと言うことを思い知るには十分なほど、真紘ははらはらと美しい涙を零していた。
 ポタリ、ポタリと水色のエプロンにまた染みを作っていく。
 花束をテーブルに置いて真紘は左手を差し出した。
「指輪、はめてくれる?」
 重盛は首が取れそうな勢いで何度も頷き、銀色の輪が二つ並んだケースから小さい方を抜いて親指と人差し指で愛の証をつまんだ。
 真紘の左手をもう片方の手で固定すると、微かに震えているのが分かった。そして指輪は真紘の細くて長い指にぴったりと納まった。
 目を細めて綺麗だと笑う真紘は今まで見たどの姿よりも美しかった。
 その姿を見てプロポーズを受け入れてもらえた実感がようやく湧いてきた。
 喉が熱くなって鼻の奥がツンとしてボロボロと涙が溢れる。
 彼のように綺麗に泣くって意外と難しいものなんだな、なんて考える余裕はあるらしい。
 重盛が縋りつくように真紘を抱きしめると「先を越されちゃったな」とちっとも悔しそうではない文句が届いた。
「ねえ、重盛、顔見せてよ」
「うっ…くっ、はっ……いま、むずい」
「ふふっ、はあ、涙止まんないね。ありがとう。嬉しいなぁ。指輪、いつから用意してたのかな」
 半年以上前だよ、と答えるにはまだ早く、止まらない涙は真紘の白いブラウスに吸い込まれていく。息が整う頃には雨に降られたのかと見間違うほど肩を濡らしてしまっていた。
 観念して顔を離すと同じくらい目尻を赤くして泣いている真紘と目が合って、また嗚咽が止まらなくなった。
 真紘は大きい方の指輪をケースから取り、重盛の左薬指にはめた。
 満足そうに指輪をくるくると回しながら真紘は囁く。
「重盛の誕生日なのにね。僕もこんなに嬉しいなんていいのかなぁ。どっちの誕生日か分からないよ」
 いいんだよ、と強く頷くとなんとか伝わったようで、ありがとうと礼の言葉が返ってきた。
 言葉が出てこない重盛の代わりに、真紘は一人で語り掛けるように話し続けた。
「プロポーズの記念日も絶対に忘れないね。おじいちゃんになっても多分忘れられないと思う。十一月二十八日。後から誕生日とプロポーズの記念日が重なって損したーなんて言わないでね。僕も生涯をかけて三百六十五日を記念日にしていくからさ。それくらい沢山思い出作っていこうね」
 そろそろ泣き止みたいのだが、涙腺が壊れて頷くことしかできない。
 辛うじて出た言葉は、真紘ちゃんと大好きの二言だった。
「うん。僕も大好きだよ。重盛は断られると思っていたのかもしれないけど、こんなに大好きなのに断るわけない。入籍できるんだ、家族になれるんだって知った時、僕すごく嬉しかったんだよ。結婚するなら今も未来も君しかいないんだもん。だったら早くしていた方が君も僕も嬉しいよね……?」
 重盛は大きく頷いて死ぬほど嬉しい、と零す。涙どころか涎も零れそうな勢いだ。こんなに泣く人間ではなかったはずなのだが、今日ばかりは仕方ないだろう。幸せで泣けるほど喜ばしいことはない。
 溶けた目尻を細い指ですっと撫でられる。
「花束はリビングに飾りたいな。何本かはしおりにしたりドライフラワーにしたりして手元に残したい。それでも花瓶には収まらないからバラ風呂にしちゃおうかな? ふふっ、幸せな悩みだね。魔法の世界に飛ばされて、君に愛されて、とっても幸せだよ。生まれて来てくれて、出会ってくれて、好きになってくれて、本当にありがとう」
 宝石のような滴がポタリとまた零れた。
 見つめ合ったまま顔を寄せると、待って、と頬を包まれた。
「志水真紘も、松永重盛を、一生愛すことを誓うよ」
 嗚呼、俺の恋人はなんてかっこいい男なのだ。
 尽きることのない涙がエプロンに吸い込まれていく。
 重盛はふんだんに潤んだ翡翠の瞳に吸い寄せられ、涙で濡れた真紘の唇に触れた。
 この誓いのキスは今までのどのキスよりも甘かった。




 キスをした後、それはもう甘く蕩けるような時間を過ごした――とは言い難いものだった。
 真紘は泣き過ぎたので顔を洗ってくると洗面所に駆け込んでいった。そんな彼を引き止める余力は残っておらず、重盛はソファーに寝そべった。
 泣くのは意外と疲れるものだ。号泣した赤子が数秒後には寝入っているのが不思議だったが、今なら分かる。
 プロポーズが成功した安心感、さらに緊張感からの解放によって体がふわふわとした熱気に包まれた。
「やばい。秒で寝れ…る……わ」
 重盛の瞼が閉じたと同時に、真紘はリビングに戻って来た。そして重盛の頭を優しく撫でて子守唄を歌うように囁いた。
「寝ちゃったの? 頑張ってくれてありがとう。おやすみ」
 これでは本当に赤子と同じではないか。気持ちだけは必死に起き上がろうとするが、抵抗むなしく意識がすっと途切れ、重盛は本日三度目の眠りに落ちていった。

「嘘だろ!」
 重盛はがばりと上半身を起こした。太陽は一番位置にあった。
 まだ十二時なことにほっとしたのは束の間、真紘の前で寝落ちしてベッドまで運ばれた事実がむず痒く、枕に顔を埋めて唸った。
「プロポーズしてのそまま寝落ちって真紘ちゃんのことなんも言えねーじゃん! 赤ちゃんかよ、ダサすぎ……」
 足をばたつかせ、ベッドから飛び降りた。
 ジャケットと贈られたばかりのリボンは皺にならぬようハンガーに吊るしてあり、シャツの第二ボタンまで開いていて、パンツのベルトも抜き取られていた。
 普段真紘が寝落ちした際にしていることがそっくりそのまま返って来たことにまた悶える。
 重盛は酔ったような足取りでフラフラとリビングに向かった。
 プロポーズしたのも夢だったらどうしよう。
 リビングのドアを開けるとバラの香りがふんわりと鼻先を撫でた。
 ローテーブルの上には白バラが生けられた一輪挿し。
 棘が取られた小さなブーケは麻紐で括られ窓際に干してある。
 台所には花びらがたっぷり入ったボウル。
 花束の包み紙は短冊のように一部が切り取られて上部には穴が開けてあった。
「すご、バラのフルコース! めっちゃ有効活用されてる! わは、ははっ!」
 重盛が寝ている間に真紘はバラの仕分けを一人でせっせと行っていたようだ。
 辺りを見渡しても肝心の真紘本人がいない。
 名前を呼ぶと洗面所の方から返事が聞こえた。
 洗面所のドアを開けると真紘は黒い布を巻き取りながら背を向けた。
「えっと……大泣きした挙句寝落ちしてごめんね。服とかありがとう」
「あ、うん、いや、全然! 洗濯してたから音で起こしちゃったかな。こちらこそごめん」
「んや、それは分かんなかった。洗濯干すなら手伝うぜ」
「ちょっと着たい服があって一枚だけだったらもう魔法で乾かしたんだ。だから大丈夫だよ、ありがとう」
 服を抱えたまま真紘は重盛の横を猫のようにするりと通り抜けた。
 そして「お茶淹れるからリビングにいて」と言い残し寝室へ消えていった。
 重盛が言われた通りリビングで待っていると、真紘は新聞紙と厚い本を何冊か抱えてすぐに戻って来た。
 肌寒いが換気のため窓が少し開いている。窓辺に吊るしている花束がカサカサと揺れて甘く爽やかないい香りがした。
 スンスンと重盛は鼻を鳴らす。
 部屋中が真紘への愛で飾り付けられているようで最高の気分だ。
「もう少し窓開けようか? バラの香りは平気そう?」
「ありがと。うん、超いい匂いだからこのまま飾ってて。いやぁ、我ながらいいの選んだな~」
「ふふっ、そうだね。早速小分けにさせてもらったよ。ドライフラワー用に一輪挿しの観賞用。花びらは一枚ずつ洗ってお風呂用に」
「じゃあこれは?」
 ローテーブルに並べてある短冊サイズの水色と黄緑のグラデーションの包装紙を指さすと、真紘は栞の台紙にするのだと答えた。
「持ってきた本を重石代わりに使って、押し花にしてさ、長方形に切った包装紙と一緒に栞にするんだ。本当は乾燥シートが欲しいんだけど、まあ新聞紙だけでもなんとかなるでしょう。重盛にも何枚か作るから使ってね」
「やった! 真紘ちゃん毎日本読んでるもんな」
「……うん。重盛もたまには栞使って今日のこと思い出してね」
 頬をぽっと染めてはにかむ姿は何よりも愛らしく重盛は考える前に抱き着いていた。
「なんもなくても毎日思い出すし、栞は家宝にする!」
「わあ、声大きいな。家宝だと僕の家宝も栞ってことになるんだけど?」
 真紘はしたり顔で重盛のまだ少し赤い鼻の先をツンと指の腹で押した。大した力ではなかったがその威力は凄まじく、重盛はソファーに雪崩れ込んだ。
「同じ家宝とか家族だ……」
「そうなるね」
「くっ、真紘ちゃんだけ余裕そうで悔しい。てか、やけにバラについて詳しくね? 家の庭にでも咲いてた?」
「祖父母の家の庭にね。遊びに行く度に手伝いをしていたんだ。ローズジャムにしたりアロマオイルにしたり色々教えてもらったよ。残りの花束は小分けにしてまっぽけに収納したから来年の今日に一緒に食べない? ジャムは紅茶に混ぜても美味しいよ」
「すげぇいいな! もう来年が楽しみ。真紘ちゃんのじーちゃんばーちゃん、俺も志水家の味と伝統を引き継いでいきます。お孫さんはお任せください」
 祈るように両手を握って宣言すると、真紘もソファーに落ちてきた。
 反動でぼんっと重盛の体が跳ねた。
「母方の祖父母だから志水じゃないよ」
「細かいこたぁいいんだよ。大事なのはハートっしょ」
「まあ、そういうものか」
 ふんわりと笑う真紘は白いバラが良く似合う。
 花束を優しく包むように重盛は真紘を抱きしめた。

 ずっとソファーでのんびりも悪くないが、現実的な話も進めなくてはならない。
 後日改まって相談をするのも勇気がいるだろうと、重盛はまっぽけに仕舞っておいた書類を取り出してテーブルに並べた。
 指輪、花束、婚姻届け――。
 内緒にしたい物を共用のポケットに隠すことに躊躇いはあった。まっぽけは取り出すものをイメージしなければ取り出せないので、収納されていると知らなければ間違って取り出せることもないが、見つからないか内心ひやひやしていたものだ。
 書類を手に取りペラペラと捲る真紘に重盛はおずおずと問いかけた。
「用意周到すぎて引いた……?」
「ははっ、まさか。婚姻届なんて初めて見たよ。重盛は地球にいた頃からこういうの全部自分でやっていたんだよね……」
「うん。母さんが死んでからちょっとだけ」
「必要に迫られてやっていたことだから簡単に助かるよなんて言いたくないけど、ありがとう。これからは二人でやっていこうね」
「また俺のこと泣かそうとしてない……?」
 小首をかしげてちょっとだけ、と笑う真紘に絆された重盛は小さく吹き出した。
 母親が亡くなってから九条院に引き取られるまで、戸籍がどうなっているかなんて確認したこともなかった。日本に戻って来てからどうにか縁を切れないかと画策し、役所に足を運んだこともあった。その甲斐あって分籍届けを出すことは可能だと知ったが、九条院の監視の目を掻い潜り完全な自由を手にすることは困難だった。
 リアースと地球の制度は完全に一致するわけではないが、そういう経験があるかないかで着手する際のハードルはぐんと下がる。
 自分らしく生きるために必要な手段でしかなかったことだが、これからは二人で取り組める。
 こうやって大変なことも喜ばしいことも分け合っていくのが家族だったことを久しぶりに思い出した。
「俺、俺に生まれて良かった」
「誕生日らしい言葉だね」
「たはっ! 確かに」
「婚姻届はいつ提出しに行こうか。クルーズトレインに乗る前の方が良いなと思うんだけど、どうかな」
「賛成。家族でないと同室に泊まれない国とかに行ったら俺寂しくて死んじゃうし、十二月の第一水曜日は? 真紘ちゃんはこの日がいいなって日ある?」
「ううん。第一水曜日は予定もないし、僕も賛成。リアースらしくていいんじゃないかな。よし、記入しよう」
 リアースには六曜や開運日などは設けられていない。地方ごとに細々とした決まりはあるようだが、有名なのは救世主を召喚するよう時の神に働きかけた大魔法使いがウエンズデーという名前だったことから水曜日に物事を始めると良いとされているくらいである。
 大魔法使いの絵本や冒険譚などが残っているわりには謎の多い人物で、弟子の功績の方が各地に残っているほどだ。
 案外凄いやつというのは隣にいるような穏やかな美人だったりするのかも――。
 真紘の手はつらつらと美しい線を引いていく。
「緊張するからあまり見ないで……」
「んーなんか朝からずっとご機嫌だなって思って」
「そりゃ君の記念すべき二十歳の誕生日だからね」
「自分の誕生日じゃないのに?」
「重盛は僕の二十歳の誕生日を迎えたらどう思う?」
 それは自分の誕生日よりなんか嬉しいかも、と返すと、それなら分かるだろうと真紘はケラケラ笑った。
 いつもより時間をかけて書かれた文字は手本のように綺麗で、真紘そのもののようだった。
 弁当屋のポストに入っていた手紙の中には真紘の手紙も入っていた。何度も読み返していた高校時代が懐かしい。
 同じペンで重盛も丁寧に一文字ずつ綴っていく。右肩上がりになってしまうのはご愛嬌。
「重盛の字、久しぶりに見たな」
「あー俺こっち来てから全然書いてないもんなぁ。ルーミちゃんと一緒に字の勉強したりしてたけど、マジでそれくらいかも」
「地球にいた頃に見たことあるんだ」
「えっ、いつ?」
 ペンを止めて顔を上げると真紘は困ったように眉を下げた。
 いつ見たのだと再度尋ねると、高校のテストの答案用紙という予想外の言葉が返って来た。
 特進クラスの真紘との接点はたまにすれ違う食堂と図書室くらいだったはずだ。それが答案用紙とは一体どういうことだと重盛は首をかしげた
「僕いつも現代文で点数を落してて」
「それでもいつもトップだったじゃん」
「総合順位はね。現代文の中でも記述問題が特に苦手でさ。数学と違って登場人物の心情を説けなんて完璧な解がないだろう? 自分では完璧だと思った回答を三角にされて納得がいかなくてね。どこが駄目だったのか、一度だけ先生に聞きに行ったんだ。教職免許を取ろうとしているのにこれはまずいと思って」
「行動力鬼すぎ~。あんなに本読んでるのに苦手ってなんか不思議なんだけど」
「うーん、昔から学術出版は好きで家にも沢山あったんだけど、現代小説を読みだしたのは高校に入ってからなんだ。触れてこなかった分、有名どころの本は新鮮に楽しめたし、勉強にもなった。でも好きと得意がイコールになるとは限らないでしょ? だから試験も三角付けられることが多いのかなって不安になって」
 フィクションを好きになった理由も真紘の努力の結果と知り、重盛は当時の彼を抱きしめて、大丈夫だ、今ではこんなに立派に同世代とも交流しているぞ、と励ましたくなった。
「ん? でもなんで俺の字と繋がんの?」
「先生が見本に重盛の解答を見せてくれたんだ。本人に無断で見せていいのかと思ったんだけどね」
「はあ⁉ マジかよ~。現国のアベヒロだよな。いつも授業中寝てると当ててくんだよね。目の敵にされてんのかと思ってた。んで、それで俺の解答見てどうだったん?」
「えっと、勉強してる人の字だなって思った」
「あ、そこで字の感想に着地すんのね」
「そう。右肩上がりでとめ、はね、はらいが全部豪快で読みやすかった。解答も物語の主人公がそのまま答えているようなもので、共感性が高い人の答えと自分の違いにちょっとへこんだよ。安部先生は、志水のような人間も教師に必要だって言ってくれたけど、僕はあんな解答ができる重盛みたいになりたかった。当時は、まさか金髪にピアス開けている君の字だとは思ってなくて、名前と顔が一致してからはテストの順位表でも君の名前を確認するようになってたんだ。今思えば段階を踏んで重盛のことを意識してたのかもね」
「なんか普通に告白されるよりハズいんですけど……」
「先に褒めてきたのはそっちでしょ! ほら、さっさとその綺麗な文字で続き書きなよ」
「揶揄ってんな……? 今日ずっと俺のこと揶揄ってるだろ」
「そんなことないよ。プロポーズも本気で受けたじゃないか。僕なりにテンションが上がっているんだよ」
「ふーん。そーゆーことにしといてやるかぁ」
 ニコニコと笑みを浮かべる真紘の表情が些か気になるが、今は書くことに集中しなければならない。
 重盛が最後の一文字を書き終えると、真紘は棚に置いていたカメラを持ってきた。
「届けを出す前に二人でこれ持ってさ、記念撮影しない? 浮かれすぎかな?」
「ま、マジでテンション上がってんのね、真紘さん……」
「うっ、そうだってさっきから言ってるじゃないか」
「ああ、もう! これ以上俺のこと喜ばせてどうするつもりだよ!」
「嫌なの?」
「嬉しいに決まってんじゃん!」
「はいはい。誕生日はまだまだ続くのでこの後もお楽しみにね。僕のハイテンションはこんなもんじゃないので」
「これより上があんの……?」
「それは……。まだ秘密」
 重盛が妄想を爆発させてジタバタと暴れている間に真紘はまっぽけから三脚を取り出してカメラをセットしていた。ローテーブル越しに設置されたカメラは一輪のバラも映している。
 二人で紙の両端を持ち肩を寄せ合うと自然と頬がくっついた。
 何枚か撮った後、真紘は初めての家族写真だね、なんてまた泣かすようなことを言った。



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白兪
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とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

初夜に「君を愛するつもりはない」と人形公爵から言われましたが俺は偽者花嫁なので大歓迎です

砂礫レキ
BL
リード伯爵家の三男セレストには双子の妹セシリアがいる。 十八歳になる彼女はアリオス・アンブローズ公爵の花嫁となる予定だった。 しかし式の前日にセシリアは家出してしまう。 二人の父リード伯爵はセシリアの家出を隠す為セレストに身代わり花嫁になるよう命じた。 妹が見つかり次第入れ替わる計画を告げられセレストは絶対無理だと思いながら渋々と命令に従う。 しかしアリオス公爵はセシリアに化けたセレストに対し「君を愛することは無い」と告げた。 「つまり男相手の初夜もファーストキスも回避できる?!やったぜ!!」  一気に気が楽になったセレストだったが現実はそう上手く行かなかった。

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

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