器用な少年、異世界へ行く

沢煮椀

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本編

戦闘開始

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迷いなく歩くグレンさんの後をキョロキョロしながら付いていく。というのも、この館は結構広くて、更には見られたくないものでもあるのか、探索する事を許可されなかった。
子供達を誘導すれば行けたかもしれないけど、人の隠しているものを無理やり見る趣味はないし、最悪信頼関係が崩れてしまう可能性もある。絶対にそれだけは避けなければならない。

…まぁ、そんな事しないでも神の視点で覗き見ることが出来るんだけどね。これならバレないけど…流石に自重した。
そういう訳で、今までこの館の詳しい所は分からなかったんだけど、今日初めて未知の領域に踏み入れた。
と言っても、廊下が続くだけだからキョロキョロする意味が無いんだけどね。それでも、自分が知らないものが無いかついつい探してしまう。これも職業病に入るのかな?それとも好奇心だろうか。まぁ、どっちでも良いけどね。

って、そんな事を考えている間にグレンさんが止まった。この扉の奥が修練場とやらなのかな?

「よし、ここが修練場だよ!」

そう言って扉を開けると、武道場みたいな場所が目に飛び込んできた。いや、本物は全然違うのかもしれないけど、自分が見た限りそんな雰囲気に思える。奥の方には人形を模した人形が置いてあったり、木刀みたいな武器から、色々な防具も置かれている。けど…

「英雄級みたいな事言ってるけど、普通じゃない?」

「…君は言葉がストレートだね…まぁ、もう慣れてしまったんだけど…
まぁ、傍から見たらそうだろうね。でも、実はこの部屋にはある秘密が隠されているんだよ!」

「へぇ、なになに?」

「それは…この部屋全体に完全防御の付与が掛かっているんだ!」

「へぇ、そうなんだ。」

「…いや、そこは驚く所だろう!?君はこれだけの広さの場所に付与をする事がどんなに大変か知っているのかい!?」

へ?いや、そんなに驚く事でもないと思うんだけど。本気を出したら自分でもそんな事が出来るし。

〈マスターの様に上位スキルを持っているなら楽ですが、初期の付与スキルでこの規模の部屋全体を付与するならば相当の努力が必要です。更に完全防御の付与を使える者は限られているので、この部屋はかなり珍しいと言えるでしょう。〉

…久々に自分が規格外ってことを思い出したよ。ほのぼのし過ぎて忘れてたな…
取り敢えず取り繕う事にする。

「あ、あ、ああ!そそ、そ、そうだよね!しし、知ってたよ!うんうん!」

「…怪しい事この上ないね!?誤魔化すの下手過ぎないかい!?
まぁ、流石にそのレベルの付与が出来るとは思ってないけど…」

それが出来ちゃうんですよねぇ…力を貰いすぎちゃったのかなぁ…

〈いえ、マスターはまだギフトの力を十分の一程度しか行使できていません。それはギフトの能力とその効力、どちらにも言える事です。〉

…それはギフトにはまだ他の能力が眠ってるって事でいいのかな?しかも、それを十分に行使できていないと。

〈いえ、その能力はもう目覚めています。…が、マスターが使うにはまだ経験が圧倒的に足りません。〉

つまりはまだ使えないわけか…いや、そっちの方が全然いい。使えない力を使わないのは他からの持ち腐れだからな…それじゃあ、もっとギフトを使わないといけないな。

「トキ君、いつまで考え込んでいるんだい?こっちはもう準備が終わったよ?」

おわっ!びっくりした。いきなり話かけないで…って、

「何それ!?それもう防具じゃなくて重石じゃん!」

そう、グレンさんはほとんどインゴットという、どう見ても重そうな防具を着ていた。一応、関節の部分は曲げやすい様になっているけど…よく着込めるな、それ。

「あはは、逆にこの位着ないとハンデにならないんだよ。」

「…グレンさんはそんなに自信があるのか…生半可なやる気じゃあ、勝てないっぽいな。
…分かった、それならこっちも本気を出すよ。」

ハクさん、を出して。

〈了解しました。〉

そして、自分の手に一見普通の弓矢が現れる。しかし、この弓は木の弓であるにも関わらず、とんでもない力を持っているから封印していたんだけど…本気になると言ったからには全てを出し切らないとな。

「っ!…その弓からはかなりの力を感じるね…見た目には騙されてはいけないようだ。しかも、今の行動にバッグの中を探す素振りを見せなかった。どんな方法を使っているのは知らないけど…本気を出すというのは本当のようだね。なら、こちらも全力で迎え撃たないと失礼だね…」

グレンさんはそう言うと…自身の雰囲気を逆転させた。武道場の真ん中で凛と立つ姿にはいつもの面影は見られず、圧倒的強者の風格を醸し出している。

「それじゃあ始めようか。…ああ、君が弓使いなら、私は少し離れていた方が当てやすいだろう。私は君から十歩以内には入らないと約束しよう。」

…余裕だな、グレンさん。まぁ、自分も正直勝てる気はしていないんだけど…

掠る位はしてやらないとな!

「それじゃあ…開始!」


グレンさんがそう叫んだ瞬間に自分は弦を引いた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

主人公をかっこよく書こうとしたけど、いまいち上手くいかなかったので今までの話を見てきたんですが、主人公がかっこいいシーンが一つも無くて、(ああ、そりゃ書けねぇわ)ってなりました。
沢煮椀です。

強いて言うなら、盗賊を倒した所がほんのちょっとかっこよかったんで、少し参考にしました。…どこが参考になっているかは分かりませんが…

ま、まぁ、取り敢えず及第点かなぁ、と勝手に結論付けました。
次回は…英雄級の凄さが分かる回になる予定です。…予定です…

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