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第5章 ソロモンの悪魔
世界の成り立ち
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え? じゃあなに? 俺がイルウの事かわいいかわいいって言ってた時もアスタロウは「こいつ男に向かって何言っとんねん」って思ってたってこと?
なんてこと言っても詮無き事か。前立腺鍛えてるこいつが異性愛者なのかどうかも分からんしな。
というかそれは今別にどうでもいいんだ。
「何しに来たの?」
「あ、いや~……久しぶりにケンジの顔見たいな~って」
正直に言おう。悪い気はしない。
はっきりと言って日本にいた頃俺は友達もほとんどいなかったし、彼女なんてもんも当然いなかった。
だから、男だと分かってはいてもこれだけ真っ直ぐに好意を向けられると「もう、男でもいいかな」とか思ってしまうのも無理からぬことだろう。頼む、そうだと言ってくれ。
ああ、本当にイルウが男でさえなければなあ。あとたとえ男でも俺のアナルを狙ってさえいなければなあ。
「勇者よ、なに見えないようにテーブルの下で手繋いどるんじゃ」
「ハッ!?」
いかんいかん、完全に無意識だった。
だって、なんか手も小さくて柔らかくて、本当に女の子みたいだし。いや女の子の手握った事ないけどさ。それになんか、凄くいい匂いがするんだよ。なんなんこれ? 魔術かなんか?
いかんいかん。とりあえず何か話題を変えよう。
「えっと……イルウの家ってこの辺なの?」
思い出した。元々「本当に魔国グラントーレに近づいてるのか」って話をアスタロウとしてたんだった。で、折よくイルウが目の前に現れた、と。つまり、もしかして本当にこの辺に魔族の根城があるんじゃないのか?
「魔王城の位置を特定しようとしてる?」
速攻で狙いがバレた。
「でもね、確かに、私の生まれはここからそう遠くないところよ。アルトーレには人間だけじゃなく、エルフ、獣人、ドワーフとか、たくさんの種族が暮らしてるのは知ってるでしょ?」
知らんが。
というか言われてみれば俺この世界の事何も知らんわ。人間の国と魔族の国が敵対してることくらいしか知らんわ。魔法とかって……あるんだよな?
なんか俺、この世界に来てから壁尻とか勃気とか肛門白刃取りとかしょうもない事ばっかりやってるな。こう……なんだろ? ファンタジー感が無いというか。
「知っての通り、この世界には女神に与する光の勢力と、邪神に与する闇の勢力があるわ」
知らん。
やっべえな。改めて考えてみると俺この世界の事なんも知らんぞ。
人と魔族がそれぞれ女神と邪神になんかお願いして、戦争してるって事しか知らんかった。
「どうしたの? ケンジ?」
目を輝かせて聞いていた、という自覚はあった。だってなんか、こう、凄くファンタジーっぽい話だったんだもん。なんか、新鮮でさ。
「こういうのを待ってたんだよ」
「は?」
「それなのにこの世界の奴らときたらさ? やれアヌスカリバーだの、やれドラゴンボッキだの、やれトライアヌスだのと、しょうもない話ばっかりでさ……」
イルウは「何言ってんだコイツ」という顔で俺の方を見ている。
まあ、それも仕方ないさ。まさか五十話も過ぎてるっていうのに世界観の説明すらしてなかったとは思うまい。
「まさかケンジ、この世界の事何も知らずに戦ってたの?」
そのまさかだよ。
「というかさ」
前々から思っていた事ではある。今から話すことは。
「こういう事こそチュートリアルでやるべきことなんじゃないの?」
「むう」
唸ったままアスタロウは黙り込んでしまった。正直言ってこいつも薄々そう思っていたんだろう。
「それをなんだ。お前のあのバカ子孫は。トイレの使い方だとかチンピラのシメ方だとかどうでもいい事ばっかりチュートリアルしやがってよ。もっと他にやるべきことがあるだろうが」
アスタロウとイルウの二人は目を丸くして俺を見ている。普段から口の悪い俺ではあるが、あまり怒りが持続しないタイプでもある。そんな俺が滔々と不満を語り出したのだから戸惑いもあるのかもしれないが、しかし今日という今日はもう止める気はない。
気にしなかった俺も悪いかもしれないが、この異世界に来てもう三か月も経ってるのに何も教えてもらってなかったんだぞ。
「お前ら俺の事便利な道具か何かだと思ってないか? 道具にいちいちこの世界の成り立ちを教える必要は無いとでも思ってたんだろ」
「勇者よ、あまりにも自分達にとって当たり前のこと過ぎて説明を忘れてはいたが、決してそんなことは……」
「黙れ聖剣の鞘が!!」
道具のくせに偉そうに口答えするな。
「だいたいケツの穴に聖剣を入れたり、訳の分かんないチュートリアル始めたり、王家の人間みんな頭おかしいじゃねえか」
王都からも大分離れてもうあの女が現れることもあるまい。今日はとことん不満をぶちまけるぞ。
「あの女おっぱいに栄養取られて脳がまわってないんじゃないのか? 前に誰かに言われたのか知らんが自分でもよく理解してないチュートリアルがどうのとか言い始めて、ホントいい迷惑……」
「チュートリアルを開始しますか?」
「うわあああぁぁ!?」
思わず椅子からずり落ちて尻餅をついてしまった。
嘘だろ、なんでこの女がここにいるんだよ。王都からどれだけ離れてると思ってんだ。
「そこまで言うのなら結構」
俺の目の前に現れたのはブロンドヘアに巨大な乳、黒いドレスに身を包んだチュートリアル王女、イリユースだった。
「勇者様に、本当のチュートリアルというものを味わわせてやりますよ」
なんてこと言っても詮無き事か。前立腺鍛えてるこいつが異性愛者なのかどうかも分からんしな。
というかそれは今別にどうでもいいんだ。
「何しに来たの?」
「あ、いや~……久しぶりにケンジの顔見たいな~って」
正直に言おう。悪い気はしない。
はっきりと言って日本にいた頃俺は友達もほとんどいなかったし、彼女なんてもんも当然いなかった。
だから、男だと分かってはいてもこれだけ真っ直ぐに好意を向けられると「もう、男でもいいかな」とか思ってしまうのも無理からぬことだろう。頼む、そうだと言ってくれ。
ああ、本当にイルウが男でさえなければなあ。あとたとえ男でも俺のアナルを狙ってさえいなければなあ。
「勇者よ、なに見えないようにテーブルの下で手繋いどるんじゃ」
「ハッ!?」
いかんいかん、完全に無意識だった。
だって、なんか手も小さくて柔らかくて、本当に女の子みたいだし。いや女の子の手握った事ないけどさ。それになんか、凄くいい匂いがするんだよ。なんなんこれ? 魔術かなんか?
いかんいかん。とりあえず何か話題を変えよう。
「えっと……イルウの家ってこの辺なの?」
思い出した。元々「本当に魔国グラントーレに近づいてるのか」って話をアスタロウとしてたんだった。で、折よくイルウが目の前に現れた、と。つまり、もしかして本当にこの辺に魔族の根城があるんじゃないのか?
「魔王城の位置を特定しようとしてる?」
速攻で狙いがバレた。
「でもね、確かに、私の生まれはここからそう遠くないところよ。アルトーレには人間だけじゃなく、エルフ、獣人、ドワーフとか、たくさんの種族が暮らしてるのは知ってるでしょ?」
知らんが。
というか言われてみれば俺この世界の事何も知らんわ。人間の国と魔族の国が敵対してることくらいしか知らんわ。魔法とかって……あるんだよな?
なんか俺、この世界に来てから壁尻とか勃気とか肛門白刃取りとかしょうもない事ばっかりやってるな。こう……なんだろ? ファンタジー感が無いというか。
「知っての通り、この世界には女神に与する光の勢力と、邪神に与する闇の勢力があるわ」
知らん。
やっべえな。改めて考えてみると俺この世界の事なんも知らんぞ。
人と魔族がそれぞれ女神と邪神になんかお願いして、戦争してるって事しか知らんかった。
「どうしたの? ケンジ?」
目を輝かせて聞いていた、という自覚はあった。だってなんか、こう、凄くファンタジーっぽい話だったんだもん。なんか、新鮮でさ。
「こういうのを待ってたんだよ」
「は?」
「それなのにこの世界の奴らときたらさ? やれアヌスカリバーだの、やれドラゴンボッキだの、やれトライアヌスだのと、しょうもない話ばっかりでさ……」
イルウは「何言ってんだコイツ」という顔で俺の方を見ている。
まあ、それも仕方ないさ。まさか五十話も過ぎてるっていうのに世界観の説明すらしてなかったとは思うまい。
「まさかケンジ、この世界の事何も知らずに戦ってたの?」
そのまさかだよ。
「というかさ」
前々から思っていた事ではある。今から話すことは。
「こういう事こそチュートリアルでやるべきことなんじゃないの?」
「むう」
唸ったままアスタロウは黙り込んでしまった。正直言ってこいつも薄々そう思っていたんだろう。
「それをなんだ。お前のあのバカ子孫は。トイレの使い方だとかチンピラのシメ方だとかどうでもいい事ばっかりチュートリアルしやがってよ。もっと他にやるべきことがあるだろうが」
アスタロウとイルウの二人は目を丸くして俺を見ている。普段から口の悪い俺ではあるが、あまり怒りが持続しないタイプでもある。そんな俺が滔々と不満を語り出したのだから戸惑いもあるのかもしれないが、しかし今日という今日はもう止める気はない。
気にしなかった俺も悪いかもしれないが、この異世界に来てもう三か月も経ってるのに何も教えてもらってなかったんだぞ。
「お前ら俺の事便利な道具か何かだと思ってないか? 道具にいちいちこの世界の成り立ちを教える必要は無いとでも思ってたんだろ」
「勇者よ、あまりにも自分達にとって当たり前のこと過ぎて説明を忘れてはいたが、決してそんなことは……」
「黙れ聖剣の鞘が!!」
道具のくせに偉そうに口答えするな。
「だいたいケツの穴に聖剣を入れたり、訳の分かんないチュートリアル始めたり、王家の人間みんな頭おかしいじゃねえか」
王都からも大分離れてもうあの女が現れることもあるまい。今日はとことん不満をぶちまけるぞ。
「あの女おっぱいに栄養取られて脳がまわってないんじゃないのか? 前に誰かに言われたのか知らんが自分でもよく理解してないチュートリアルがどうのとか言い始めて、ホントいい迷惑……」
「チュートリアルを開始しますか?」
「うわあああぁぁ!?」
思わず椅子からずり落ちて尻餅をついてしまった。
嘘だろ、なんでこの女がここにいるんだよ。王都からどれだけ離れてると思ってんだ。
「そこまで言うのなら結構」
俺の目の前に現れたのはブロンドヘアに巨大な乳、黒いドレスに身を包んだチュートリアル王女、イリユースだった。
「勇者様に、本当のチュートリアルというものを味わわせてやりますよ」
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