13 / 123
第2章 冒険者達
ギルド
しおりを挟む
「ではケンジさん、この内容で冒険者として登録しますが、職業は何にしますか?」
「クラス?」
無事に王都近隣の町アーガスに到着した俺達はこの町で冒険者登録をすることにした。冒険者の登録は特に登録時の試験だとか戸籍だとかが必要なかったのでスムーズに行われた。こんな簡単に冒険者になれるのか。これで俺もいっぱしの冒険者だぜ。
しかし『クラス』ってのはなんだ? 戦士だとか魔法使いだとかそういうのなんだろうか? ギルドのお姉さんそういう説明一切してくれてないんだけど。
「ええと、こちらの方は……ケツメド・アスタロウさん、って……え? まさか」
「いかにも。先代国王のケツメド・アスタロウじゃ」
「ええ!? じゃあ、もしかしてあの噂は本当だったんですか。勇者様が魔王討伐に立ち上がったという……」
なんだよ、やっぱり秘密にしてても噂になっちゃってるんだな、まいったな。サインは勘弁してくれよ。
「じゃあクラスは『勇者』にでもしておきますか。どうしよう、私クラスの欄に『勇者』なんて書くの初めてですよ。えへへ」
「冒険者ギルドに登録するクラスってそんな適当でいいの? なんかランクとか能力に応じてクラスチェンジしたりランクアップしてもんなんじゃないの?」
「まあ、人の能力なんて定量的に測る方法なんかないですからね。冒険者自体のランクは実績に応じて変わっていきますけど、クラスなんて基本自己申告ですよ」
「へえ、じゃあ俺が別に魔法使いとかで申請してもいいの?」
「ええ、いいですけど……ケンジさん、童貞なんですか?」
なんでそのネタが通じるんだよ。
「余りにも実態とかけ離れたクラスで申請すると仕事を受けるときに依頼主が混乱しますからね。後々自分が困りますよ? アスタロウさんの方はどうしましょう? 先代国王だから……」
「キング、かのう……」
「いや、先代ですからねぇ……『ロード』とかどうでしょう?」
「ロード! それいただきじゃ! それで登録頼む!!」
「ホントに大丈夫なのか冒険者ギルド。適当すぎないか」
「え? じゃあお二人は何か特別なスキルとかありますか? もしあるならそれに沿ったクラスに登録しますけど」
スキル……スキルかあ。実はカップスタックスが得意なんだけどそういうのじゃないよなあ……俺の特技って言うと、おっさんのアナルから聖剣を引き抜くことかなあ。
「特技か……儂の特技というと、やはりあれかの……」
考え込むアスタロウ。もうこの時点で嫌な予感しかしない。
「『アナライズ』が、できる」
「ええ? すごい! さすが王族となると違いますね! 『アナライズ』なんて誰もがうらやむ上級スキルですよ!」
多分お前が思ってるようなアナライズじゃないと思うよ。アナルに色々収納するスキルだと思うよ。
「じゃあ、お二人とも実績はゼロなのでフクロネズミ級からのスタートになりますね。頑張ってください」
え? なんだよ、そのフクロネズミ級って。普通はEランクとかFランクとかそういうのじゃないの? まあこの異世界にアルファベットなんか無いとは思うけど。
「冒険者としての実績を積んでいけば、資格認定を受けて、その上のヤマネコ級、コヨーテ級と上がっていきますから。先ずは下積みからです」
「ちょっと待って区分けが凄く分かりづらいんだけど! ヤマネコとコヨーテだとコヨーテが上なの? その上とかどうなってんの!?」
「え? コヨーテの上はサンショウウオ級ですけど……」
「何でそこで急に爬虫類になるんだよ!!」
「勇者よ、サンショウウオは両生類じゃぞ」
そういう問題じゃねえよ! てっきり哺乳類縛りかと思ってたら急にサンショウウオ来るし、サンショウウオってあのヤモリくらいの大きさの奴だろ? どういう基準なのかすげえ分かりづれえよ!
「ケンジさん、あまり大声で騒がないで下さい。ホラ、向こうの飲食スペースで飲んでる女の人が睨んでますよ」
受付のお姉さんに言われて視線をやってみると、併設されてる飲食スペースの一番奥に座ってる女性が酒を飲みながらこちらを睨んでいた。美人だが、隙のなさそうな、只者じゃない雰囲気を孕んでいる。あのお姉さんも冒険者だろうか。
「あの人はこのアーガスでただ一人のハリネズミ級冒険者、アンススさんです。ハリネズミって言えば、ジャガー級の一つ上、冒険者の最高峰ですよ」
「そういうところだよ!!」
ピンとこねえんだよ!! 全体的に!! なんでハリネズミがジャガーの上なんだよ! どう考えてもジャガーの方が強ええだろうが!!
普通だと「彼女はSランク冒険者だ」って言われれば「おお、Sランク……Aランクの上の」ってなって畏れ敬うし、生き物縛りでも「オーガ級」とか「ドラゴン級」とか言われれば「うわ、強そう」って感じるのに「ハリネズミ級だ」とか言われても「ああ、ハリネズミの……ハリネズミ、かわいいよね」ってなっちゃって全然ピンと来ねえんだよ!! ランクで強さが分かりづらいシステムなんだよ!!
そりゃもしかしたらこの世界の人には有名な逸話とか神話とかでハリネズミの強いキャラとか出てくるのかもしれないけどね? 俺知らないからね? そういうの。
「おいミンティア、いつまでフクロネズミの新人の相手してるつもりだ?」
ミンティアっていうのかよこの女。スーっとしそうな名前だな。声に振り返ると、ギルドの受付にいた俺達の後ろに二人組のガラの悪い男が並んで立っていた。
スキンヘッドと短髪の男。簡易的なレザーアーマーに身を包み、顔には二人とも大きな傷がある。多分こいつらも冒険者なんだろうな。すげぇガラが悪いけど。
「新人なんてどうせすぐにダンジョンの養分になるんだ。詳しく説明したって仕方ねえだろう」
そう言って俺達を押しのけると受付の前に陣取って何か入った袋をどさりとテーブルの上に乗せた。まずいな、ベテラン冒険者に目を付けられちゃっただろうか。袋の中に入ってるのは恐らくは魔物か何かの討伐部位だとか、その辺か……だとしたらあの中に魔物の耳とか入ってるのかな? やだなあ、気持ち悪い。
「ホラよ、薬の素材のドクダミを採取してきたぜ」
しょっぺぇなあ~、その辺に生えてる雑草じゃねえかよ。せめてもっとデカい袋で持ってこいよ。
「さて、坊やの方は冒険者のレクチャーが必要みてえだなあ? お兄さんがじっくり教えてやろうか。勿論タダとはいかねえがな」
う、矛先がこっちに来てしまった。冒険者ギルドの受付でチンピラに絡まれるなんてテンプレ過ぎる展開だ。
とはいえ、これから魔王を倒そうってんのにその辺の人んちの庭で草むしりしてドクダミ採取してるチンピラにケツまくるわけにはいかんよな。ここはバシっと一発恰好つけなければ。
「勇者よ、こんな奴らに構う事は……」
諫めるアスタロウの肩をぐい、と押しのけて俺は前に出る。
「こんなチュートリアルチンピラ、俺が軽く追い払ってやる」
チュートリアル……
自分の発した言葉に、俺はなんとなくだが、嫌な予感を覚えた。
冒険者ギルドの入り口のドアがぎい、と重苦しい音を立ててゆっくりと開く。
「呼びました?」
「クラス?」
無事に王都近隣の町アーガスに到着した俺達はこの町で冒険者登録をすることにした。冒険者の登録は特に登録時の試験だとか戸籍だとかが必要なかったのでスムーズに行われた。こんな簡単に冒険者になれるのか。これで俺もいっぱしの冒険者だぜ。
しかし『クラス』ってのはなんだ? 戦士だとか魔法使いだとかそういうのなんだろうか? ギルドのお姉さんそういう説明一切してくれてないんだけど。
「ええと、こちらの方は……ケツメド・アスタロウさん、って……え? まさか」
「いかにも。先代国王のケツメド・アスタロウじゃ」
「ええ!? じゃあ、もしかしてあの噂は本当だったんですか。勇者様が魔王討伐に立ち上がったという……」
なんだよ、やっぱり秘密にしてても噂になっちゃってるんだな、まいったな。サインは勘弁してくれよ。
「じゃあクラスは『勇者』にでもしておきますか。どうしよう、私クラスの欄に『勇者』なんて書くの初めてですよ。えへへ」
「冒険者ギルドに登録するクラスってそんな適当でいいの? なんかランクとか能力に応じてクラスチェンジしたりランクアップしてもんなんじゃないの?」
「まあ、人の能力なんて定量的に測る方法なんかないですからね。冒険者自体のランクは実績に応じて変わっていきますけど、クラスなんて基本自己申告ですよ」
「へえ、じゃあ俺が別に魔法使いとかで申請してもいいの?」
「ええ、いいですけど……ケンジさん、童貞なんですか?」
なんでそのネタが通じるんだよ。
「余りにも実態とかけ離れたクラスで申請すると仕事を受けるときに依頼主が混乱しますからね。後々自分が困りますよ? アスタロウさんの方はどうしましょう? 先代国王だから……」
「キング、かのう……」
「いや、先代ですからねぇ……『ロード』とかどうでしょう?」
「ロード! それいただきじゃ! それで登録頼む!!」
「ホントに大丈夫なのか冒険者ギルド。適当すぎないか」
「え? じゃあお二人は何か特別なスキルとかありますか? もしあるならそれに沿ったクラスに登録しますけど」
スキル……スキルかあ。実はカップスタックスが得意なんだけどそういうのじゃないよなあ……俺の特技って言うと、おっさんのアナルから聖剣を引き抜くことかなあ。
「特技か……儂の特技というと、やはりあれかの……」
考え込むアスタロウ。もうこの時点で嫌な予感しかしない。
「『アナライズ』が、できる」
「ええ? すごい! さすが王族となると違いますね! 『アナライズ』なんて誰もがうらやむ上級スキルですよ!」
多分お前が思ってるようなアナライズじゃないと思うよ。アナルに色々収納するスキルだと思うよ。
「じゃあ、お二人とも実績はゼロなのでフクロネズミ級からのスタートになりますね。頑張ってください」
え? なんだよ、そのフクロネズミ級って。普通はEランクとかFランクとかそういうのじゃないの? まあこの異世界にアルファベットなんか無いとは思うけど。
「冒険者としての実績を積んでいけば、資格認定を受けて、その上のヤマネコ級、コヨーテ級と上がっていきますから。先ずは下積みからです」
「ちょっと待って区分けが凄く分かりづらいんだけど! ヤマネコとコヨーテだとコヨーテが上なの? その上とかどうなってんの!?」
「え? コヨーテの上はサンショウウオ級ですけど……」
「何でそこで急に爬虫類になるんだよ!!」
「勇者よ、サンショウウオは両生類じゃぞ」
そういう問題じゃねえよ! てっきり哺乳類縛りかと思ってたら急にサンショウウオ来るし、サンショウウオってあのヤモリくらいの大きさの奴だろ? どういう基準なのかすげえ分かりづれえよ!
「ケンジさん、あまり大声で騒がないで下さい。ホラ、向こうの飲食スペースで飲んでる女の人が睨んでますよ」
受付のお姉さんに言われて視線をやってみると、併設されてる飲食スペースの一番奥に座ってる女性が酒を飲みながらこちらを睨んでいた。美人だが、隙のなさそうな、只者じゃない雰囲気を孕んでいる。あのお姉さんも冒険者だろうか。
「あの人はこのアーガスでただ一人のハリネズミ級冒険者、アンススさんです。ハリネズミって言えば、ジャガー級の一つ上、冒険者の最高峰ですよ」
「そういうところだよ!!」
ピンとこねえんだよ!! 全体的に!! なんでハリネズミがジャガーの上なんだよ! どう考えてもジャガーの方が強ええだろうが!!
普通だと「彼女はSランク冒険者だ」って言われれば「おお、Sランク……Aランクの上の」ってなって畏れ敬うし、生き物縛りでも「オーガ級」とか「ドラゴン級」とか言われれば「うわ、強そう」って感じるのに「ハリネズミ級だ」とか言われても「ああ、ハリネズミの……ハリネズミ、かわいいよね」ってなっちゃって全然ピンと来ねえんだよ!! ランクで強さが分かりづらいシステムなんだよ!!
そりゃもしかしたらこの世界の人には有名な逸話とか神話とかでハリネズミの強いキャラとか出てくるのかもしれないけどね? 俺知らないからね? そういうの。
「おいミンティア、いつまでフクロネズミの新人の相手してるつもりだ?」
ミンティアっていうのかよこの女。スーっとしそうな名前だな。声に振り返ると、ギルドの受付にいた俺達の後ろに二人組のガラの悪い男が並んで立っていた。
スキンヘッドと短髪の男。簡易的なレザーアーマーに身を包み、顔には二人とも大きな傷がある。多分こいつらも冒険者なんだろうな。すげぇガラが悪いけど。
「新人なんてどうせすぐにダンジョンの養分になるんだ。詳しく説明したって仕方ねえだろう」
そう言って俺達を押しのけると受付の前に陣取って何か入った袋をどさりとテーブルの上に乗せた。まずいな、ベテラン冒険者に目を付けられちゃっただろうか。袋の中に入ってるのは恐らくは魔物か何かの討伐部位だとか、その辺か……だとしたらあの中に魔物の耳とか入ってるのかな? やだなあ、気持ち悪い。
「ホラよ、薬の素材のドクダミを採取してきたぜ」
しょっぺぇなあ~、その辺に生えてる雑草じゃねえかよ。せめてもっとデカい袋で持ってこいよ。
「さて、坊やの方は冒険者のレクチャーが必要みてえだなあ? お兄さんがじっくり教えてやろうか。勿論タダとはいかねえがな」
う、矛先がこっちに来てしまった。冒険者ギルドの受付でチンピラに絡まれるなんてテンプレ過ぎる展開だ。
とはいえ、これから魔王を倒そうってんのにその辺の人んちの庭で草むしりしてドクダミ採取してるチンピラにケツまくるわけにはいかんよな。ここはバシっと一発恰好つけなければ。
「勇者よ、こんな奴らに構う事は……」
諫めるアスタロウの肩をぐい、と押しのけて俺は前に出る。
「こんなチュートリアルチンピラ、俺が軽く追い払ってやる」
チュートリアル……
自分の発した言葉に、俺はなんとなくだが、嫌な予感を覚えた。
冒険者ギルドの入り口のドアがぎい、と重苦しい音を立ててゆっくりと開く。
「呼びました?」
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる