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本編

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【卵とは
鳥・魚・虫などの雌が産む、殻または膜に包まれた胚(はい)のこと。かえれば子になるもの。】

そのはずなのだが…

「卵の、木…」

唖然と聞こえた言葉を小さな声で反芻する

卵の木…
卵の、木…
…え、木…?
…卵なのに?
卵の定義よ…

げんなりしながら木を見つめている私のことには気がつかなかったのだろう
クロノさんは足取り軽くその木に近より、手を伸ばしてなっている卵を取り始めた

「卵は割れてしまいやすいのであまり強く引っ張ってはいけないんです
枝の部分を持って優しく、丁寧に摘み取るのがコツですよ」

そう説明してくれているが、私は卵が木になるという衝撃の事実を受け止められず、ただ二足歩行の馬が手を伸ばして木になっている卵を取るという訳の分らない光景をただ見つめていた

そんな私を、この後さらなる衝撃が襲う

「さて、卵はこれくらいでいいでしょう
次はミルクですね」

クロノさんが卵の入った籠を手に、こちらに歩み寄ってくる

「実はミルクもこのすぐ近くにあるんですよ
行きましょうか」
「・・・はい」

なんとかそれだけ返事をして彼の後に続いた


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


先ほどの衝撃を引きずったまま森の中を歩く
卵の群集地を抜け、しばらく進むと再びクロノさんが足を止め、ある方向を指差した

「つきましたよ、あそこです」

その声に指し示された方向にゆっくりと視線を向ける

そこには牛の姿も形はなく、またも見たことのない木が群集しているだけだった
その木にはフットボールほどの大きさの木の実がなっており、その実は白地に黒の斑点がついていた

もしかしなくても、ミルク、も…

「あれがミルクの木です
あの実の果汁がミルクになります」

その言葉に私はガクリと肩を落とした

やっぱり、か…
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