遠くに行くとは言ったけど、異世界は遠すぎませんか…？

本編

13

クロノさんの私室をノックし、返事が返ってくるのを待つ
10秒ほど待ってみるが返事はなかった

「ん？居ないかな？」

この時間なら私室にいると思ったのだが、どうやら違ったようだ
次の候補、書斎とキッチンを探してみようと方向を変えた

歩きながら肉について思いをはせる
ミルクと卵があるんだから牛的なものと鳥的なものがいるのだろうか
それならハンバーグとから揚げが食べたい
噛んだ時にあふれ出す肉汁とうま味…
あぁ、考えてたら余計食べたくなってきた
早くクロノさん見つけなきゃ！

速足で廊下を歩き書斎の扉をノックする
今度はすぐにどうぞ、と声が返ってきた

「失礼しまーす」

声をかけながらドアを開けるとクロノさんが机に向って何か書き物をしていた

「すみません、もう終わるのでひと段落するまでそこで待っていてもらえますか？」
「あ、はい。わかりました」

返事をして大人しく勧められたソファに腰かける
クロノさんはそれを確認してから机に再び視線を落とした
やることもないのでその姿をぼーっと眺める

眼鏡をかけて服を着て、椅子に腰かけて机に向かって書き物をする馬

もはや見慣れた光景ではあり、普通に流しているが、よく考えると中々奇妙な光景だ

・・・ま、もう慣れたから何の感動も驚きもないんだけどね

そう考えて彼から目線をそらす
何を見るでもなく部屋に視線を巡らせていると、ふとある疑問を思いつく

そういえば、肉があるか聞いてみようと決めたはいいがどうやって聞こうか

もしこの世界に食肉の文化がなかった場合
直球で『お肉ってありますか？』と聞いてしまうのはまずい気がする
元の世界で自分が異世界人に『この世界は人間は食べないの？』と聞かれるようなものだ

想像して首を振る

それはダメだ
アウトだ
怖すぎる
え、自分食われる!?ってなる

だが、他に聞き方って・・・

悩んでいるとクロノさんが用事を終わらせたらしい
眼鏡をはずしながら顔を上げた

「お待たせしてしまってすみません
どうされました？」

・・・なんて聞こう