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本編

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ここに世話になることが決まった以上、円滑なコミュニケーションは安定した生活の必須条件だ

コミュニケーションの第一歩は相手の名前をきちんと呼ぶことだろう
自分の名前を呼ばれてマイナス感情を抱く者はほとんどいないはずだ
それは万国共通

たとえ、相手が人ではなく、馬でも…

…たぶん
きっと…
…そう、だよ、ね?

若干自信をなくしながらも愛想笑いを浮かべて口を開く

「えっと、申し遅れました
私、佐倉みさとといいます」

名乗って遠回しに貴方は?と目線で尋ねると、馬も慌てたように名乗ってくれた

「あ!そうでした!
ぼ、僕はクロノジェネシスです」
「…くろのじぇねしすさん、ですか?」

…長い

事あるごとに呼び掛けるには長すぎる
これだと私の性格からして絶対に“あの”とか“ねぇ”とか“ちょっと”とかって呼ぶようになってしまう
それでそのうち『ねぇなんて名前じゃないど?』ってキレられるんだ
そしてまた関係がギクシャクして裏切られたり奴隷みたいに扱われたりするようになっていくんだ

…そうか
もしかすると人と関わると録な事がないんじゃなくて、私が人と関わることに向いてないのかもしれない…

「あ、あの
どうかしましたか…?」

難しい顔をして考え込んでしまっていたのだろう
馬が私の顔色を伺うように訪ねてくる

「あ、いえ…お名前が長くて噛まずに言うのが大変だなぁと」

思っただけです…と正直に答えると馬はそんなことですか、とほっとしたように笑った…んだと、思う
何度も言うが馬の表情なんてわからない

「ジェネシスは家名なのでクロノと呼んでください
サクラミサトさん」
「あ、そうだったんですね
クロノさんですね、わかりました
私も、佐倉は苗字なので…みさとで大丈夫です」
「ミサトさん、ですね?わかりました」

改めてよろしくお願いします、と言って馬が前足…もとい手を差し出してくる
私もそれに答え、そっと手を差し出すと握手をするように握られた


こうして、私佐倉みさとの異世界生活は始まったのだった
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