翠の桜

れぐまき

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業平殿と私の結婚が決まってから数ヶ月

最近、昼間に私の邸に訪れることがなくなった彼からは、代わりのように毎日恋文、と呼ぶに相応しい甘い甘い和歌を書き付けた文が送られてくる
私はそのたびにむず痒い思いをしながらなんとか返歌を返しているのだ

そして今日も返歌を考えている
筆を持ったままうなっていると声がかけられた

「姫様、業平様がお見えです」

「そう、お通しし…」

ん?今なんて・・・

「…業平殿がいらしてるの!?」

「え?はい、左様です。先にお父君にお会いになっているようですのでまもなくこちらにいらっしゃるかと」

「なんで?」

「え?いつもいらっしゃるではないですか」

「・・・それもそうね」

でもここ数ヶ月は文だけだったじゃない
いきなり来られたらびっくりするわよ・・・

不思議そうに首をかしげる女房に曖昧に答えて
持っていた筆をおいた
直接来るなら返事なんて書かなくていいだろう
それにお父様のところによってくるならまだ時間もかかるはず

「彼がお見えになったらまた声をかけて」

女房にそう頼んで最近手に入れた物語の続きを読み始めた
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