紫の桜

れぐまき

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満開

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「こんにちは、二人とも」
「いらっしゃいませ、ゆうぎり兄さまー!」
「まー!」


立派に育っている長男
かわいらしい長女
日に日に大きくなる次男

そして・・・

「殿、お帰りなさいませ」
「あぁ、ただいま」

愛しい妻


「お久しぶりです、紫の上様」

「いらっしゃい、夕霧様
元服なされて随分大人びましたわね」
「ありがとうございます」
「兄さま、遊びましょー!」
「しょー」

「あぁ、そうだね。何をして遊ぼうか?
父上、紫の上様、失礼いたします」

「えぇ、二人をよろしくお願いします」


彼女たちのやり取りに笑みが浮かぶ
こんなに穏やかな幸せが私に訪れるなど、昔は考えたこともなかった

恐ろしいほどに幸せな日々
そう、“恐ろしい”ほどに…

父帝を裏切り、藤壺の宮を苦しめ、不義の子を生した私
それだけでは飽き足らず、兄帝の寵妃と通じ、たくさんの人を苦しめてきた

罰が当たっても何の不思議もないというのに・・・


「殿?どうなされました?」


声をかけられ思考から戻ってくると心配そうに私を窺う紫の上の顔が真っ先に目に入る

「大丈夫ですよ」

心配させまいと軽く微笑めば、彼女はまっすぐな瞳で私の目を射抜き、そっと私の手に手を重ねた

首をかしげると彼女は何も言わずにゆるりと微笑む

愛らしく、美しく、清らかな笑み


「上・・・?」

「殿、お慕いしておりますわ
一緒にいてくださって…幸せになってくださって、ありがとうございます」

「!!」


彼女の言葉でふわりと心が軽くなる
こんな私でも、幸せになっていいのだと教えてくれる


「…私も、愛していますよ」


そう告げると花が咲いたような笑顔を浮かべる
心底嬉しそうに


まったく…
彼女にはかなわない
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