52 / 69
五分咲き
7
しおりを挟む
「だーぅ!」
「おやおや、元気がいいね」
部屋に入り、姫を抱き上げて楽しそうに笑う殿を微笑ましく眺める
「殿」
「ん?」
「姫の名は、もうお決めになられましたか?」
「あぁ、そうだ
まだ教えていなかったね」
にっこり笑いながらこちらに歩み寄る殿から姫を預かる
「えぇ
教えてくださいな」
「この子の事は“明石の姫君”と呼ぼうと思うんだ」
「・・・え?」
さらりと落とされた爆弾発言に身体が硬直する
殿は私の様子に気づかず言葉を続けた
「私があちらにいる時に、この姫は生まれただろう?
須磨でもよかったのだけど、あそこは本当に何もない寂しい所だから・・・
それに比べて明石はいい所だったからね」
殿の言葉は私の耳をすり抜けていく
変わりに私の頭を占めるのは“明石の姫君”という呼び名
如何いう事?
明石の君のお子様だから、ちい姫は明石の姫君と呼ばれていた
その呼び名が、私の娘の呼び名に…?
じゃぁ、明石の君のお子様は?
もしかして、明石の君にお子は出来なかったの?
私が姫を身ごもったから?
殿のお帰りが早くなってしまったから?
私が、お話を変えてしまったから・・・?
ぐるぐると頭の中で渦巻く疑問に目眩を起こし、身体がふらついた
殿が慌てて支えてくださる
「上?大丈夫かい?顔色が悪いが・・・」
「…えぇ」
思い切って聞いてしまおうか?
明石の君にお子が出来たかどうかを・・・
「・・・との」
「ん?」
「あ、の…」
「どうしたんだい?」
「明石で、出会った方・・・は?」
「え…?」
心配そうに歪められていた表情が、不思議そうなものに変化する
「いつぞやの、文で書いていらっしゃったでしょう?
明石で思いがけない夢を見たと
その方のお子様こそ、“明石の姫君”とお呼びするのに相応しいのでは?」
問い詰めるような語調になってしまったが殿は気にした素振りはなく、笑って口を開いた
「何を言い出すかと思えば…
確かにそうかもしれませんが、彼女にお子はおりませんし、問題はないでしょう?
彼女は今の所京に来る気はないと仰っていますから、子を授かることもないでしょうからね」
「・・・・・・そう、です、か…」
物語が変わっていく・・・
私に都合のいいほうへ・・・
「おやおや、元気がいいね」
部屋に入り、姫を抱き上げて楽しそうに笑う殿を微笑ましく眺める
「殿」
「ん?」
「姫の名は、もうお決めになられましたか?」
「あぁ、そうだ
まだ教えていなかったね」
にっこり笑いながらこちらに歩み寄る殿から姫を預かる
「えぇ
教えてくださいな」
「この子の事は“明石の姫君”と呼ぼうと思うんだ」
「・・・え?」
さらりと落とされた爆弾発言に身体が硬直する
殿は私の様子に気づかず言葉を続けた
「私があちらにいる時に、この姫は生まれただろう?
須磨でもよかったのだけど、あそこは本当に何もない寂しい所だから・・・
それに比べて明石はいい所だったからね」
殿の言葉は私の耳をすり抜けていく
変わりに私の頭を占めるのは“明石の姫君”という呼び名
如何いう事?
明石の君のお子様だから、ちい姫は明石の姫君と呼ばれていた
その呼び名が、私の娘の呼び名に…?
じゃぁ、明石の君のお子様は?
もしかして、明石の君にお子は出来なかったの?
私が姫を身ごもったから?
殿のお帰りが早くなってしまったから?
私が、お話を変えてしまったから・・・?
ぐるぐると頭の中で渦巻く疑問に目眩を起こし、身体がふらついた
殿が慌てて支えてくださる
「上?大丈夫かい?顔色が悪いが・・・」
「…えぇ」
思い切って聞いてしまおうか?
明石の君にお子が出来たかどうかを・・・
「・・・との」
「ん?」
「あ、の…」
「どうしたんだい?」
「明石で、出会った方・・・は?」
「え…?」
心配そうに歪められていた表情が、不思議そうなものに変化する
「いつぞやの、文で書いていらっしゃったでしょう?
明石で思いがけない夢を見たと
その方のお子様こそ、“明石の姫君”とお呼びするのに相応しいのでは?」
問い詰めるような語調になってしまったが殿は気にした素振りはなく、笑って口を開いた
「何を言い出すかと思えば…
確かにそうかもしれませんが、彼女にお子はおりませんし、問題はないでしょう?
彼女は今の所京に来る気はないと仰っていますから、子を授かることもないでしょうからね」
「・・・・・・そう、です、か…」
物語が変わっていく・・・
私に都合のいいほうへ・・・
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
聖女と聖主がらぶらぶなのが世界平和に繋がります(格好良すぎて聖主以外目に入りません)
ユミグ
恋愛
世界に淀みが溜まると魔物が強くなっていく中ある書物に書かれてある召喚をウォーカー国でする事に…:
召喚された?聖女と美醜逆転な世界で理不尽に生きてきた聖主とのらぶらぶなオハナシ:
極力山なし谷なしで進めたいっ…!けど、無理かもしれない………ーーツガイ表現がありますが、出てきません
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる