紫の桜

れぐまき

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五分咲き

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産後、赤ちゃんを存分に眺めた私は一番に殿への文を出し、殿からお返事でお祝いと労い、側にいられない謝罪の言葉をもらった

その後は紅葉のお兄様や帥の宮様
そしてお父様の邸にも使者を出した

お兄様はすぐさまお祝いに駆けつけてくださり、帥の宮様もすぐにお祝いをよこしてくださった

お父様からはなんの返事もない

流石にそれはないんじゃないの?
なんて思うし、女房達も憤慨してたけど、予想していなかった訳じゃないからショックはない
呆れはするが・・・
まぁ、仕方がないと諦めている



なんやかんやと子供がいる生活にも慣れてきた頃には、季節は既に春になっていた

殿が須磨に旅立ってからほぼ一年

今日の天候は嵐

と、いう事はとうとう殿が明石に移られるのだろうか?

最近、正直これから先のことがよく分らなくなっている

物語が変わりすぎているのだ

紅葉のお兄様をはじめとした人々とのかかわりや、私の子供
聞いた噂では数日前に右大臣様がなくなられたらしい、以前と比べると時期が早い

他にも、細々とした物を考えると数え切れない程違う点が出てきている


これからも、前とは違うことが幾つもおこるのだろう
それがいい結果に向うのならいい
しかし、悪い方に転んだら?

そうならなくとも、私にとっての“いい結果”が、すべての人にとってもそうだとは限らない

光があるから影があるように、誰かの幸せの裏には誰かの不幸がある
私のせいで誰かが・・・
「ふぎゃぁー!」

「っ!!!ぁ、あら、起きてしまったのね」


泣き出した赤ちゃんを抱き上げる
ふっ、と力が抜けた気がした


私ったら、駄目だなぁ~
殿の側にいるためなら何でもしようと決めたのに・・・
今はもう私だけの問題じゃないのだからしっかりしないと


泣き止んだ我が子に微笑みかける


「ごめんなさいね?頼りないお母さんで
これからは、貴女のためにも、ちゃんと頑張るからね」


そう告げて、そっと額に唇を落とした 
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