105 / 125
恋愛編
104
しおりを挟む本当に一体どうされたのかしら…
湖の森の大きな木の下
敷物の上に座り、穏やかな、大変満足そうな表情でサンドウィッチをつまんでいる殿下を前に、私は内心で首をかしげた
鼻唄でも歌い出しそうなほど上機嫌な彼を気づかれないように、だがじっと観察する
見た目は、特に変わったところはないのよね…
そう。見た目は問題ない
問題があるのは言動
最近の彼の言動は、今までの彼とは明らかに違っているのだ
アンバー王国で見せた国王夫婦への堂々とした振る舞いは、レオナルド様と打ち合わせの上で成り立っていたものだとすれば、納得できる
離宮に誘ってくださったことについても、レオナルド様か、お目付け役のクラヴァット様などに助言されてだと思えば、それほど不自然ではない
だが…
私のことをかわいいと仰られたのも、氷のお花を下さったのも…
さっきの腕につかまるように仰ってくださったことだって…
周りに誰もいなかったし、事前に予想がつくようなことでもなかったのだから、どう考えても殿下が自分からしてくださったこと…よね?
そう考えると、また頬がじんわりと熱を持っていくのを感じた
嫌だわ…
殿下のことを好きなのか、考えている時にこんなことを言われたりされたりすると意識してしまうじゃないの…
赤くなった頬を隠すため、そっと俯いてお茶の入ったカップを口に運ぶ
目を閉じて薫りと味を楽しめば、少し気持ちが落ち着いた
ほっと息をついてゆっくり目を開け、もう一口
もう一度観察してみようと、カップの縁越しにちらりと殿下に視線を向ける
すると彼もこちらを見ていたようで、パチリと目があった
それに気がついた殿下がふわりと嬉しそうに微笑む
「…!」
その笑顔を見て、せっかく落ち着いてきていた熱が再び振り返す
…本当に、やめて欲しいわ…
気恥ずかしさから目をそらしたいのをぐっとこらえて微笑み返したが、ぎこちなくはなかっただろうか…
心配しつつも、気恥ずかしさが勝ってしまった私は、失礼にならない程度のスピードで景色を眺めるふりをし、彼からそっと目をそらした
0
お気に入りに追加
530
あなたにおすすめの小説
完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?
せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。
※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました
大事なのは
gacchi
恋愛
幼いころから婚約していた侯爵令息リヒド様は学園に入学してから変わってしまった。いつもそばにいるのは平民のユミール。婚約者である辺境伯令嬢の私との約束はないがしろにされていた。卒業したらさすがに離れるだろうと思っていたのに、リヒド様が向かう砦にユミールも一緒に行くと聞かされ、我慢の限界が来てしまった。リヒド様、あなたが大事なのは誰ですか?
【一話完結】才色兼備な公爵令嬢は皇太子に婚約破棄されたけど、その場で第二皇子から愛を告げられる
皐月 誘
恋愛
「お前のその可愛げのない態度にはほとほと愛想が尽きた!今ここで婚約破棄を宣言する!」
この帝国の皇太子であるセルジオが高らかに宣言した。
その隣には、紫のドレスを身に纏った1人の令嬢が嘲笑うかのように笑みを浮かべて、セルジオにしなだれ掛かっている。
意図せず夜会で注目を浴びる事になったソフィア エインズワース公爵令嬢は、まるで自分には関係のない話の様に不思議そうな顔で2人を見つめ返した。
-------------------------------------
1話完結の超短編です。
想像が膨らめば、後日長編化します。
------------------------------------
お時間があれば、こちらもお読み頂けると嬉しいです!
連載中長編「前世占い師な伯爵令嬢は、魔女狩りの後に聖女認定される」
連載中 R18短編「【R18】聖女となった公爵令嬢は、元婚約者の皇太子に監禁調教される」
完結済み長編「シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす」
よろしくお願い致します!
救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~
日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。
そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。
優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。
しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。
人形令嬢と呼ばれる婚約者の心の声を聞いた結果、滅茶苦茶嫌われていました。
久留茶
恋愛
公爵令嬢のローレライは王国の第一王子フィルナートと婚約しているが、婚約者であるフィルナートは傲慢で浮気者であった。そんな王子に疲れ果てたローレライは徐々に心を閉ざしていった。ローレライとフィルナートが通う学園内で彼女は感情を表に出さない『人形令嬢』と呼ばれるようになっていた。
フィルナートは自分が原因であるにも関わらず、ローレライの素っ気ない態度に腹を立てる。
そんなフィルナートのもとに怪しい魔法使いが現れ、ローレライの心の声が聞こえるという魔法の薬を彼に渡した。薬を飲んだフィルナートの頭の中にローレライの心の声が聞こえるようになったのだが・・・。
*小説家になろうにも掲載しています。
婚約者に言わせれば私は要らないらしいので、喜んで出ていきます
法華
恋愛
貴族令嬢のジェーンは、婚約者のヘンリー子爵の浮気現場を目撃してしまう。問い詰めるもヘンリーはシラを切るばかりか、「信用してくれない女は要らない」と言い出した。それなら望み通り、出て行ってさしあげましょう。ただし、報いはちゃんと受けてもらいます。
さらに、ヘンリーを取り巻く動向は思いもよらぬ方向に。
※三話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる