96 / 125
恋愛編
95
しおりを挟む
さてなんと言って誤魔化そうか
頭を回転させながらとりあえず口を開いてみると、先に殿下が話し出した
「セシルは来週の週末、何か予定はあるか?」
唐突に聞かれて一瞬戸惑う
「来週…でございますか?
特に予定はなかったと思いますが…」
「そうか」
「はい」
「……」
「…?」
黙ってしまった殿下に、私も黙って続きを待った
「…アンバー王国の一件で疲れがたまっている
来週の週末なら急ぎの執務もないし、東の離宮にでも行ってゆっくり過ごそうかと思ってるんだ
それで…」
そこで言葉を区切った殿下は私から目をそらし、聞こえるか聞こえないかという程の大きさで呟いた
「……予定がないのなら、一緒に行かないか?」
「え?」
予想していなかった誘いの言葉にぱちりと目を瞬く
思わず出てしまった聞き返す声に、殿下が慌てたように言葉を続けた
「お前も、慣れない移動やらおかしな策略に巻き込まれたりやらで、心身ともに疲れているだろう?
元はといえば俺がレオナルドの誕生パーティーに同行してくれるよう頼んだせいでそうなったんだ
せっかくの長期休暇だったのに休めなくて申し訳ないと思ってな
たった数日だが、のんびり過ごせば疲れもとれるかと思ったんだが…」
まるで言い訳をするように早口で言い募る殿下の言葉を、私はきょとんとしたまま聞いていた
これは…もしかして、私のことを気遣ってくださっているの?
こんなことを言っては難だが、私の知っている殿下は生真面目かつ不器用で、気が利くとは言いがたい
その殿下がわざわざ離宮に誘ってくださるとは…
……レオナルド様の入れ知恵かしら?
そんな失礼な考えが頭をよぎる
だが、誰の入れ知恵だろうとこの際気にしないことにしよう
肝心なのは殿下がわざわざ直接訪ねてきて誘ってくれたということだ
生真面目で、不器用で、照れ屋な、あの殿下が
「…私もお邪魔してもよろしいのですか?」
まだぶつぶつと言い訳を続けている殿下に向かってたずねると彼は一瞬口を閉じて頷いた
「当たり前だろう
駄目なら誘わん」
照れを隠すようなぶっきらぼうな返事に、笑いが漏れる
「では、お言葉に甘えてご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
そう答えると、殿下は満足そうに笑って頷いた
頭を回転させながらとりあえず口を開いてみると、先に殿下が話し出した
「セシルは来週の週末、何か予定はあるか?」
唐突に聞かれて一瞬戸惑う
「来週…でございますか?
特に予定はなかったと思いますが…」
「そうか」
「はい」
「……」
「…?」
黙ってしまった殿下に、私も黙って続きを待った
「…アンバー王国の一件で疲れがたまっている
来週の週末なら急ぎの執務もないし、東の離宮にでも行ってゆっくり過ごそうかと思ってるんだ
それで…」
そこで言葉を区切った殿下は私から目をそらし、聞こえるか聞こえないかという程の大きさで呟いた
「……予定がないのなら、一緒に行かないか?」
「え?」
予想していなかった誘いの言葉にぱちりと目を瞬く
思わず出てしまった聞き返す声に、殿下が慌てたように言葉を続けた
「お前も、慣れない移動やらおかしな策略に巻き込まれたりやらで、心身ともに疲れているだろう?
元はといえば俺がレオナルドの誕生パーティーに同行してくれるよう頼んだせいでそうなったんだ
せっかくの長期休暇だったのに休めなくて申し訳ないと思ってな
たった数日だが、のんびり過ごせば疲れもとれるかと思ったんだが…」
まるで言い訳をするように早口で言い募る殿下の言葉を、私はきょとんとしたまま聞いていた
これは…もしかして、私のことを気遣ってくださっているの?
こんなことを言っては難だが、私の知っている殿下は生真面目かつ不器用で、気が利くとは言いがたい
その殿下がわざわざ離宮に誘ってくださるとは…
……レオナルド様の入れ知恵かしら?
そんな失礼な考えが頭をよぎる
だが、誰の入れ知恵だろうとこの際気にしないことにしよう
肝心なのは殿下がわざわざ直接訪ねてきて誘ってくれたということだ
生真面目で、不器用で、照れ屋な、あの殿下が
「…私もお邪魔してもよろしいのですか?」
まだぶつぶつと言い訳を続けている殿下に向かってたずねると彼は一瞬口を閉じて頷いた
「当たり前だろう
駄目なら誘わん」
照れを隠すようなぶっきらぼうな返事に、笑いが漏れる
「では、お言葉に甘えてご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
そう答えると、殿下は満足そうに笑って頷いた
0
お気に入りに追加
558
あなたにおすすめの小説
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~
飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』 ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。
※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。
※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。
※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
前世は婚約者に浮気された挙げ句、殺された子爵令嬢です。ところでお父様、私の顔に見覚えはございませんか?
柚木崎 史乃
ファンタジー
子爵令嬢マージョリー・フローレスは、婚約者である公爵令息ギュスターヴ・クロフォードに婚約破棄を告げられた。
理由は、彼がマージョリーよりも愛する相手を見つけたからだという。
「ならば、仕方がない」と諦めて身を引こうとした矢先。マージョリーは突然、何者かの手によって階段から突き落とされ死んでしまう。
だが、マージョリーは今際の際に見てしまった。
ニヤリとほくそ笑むギュスターヴが、自分に『真実』を告げてその場から立ち去るところを。
マージョリーは、心に誓った。「必ず、生まれ変わってこの無念を晴らしてやる」と。
そして、気づけばマージョリーはクロフォード公爵家の長女アメリアとして転生していたのだった。
「今世は復讐のためだけに生きよう」と決心していたアメリアだったが、ひょんなことから居場所を見つけてしまう。
──もう二度と、自分に幸せなんて訪れないと思っていたのに。
その一方で、アメリアは成長するにつれて自分の顔が段々と前世の自分に近づいてきていることに気づかされる。
けれど、それには思いも寄らない理由があって……?
信頼していた相手に裏切られ殺された令嬢は今世で人の温かさや愛情を知り、過去と決別するために奔走する──。
※本作品は商業化され、小説配信アプリ「Read2N」にて連載配信されております。そのため、配信されているものとは内容が異なるのでご了承下さい。
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
木山楽斗
恋愛
私は、恋愛シミュレーションゲーム『Magical stories』の悪役令嬢アルフィアに生まれ変わった。
彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。その性格故に、ゲームの主人公を虐めて、最終的には罪を暴かれ罰を受けるのが、彼女という人間だ。
当然のことながら、私はそんな悲惨な末路を迎えたくはない。
私は、ゲームの中でアルフィアが取った行動を取らなければ、そういう末路を迎えないのではないかと考えた。
だが、それを実行するには一つ問題がある。それは、私が『Magical stories』の一つのルートしかプレイしていないということだ。
そのため、アルフィアがどういう行動を取って、罰を受けることになるのか、完全に理解している訳ではなかった。プレイしていたルートはわかるが、それ以外はよくわからない。それが、私の今の状態だったのだ。
だが、ただ一つわかっていることはあった。それは、アルフィアの性格だ。
彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。それならば、彼女のような性格にならなければいいのではないだろうか。
そう考えた私は、地味に謙虚に生きていくことにした。そうすることで、悲惨な末路が避けられると思ったからだ。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢の居場所。
葉叶
恋愛
私だけの居場所。
他の誰かの代わりとかじゃなく
私だけの場所
私はそんな居場所が欲しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。
※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。
※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。
※完結しました!番外編執筆中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる