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恋愛編
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晩餐後、プライベートスペースで晩酌をしながらくつろいでいたレオナルドのもとに使用人がやって来た
「失礼いたします
ラピス皇国皇太子殿下がお話ししたいと仰っておられますがいかがいたしましょう」
「あぁ、連れてきていいよ」
「承知いたしました」
しばらくして先程の使用人に連れられて訪ねてきたアルベルトは疲れたような、怒っているような…なんとも言えない難しげな表情を浮かべている
「やぁ、アルベルト」
「…遅い時間に悪いな」
「いや、大丈夫
来るんじゃないかと思ってたからね」
その言葉の通り、テーブルにはチーズやナッツなどのツマミ類が一人分にしては多めに準備されていた
レオナルドは扉の側に立ったままのアルベルトに向かいの席に座るよう促すと、使用人に声をかけてグラスをもう一つ持ってこさせる
「まぁ、飲みながら話そうよ」
「いただこう…」
アルベルトがグラスを手に取ったのを確認し、レオナルドは軽くグラスを掲げた
アルベルトもそれにならってグラスを掲げ、それから二人で中身を煽る
「さて、用件を聞こうか?」
グラスが空になる頃、レオナルドがそう切り出すとアルベルトは難しげな表情のまま頷いた
「さっきお前が言っていたことなんだが…」
「晩餐前にした話だね?」
「そうだ」
「OK
聞かせてくれるかい?」
「あぁ…
そうだな…正直、さっきの話を聞いたときは、一国の王族が揃いも揃って子供の我儘を叶えるためにそんな馬鹿げたことを考えるとは思えなかったんだ
いくら可愛がっているとはいえ…
他国の皇太子の婚約者を奪うなんて作戦が明るみになれば国際問題になるしな」
「うん、普通ならそうだよね」
「あぁ、だが晩餐の様子を見て考えが変わった
どうやらお前の話は本当らしい」
「わかってもらえてよかったよ」
アルベルトが苦々しい表情で続ける
「だから先程の提案に乗ろう
考えとやらを聞かせてくれ」
その言葉にレオナルドはにっこりと笑みを浮かべた
「そうこなくっちゃね」
レオナルドがニッと笑顔を浮かべる
俺にはその笑顔に裏があるように見えてしかたがなかった
「…」
…何か企んでるんじゃないだろうな
考えを読もうとじっと顔を見ていると、レオナルドが笑顔のまま首をかしげる
「ん?なに?」
「…いや」
だが協力を頼む手前そんなことは言いにくい
どうしようかと頭を悩ませていると先にレオナルドが口を開いた
「ねぇ、その代わりさ
僕の頼みも聞いてくれない?」
!
やっぱりか
声には出さずに心の中でそう叫ぶ
「・・・何が望みだ?」
おそるおそる尋ねるとレオナルドが笑みの種類を変えた
その笑みはよからぬことを企んでいるという事実を隠そうともしない、悪魔のような笑み
その笑みのままレオナルドは口を開く
「難しい事ではないんだ
ちょっと僕の手伝いをしてくれればいいんだよ」
「手伝い・・・?」
「うん、手伝い」
「・・・内容は?」
「ん~?大したことじゃないよ
やってくれるかい?」
「・・・」
笑っているのに背後に黒いものが見える気がする
承諾を渋って黙り込むがレオナルドもだまったままだ
おそらく俺が承諾するまでこいつは粘るつもりだろう
「・・・わかった
俺にできる範囲の事なら手伝おう」
根負けしてそう返事を返すとレオナルドの笑みが一気に華やぐ
「ありがとう!アルベルトならそう言ってくれると思ってたよ
持つべきものは友達だね!」
芝居がかった感謝の言葉に苦笑がもれた
「それで、内容は?
俺は何をさせられるんだ?」
「あぁ、本当に大したことじゃないんだよ」
その次にでてきた言葉に、俺は耳を疑う
「僕が王太子に…時期国王になる手伝いをしてほしいんだ」
「失礼いたします
ラピス皇国皇太子殿下がお話ししたいと仰っておられますがいかがいたしましょう」
「あぁ、連れてきていいよ」
「承知いたしました」
しばらくして先程の使用人に連れられて訪ねてきたアルベルトは疲れたような、怒っているような…なんとも言えない難しげな表情を浮かべている
「やぁ、アルベルト」
「…遅い時間に悪いな」
「いや、大丈夫
来るんじゃないかと思ってたからね」
その言葉の通り、テーブルにはチーズやナッツなどのツマミ類が一人分にしては多めに準備されていた
レオナルドは扉の側に立ったままのアルベルトに向かいの席に座るよう促すと、使用人に声をかけてグラスをもう一つ持ってこさせる
「まぁ、飲みながら話そうよ」
「いただこう…」
アルベルトがグラスを手に取ったのを確認し、レオナルドは軽くグラスを掲げた
アルベルトもそれにならってグラスを掲げ、それから二人で中身を煽る
「さて、用件を聞こうか?」
グラスが空になる頃、レオナルドがそう切り出すとアルベルトは難しげな表情のまま頷いた
「さっきお前が言っていたことなんだが…」
「晩餐前にした話だね?」
「そうだ」
「OK
聞かせてくれるかい?」
「あぁ…
そうだな…正直、さっきの話を聞いたときは、一国の王族が揃いも揃って子供の我儘を叶えるためにそんな馬鹿げたことを考えるとは思えなかったんだ
いくら可愛がっているとはいえ…
他国の皇太子の婚約者を奪うなんて作戦が明るみになれば国際問題になるしな」
「うん、普通ならそうだよね」
「あぁ、だが晩餐の様子を見て考えが変わった
どうやらお前の話は本当らしい」
「わかってもらえてよかったよ」
アルベルトが苦々しい表情で続ける
「だから先程の提案に乗ろう
考えとやらを聞かせてくれ」
その言葉にレオナルドはにっこりと笑みを浮かべた
「そうこなくっちゃね」
レオナルドがニッと笑顔を浮かべる
俺にはその笑顔に裏があるように見えてしかたがなかった
「…」
…何か企んでるんじゃないだろうな
考えを読もうとじっと顔を見ていると、レオナルドが笑顔のまま首をかしげる
「ん?なに?」
「…いや」
だが協力を頼む手前そんなことは言いにくい
どうしようかと頭を悩ませていると先にレオナルドが口を開いた
「ねぇ、その代わりさ
僕の頼みも聞いてくれない?」
!
やっぱりか
声には出さずに心の中でそう叫ぶ
「・・・何が望みだ?」
おそるおそる尋ねるとレオナルドが笑みの種類を変えた
その笑みはよからぬことを企んでいるという事実を隠そうともしない、悪魔のような笑み
その笑みのままレオナルドは口を開く
「難しい事ではないんだ
ちょっと僕の手伝いをしてくれればいいんだよ」
「手伝い・・・?」
「うん、手伝い」
「・・・内容は?」
「ん~?大したことじゃないよ
やってくれるかい?」
「・・・」
笑っているのに背後に黒いものが見える気がする
承諾を渋って黙り込むがレオナルドもだまったままだ
おそらく俺が承諾するまでこいつは粘るつもりだろう
「・・・わかった
俺にできる範囲の事なら手伝おう」
根負けしてそう返事を返すとレオナルドの笑みが一気に華やぐ
「ありがとう!アルベルトならそう言ってくれると思ってたよ
持つべきものは友達だね!」
芝居がかった感謝の言葉に苦笑がもれた
「それで、内容は?
俺は何をさせられるんだ?」
「あぁ、本当に大したことじゃないんだよ」
その次にでてきた言葉に、俺は耳を疑う
「僕が王太子に…時期国王になる手伝いをしてほしいんだ」
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