上 下
68 / 125
恋愛編

67

しおりを挟む
「ま、そうは言ってもあの子の我が儘のためにそこまでするのはどうかと僕も思ってるんだよ」

レオナルドがカップを机に戻し、ため息をついて足を組んだ

「実際、この話を兄上から聞いたときには適当に話をあわせて僕は逃げようと思ってたからね
あの子の我が儘で自分の結婚相手が決まるなんて冗談じゃない」

その言葉に少しほっとする
この国の王族は何を考えているのかと思っていたが、少なくとも自分の友人はまともだったようだ
無意識に入っていた肩の力を抜き、自分もティーカップに手を伸ばす

「でもさ、学校でセシリア嬢と会ってみて、彼女が相手なら悪くないかなー?と思ったんだよね」
「…は?」

何だって…?

動きを止めた俺にレオナルドがさっきから“は?”ばっかりじゃん、と笑った

「だって、セシリア嬢は美人だし、色っぽいし、成績いいし、頭の回転も早いし…完璧じゃん?
あんな子が伴侶として一生側にいたらいろいろ楽しめるだろうなーと思ったんだよ」
「…」
「それに、アルベルトとセシリア嬢って同じ学校なのに婚約するまで全く関わりなかったでしょ?
もしかして不仲なのかと思ってね
それなら僕がもらっても問題ないんじゃないかと
アルベルトにとっても不仲な相手と完全な政略結婚をするよりは自分のこと好きな相手と結婚した方が幸せかなー?と思ったわけだよ」

そうでしょ?と言うレオナルド
確かにあの頃は俺のせいですれ違い、不仲と言っても過言ではなかった

だが今は違う

焦ってそれを説明しようと口を開きかけるが、レオナルドがそれを遮ると笑って言葉を続けた

「ま、今はそんなこと思ってないからそんなに焦らなくても大丈夫だよ
そもそも、まだそのつもりだったらわざわざこんなこと言いに来ないさ
邪魔されるに決まってるし、いさかいの種にしかならない」
「…ならどういうつもりなんだ?
お前の考えはイマイチ読めん」

そう問うと目の前の友人は食えない笑顔を浮かべる

「んーとね、つまり僕はもうセシリア嬢をどうこうするつもりはないんだ」
「…本当か?」
「本当だよ
だって君、不仲どころかセシリア嬢に本気だろ?」
「なっ!?」

当たり前のように口にされた言葉を聞いて思わず大きな声がでた

なんで知ってる・・・!?

動揺する俺をよそに、レオナルドは優雅な仕草でカップを口に運ぶ

「見てればわかるさ
アルベルト、彼女のことになるとメチャクチャわかりやすいもん
まぁ、セシリア嬢にはいまいち届いてないみたいだけどね」
「…うるさい」

余計な一言に不貞腐れたような声音で答える俺に、レオナルドはからかうような笑顔で笑い、それから
ふっと表情を変えて言葉をつづけた

「いくら楽しいことが好きな僕でも友人の想い人をとったりしないよ
だからさっきの譲る気あるかって言うのも、君の気持ちの確認さ」
「レオナルド…」

少し感動した俺に、まぁくれるっていうなら喜んでもらうけど、と不穏な言葉をさらりと付け足しレオナルドは話題を戻す

「ま、そういう訳で、もう僕はこの話からは降りようと思ってるんだ
だけど兄達は僕が降りたとわかったら挙ってセシリア嬢を口説きにかかると思う」
「…」
「そこで、僕に一つ考えがあるんだけど…
乗ってみる?」
「……どんな考えだ?」
「やだなぁ、それは先には教えられないよ」
「……」

どう?と尋ねるレオナルドを見つつ、俺は思考を巡らせた

こいつの言う事が本当ならこの提案は受け入れておくべきだろう
他国の王族の婚約者を奪おうとするなど国家間の関係に傷をつける行為だ
なにより、せっかく良好になってきたセシリアとの関係にちょっかいを出されたくはない

だが、本当に一国の王族がそんなバカなことを考えるだろうか・・・

悩む俺にレオナルドがさらに言葉をつづける

「悩む気持ちも、僕の話が信じがたいのもわかるけどね
とりあえず、今からある晩餐は国王夫妻以外に兄たちやローズマリーも出席する予定なんだ
そこでの彼らの行動を見てから判断したらいいよ」

そう言うとレオナルドはスッと立ち上がり、じゃ、またあとでねと言い置いて部屋から出て行ってしまった
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

この異世界転生の結末は

冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。 一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう? ※「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

処理中です...