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本編
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「今日はこの辺にしようかしら?」
周りを見渡して人気のないことを確認し、シートを広げて腰を下ろした
続いて持ってきたバスケットを開く
中身は昨日のクッキーと今日の朝作ったパウンドケーキだ
水筒と割れない素材のティーカップを取り出し、カップに水筒の紅茶を注いで魔法で適温まで温めてから口に運ぶ
「ふぅ…美味しい」
今私がいるのは学園の敷地内にある森の中の池のほとり
学校がある日は実習等で使われるこの森は、休日になるとほとんど人がこない
なので考え事をしたいときや一人でのんびりしたいときなどにちょうどいいのだ
入学してまもなくそれに気がついた頃は散策するだけだったが、ここ一年ほどはこうしてお菓子やお茶、シートなどを持参してちょっとしたピクニックを楽しんでいる
友人とお話ししながらのティータイムもいいけれど、やはり一人が気楽よね・・・
そんなことを考えながらクッキーを口に運ぶ
ホロホロと崩れる柔らかな生地に大きめに砕いたナッツがいいアクセントになっている
ん・・・我ながら上出来
口許を綻ばせ機嫌よく二枚目に手を伸ばしたところで、後ろから声が聞こえた
「ねぇ、僕も食べたいな」
「!」
驚いて振り向くとにこにこと微笑む金色が立っていた
「レオナルド様…?」
驚きと困惑で顔が引きつりそうになるのを耐えながら名を呼ぶと、彼は人懐っこい笑みを浮かべながら近寄ってくる
「美味しそうだね、セシリア嬢が作ったの?」
「えぇ…まぁ……どうしてここに?」
「ん?んー…散歩?」
「散歩、ですか…」
「うん。で、くれる?」
「あ…はい
お口に合うかはわかりませんが…」
嫌だなぁ~…と思いながらも断れずに頷くとキラキラした笑みを浮かべてシートに上がり込んできた
「ありがとう
…うん、美味しいよ
なんでもできるとは思ってたけど、料理もできるんだね~…さすがセシリア嬢だ」
「お口にあったようでよかったです…」
爽やかな笑顔で私が作ったクッキーを口に運ぶレオナルド王子
なぜこんなことになったのかしら…
私は一人でまったりとピクニックを楽しむつもりだったのに…
ため息をつきそうになるのを紅茶を飲むことでなんとか耐え、そっと彼に目を向けた
柔らかそうな金色の髪が風を受けてさらさらと靡き、日差しのもとで煌めいている
優しげに微笑む姿は乙女達が夢見る理想の王子様そのものだ
しかし私は知っている
彼のこの姿は表面上のものであり、本当は他人に無関心で計算高い正確だと言うことを
知っている、のだが…
「ねぇ、こっちももらっていいかな?」
聞きながらも返事をする前にパウンドケーキに手を伸ばしている彼
了承を口にするとにこりと笑って礼をのべ、パクリとかじりついた
しばらく咀嚼し、飲み込むと満足気に笑って2口目をかじる
その様子はもって生まれた気品こそ損なわれていないが、行儀のいいものではない
あどけのない様子に警戒心が薄れていくのを感じた
そのうち見られているのに気がついたのだろう、レオナルド様の目線がお菓子の入ったバスケットから動き私を見る
「どうかした?」
お菓子片手にこてんと首をかしげられて思わず笑みが漏れる
「ん?」
「ふふ…失礼しました、なんでもございません」
「そう?…あ、ごめん食べ過ぎたかな?」
「いえ、構いませんよ。多めに持ってきていたので
よければこちらも召し上がってください」
そう言ってまだ彼が食べていなかったドライフルーツの入ったパウンドケーキを進めると、嬉しそうに受け取った
「ありがとう」
「いえ
…甘いものがお好きなんですか?」
「ん?ん~…甘いものというよりも…」
途切れた言葉を待っていると、レオナルドはとろけるような笑みを浮かべて口を開いた
「君の作ったものだからね」
「…は?」
思わず礼儀を欠いた声が出たが、私は悪くないと思う
周りを見渡して人気のないことを確認し、シートを広げて腰を下ろした
続いて持ってきたバスケットを開く
中身は昨日のクッキーと今日の朝作ったパウンドケーキだ
水筒と割れない素材のティーカップを取り出し、カップに水筒の紅茶を注いで魔法で適温まで温めてから口に運ぶ
「ふぅ…美味しい」
今私がいるのは学園の敷地内にある森の中の池のほとり
学校がある日は実習等で使われるこの森は、休日になるとほとんど人がこない
なので考え事をしたいときや一人でのんびりしたいときなどにちょうどいいのだ
入学してまもなくそれに気がついた頃は散策するだけだったが、ここ一年ほどはこうしてお菓子やお茶、シートなどを持参してちょっとしたピクニックを楽しんでいる
友人とお話ししながらのティータイムもいいけれど、やはり一人が気楽よね・・・
そんなことを考えながらクッキーを口に運ぶ
ホロホロと崩れる柔らかな生地に大きめに砕いたナッツがいいアクセントになっている
ん・・・我ながら上出来
口許を綻ばせ機嫌よく二枚目に手を伸ばしたところで、後ろから声が聞こえた
「ねぇ、僕も食べたいな」
「!」
驚いて振り向くとにこにこと微笑む金色が立っていた
「レオナルド様…?」
驚きと困惑で顔が引きつりそうになるのを耐えながら名を呼ぶと、彼は人懐っこい笑みを浮かべながら近寄ってくる
「美味しそうだね、セシリア嬢が作ったの?」
「えぇ…まぁ……どうしてここに?」
「ん?んー…散歩?」
「散歩、ですか…」
「うん。で、くれる?」
「あ…はい
お口に合うかはわかりませんが…」
嫌だなぁ~…と思いながらも断れずに頷くとキラキラした笑みを浮かべてシートに上がり込んできた
「ありがとう
…うん、美味しいよ
なんでもできるとは思ってたけど、料理もできるんだね~…さすがセシリア嬢だ」
「お口にあったようでよかったです…」
爽やかな笑顔で私が作ったクッキーを口に運ぶレオナルド王子
なぜこんなことになったのかしら…
私は一人でまったりとピクニックを楽しむつもりだったのに…
ため息をつきそうになるのを紅茶を飲むことでなんとか耐え、そっと彼に目を向けた
柔らかそうな金色の髪が風を受けてさらさらと靡き、日差しのもとで煌めいている
優しげに微笑む姿は乙女達が夢見る理想の王子様そのものだ
しかし私は知っている
彼のこの姿は表面上のものであり、本当は他人に無関心で計算高い正確だと言うことを
知っている、のだが…
「ねぇ、こっちももらっていいかな?」
聞きながらも返事をする前にパウンドケーキに手を伸ばしている彼
了承を口にするとにこりと笑って礼をのべ、パクリとかじりついた
しばらく咀嚼し、飲み込むと満足気に笑って2口目をかじる
その様子はもって生まれた気品こそ損なわれていないが、行儀のいいものではない
あどけのない様子に警戒心が薄れていくのを感じた
そのうち見られているのに気がついたのだろう、レオナルド様の目線がお菓子の入ったバスケットから動き私を見る
「どうかした?」
お菓子片手にこてんと首をかしげられて思わず笑みが漏れる
「ん?」
「ふふ…失礼しました、なんでもございません」
「そう?…あ、ごめん食べ過ぎたかな?」
「いえ、構いませんよ。多めに持ってきていたので
よければこちらも召し上がってください」
そう言ってまだ彼が食べていなかったドライフルーツの入ったパウンドケーキを進めると、嬉しそうに受け取った
「ありがとう」
「いえ
…甘いものがお好きなんですか?」
「ん?ん~…甘いものというよりも…」
途切れた言葉を待っていると、レオナルドはとろけるような笑みを浮かべて口を開いた
「君の作ったものだからね」
「…は?」
思わず礼儀を欠いた声が出たが、私は悪くないと思う
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