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本編
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満面の笑みで手を差し出すヒロイン
ヒロインの勢いに若干脅えているメインヒーロー
ヒロインに無視される悪役令嬢
そんなカオスな状況のなか
最初に口を開いたのはメインヒーローことアルベルトだった
「…ホワードというと、ホワード男爵の?」
「うん、そう」
「そうか…男爵にご令嬢がいたとは知らなかったな」
「あ、パパの娘だってわかったのはこの間だから」
事も無げに少女が答える
殿下はそれに首をかしげた
「…?どういうことだ?」
「そのままよ。14までママと平民として暮らしてたの
パパが迎えに来てくれて、やっと男爵令嬢だってわかったのよ」
「あぁ…なるほど…
そう言えば、跡継ぎに恵まれなかった男爵が庶子を引き取って養育しはじめたと聞いたような…」
「そうそう。それがアリスのこと
だからここにも13からは通えてなくて…
15歳だけど今年入学なの」
「そうか…」
殿下が納得したようにうなずく
そのやりとりをじっと聞いてしまっていたが、ハッと我にかえった
この子、また敬語も使わずに話してるじゃない…
「殿下…?」
何を普通に話してるんですか
きちんと敬語を使うように注意してください
そんな思いを込め、困ったような表情を作って呼び掛けると、殿下も気がついたようで一つ咳払いをしてから口を開いた
「事情はわかった
まだ貴族社会に慣れていないんだろうが…
いくら学園内と言えど身分が上の者に対してそんな言葉遣いは頂けないな
人目のあるところでは特に」
殿下がそう言うとヒロインは不思議そうな顔でしばらく彼を見つめ、やがて笑顔で頷いた
「そうよね…アリス以外がアルベルトに馴れ馴れしくしたら嫌だもん」
「…は?」
「次から気を付けるようにするわ
ごめんなさい」
「え…?いや…」
「あ、先生に呼ばれてるんだった!
もう行くね?アルベルト、またね!」
そう言い残し、ヒロインはスカートを翻して走り去ってしまった
唖然とその後ろ姿を見送ったあと、殿下が話しかけてきた
「…絶対わかってないよな?」
「…私もそう思いますわ」
「…どうしたらいいと思う?」
「…私に聞かれましても」
二人で顔を見合わせる
「…なんとかしろ」
「私が、ですか?」
「お前ならなんとでもできるだろ」
「そんな無茶な…殿下こそ、何とかしてくださいな」
「女同士の方がいいだろ?」
「あの方は殿方の仰る事の方が素直に聞きいれるのでは?」
「…いや、お前の方がいいと思うが…」
「いえ、殿下の方がよろしいかと…」
周囲に聞こえないよう、小声で押し付けあっているうちに可笑しくなってきた
どちらともなく笑みが溢れる
「ははっ…困ったものだな」
「ふふふ…笑い事ではないのですが…」
「お前こそ笑っているじゃないか」
「殿下こそ…」
お互いに変なツボに入ってしまったようで笑いが止まらない
周囲の目も気にせず、しばらく二人でクスクスと笑い続ける
この日、私たちは図らずしも何年かぶりに二人で笑いあった
ヒロインの勢いに若干脅えているメインヒーロー
ヒロインに無視される悪役令嬢
そんなカオスな状況のなか
最初に口を開いたのはメインヒーローことアルベルトだった
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「うん、そう」
「そうか…男爵にご令嬢がいたとは知らなかったな」
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事も無げに少女が答える
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だからここにも13からは通えてなくて…
15歳だけど今年入学なの」
「そうか…」
殿下が納得したようにうなずく
そのやりとりをじっと聞いてしまっていたが、ハッと我にかえった
この子、また敬語も使わずに話してるじゃない…
「殿下…?」
何を普通に話してるんですか
きちんと敬語を使うように注意してください
そんな思いを込め、困ったような表情を作って呼び掛けると、殿下も気がついたようで一つ咳払いをしてから口を開いた
「事情はわかった
まだ貴族社会に慣れていないんだろうが…
いくら学園内と言えど身分が上の者に対してそんな言葉遣いは頂けないな
人目のあるところでは特に」
殿下がそう言うとヒロインは不思議そうな顔でしばらく彼を見つめ、やがて笑顔で頷いた
「そうよね…アリス以外がアルベルトに馴れ馴れしくしたら嫌だもん」
「…は?」
「次から気を付けるようにするわ
ごめんなさい」
「え…?いや…」
「あ、先生に呼ばれてるんだった!
もう行くね?アルベルト、またね!」
そう言い残し、ヒロインはスカートを翻して走り去ってしまった
唖然とその後ろ姿を見送ったあと、殿下が話しかけてきた
「…絶対わかってないよな?」
「…私もそう思いますわ」
「…どうしたらいいと思う?」
「…私に聞かれましても」
二人で顔を見合わせる
「…なんとかしろ」
「私が、ですか?」
「お前ならなんとでもできるだろ」
「そんな無茶な…殿下こそ、何とかしてくださいな」
「女同士の方がいいだろ?」
「あの方は殿方の仰る事の方が素直に聞きいれるのでは?」
「…いや、お前の方がいいと思うが…」
「いえ、殿下の方がよろしいかと…」
周囲に聞こえないよう、小声で押し付けあっているうちに可笑しくなってきた
どちらともなく笑みが溢れる
「ははっ…困ったものだな」
「ふふふ…笑い事ではないのですが…」
「お前こそ笑っているじゃないか」
「殿下こそ…」
お互いに変なツボに入ってしまったようで笑いが止まらない
周囲の目も気にせず、しばらく二人でクスクスと笑い続ける
この日、私たちは図らずしも何年かぶりに二人で笑いあった
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