甘イキしながら生きてます

ナツキ

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いち。

汚いってなにさ。

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ゆうと先パイ、見てもないにこコーチの背中を汚いだって。

そんな言い方する人だったなんて、百年の恋も覚めましたわ。はいはい。

もう、これはにこコーチにアプローチしてみよっかな。セフレにはなれるんじゃないかな。










いやいや、待って。









汚いだろ。気持ち悪いよな。









……これって、誰のこと?






さっきはカッとなってしまったけど、冷静になって考えてみたら、違う気がしてきた。


やさしい先パイが、見てもいないにこコーチの背中を、汚いだなんていうはずがない。


だって『汚い』のあと、おれのこと『きれい』っていったよね。

えっちしたとき、はだかにされたとき、おれの身体が『きれい』といった。






……自分のこと、だったのかな。



見せてくれない、先パイの身体。















「一ノ瀬先パイ~、お疲れ様です」

「お疲れ、伊織」

食堂で一ノ瀬先パイを見つけ、遠慮なくぐいぐいと横に座った。先パイの正面には、あまね先パイが座っていた。

「なんで今日練習休んだんですか~」

「えー、だっておれサッカー部じゃないだろ」

「いやもうサッカー部員でしょ。地区予選レギュラーだったじゃないですかぁ」

「一ノ瀬、やっぱサッカー部入ったら?」
くすくすとそばで笑うあまね先パイ。

「やだよ~部活しながら特進科はムリムリ」

「ゆうと先パイも、一ノ瀬先パイのこと待ってますからね~」

「ゆーとなあ~、今日怒ってた?」

「ゆうと先パイは怒ってないですけど、にこコーチが怒ってましたよ。今度からはしょっちゅうにこコーチが来るそうです~」

「フクフクコーチのこと?  にこって名字なんだ。知らなかったな」

「ねえ、一ノ瀬先パイ~あとで部屋行ってもいいですか♡」
ちろり、とあまね先パイに目をむけた。先パイは気づいてくれて、箸を置いた。


「俺、席はずそうか?」
にこりと笑って、あまね先パイがトレイを持って立ち上がった。

「あ~ありがとうございます♡」

「悪い、あまね」

「いいよ。じゃあね、天野くん」

「はい♡」


あまね先パイが去ると、一ノ瀬先パイが小声でいった。
「おい、あまねに飯食べさせてるんだから、今度からは邪魔するなよ」



過保護ですか。

あまね先パイ、食べないですもんね。



……食べれない、のかな。



「はーい、ごめんなさい♡」
気にしないふりして、無邪気にふるまう。



無邪気、って自分でいう時点で無邪気じゃないわ。
やっぱおれ腹黒いなあ。








「で、なに?」

「あー、えっと。ゆうと先パイのことなんですけど」

「うん」

「身体に傷、とかありますかね?  気にしてるっぽくて」

「ゆーとの、身体?  ああ……人前で、脱がないよな」

「そうなんですよ。一ノ瀬先パイなら知ってるかなと思って」

「自分で聞けば?  つきあってるんだろ」

あれ。バレてた?


「もう、ふられました~」
と、おれは正直にいう。

「え、うそ。いつも伊織のこと見てるじゃん」

「この前の遠征中に、終わりだっていわれたんです~」

「えー?  ……じゃあ、お互い未練がある感じなんだなあ」

ゆうと先パイ、ふったくせに、おれに未練がある?
まさかあ。

「伊織って、実は自分のこと話さないよな?  のらりくらりかわしてるの、うまい。ゆーと、伊織が教えてくれないって嘆いてたよ。つきあってたころか、あとかわかんないけど、そんなこといってた。もう一回正直に話してみたら?」

「のらりくらりって。おれにぴったりな言葉だ~」

「なあ、オレには天涯孤独っていえたのに、なんでゆーとに話せなかったんだよ。……ごめん、知ってると思って、それらしいこといっちゃったんだ。ゆーと驚いてた」

「も~なんでいっちゃうんですか~。まあいいですけど」

そういえば、ゆうと先パイ、海に寄り道したとき、わざわざ1年のバスにまできた。

答えてたら、ゆうと先パイも裸になってくれたのかな。

いや、むりでしょ。

ふられたあとだったし。


ん。

未練がある?



おれに未練がある?



好きだけど、ふった……?



「一ノ瀬先パイ~、ゆうと先パイって、おれのこと好きだったのかな」




「好きだろ。そんで、まだ好きだよ、たぶん」







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