10 / 30
いち。
汚いってなにさ。
しおりを挟む
ゆうと先パイ、見てもないにこコーチの背中を汚いだって。
そんな言い方する人だったなんて、百年の恋も覚めましたわ。はいはい。
もう、これはにこコーチにアプローチしてみよっかな。セフレにはなれるんじゃないかな。
いやいや、待って。
汚いだろ。気持ち悪いよな。
……これって、誰のこと?
さっきはカッとなってしまったけど、冷静になって考えてみたら、違う気がしてきた。
やさしい先パイが、見てもいないにこコーチの背中を、汚いだなんていうはずがない。
だって『汚い』のあと、おれのこと『きれい』っていったよね。
えっちしたとき、はだかにされたとき、おれの身体が『きれい』といった。
……自分のこと、だったのかな。
見せてくれない、先パイの身体。
「一ノ瀬先パイ~、お疲れ様です」
「お疲れ、伊織」
食堂で一ノ瀬先パイを見つけ、遠慮なくぐいぐいと横に座った。先パイの正面には、あまね先パイが座っていた。
「なんで今日練習休んだんですか~」
「えー、だっておれサッカー部じゃないだろ」
「いやもうサッカー部員でしょ。地区予選レギュラーだったじゃないですかぁ」
「一ノ瀬、やっぱサッカー部入ったら?」
くすくすとそばで笑うあまね先パイ。
「やだよ~部活しながら特進科はムリムリ」
「ゆうと先パイも、一ノ瀬先パイのこと待ってますからね~」
「ゆーとなあ~、今日怒ってた?」
「ゆうと先パイは怒ってないですけど、にこコーチが怒ってましたよ。今度からはしょっちゅうにこコーチが来るそうです~」
「フクフクコーチのこと? にこって名字なんだ。知らなかったな」
「ねえ、一ノ瀬先パイ~あとで部屋行ってもいいですか♡」
ちろり、とあまね先パイに目をむけた。先パイは気づいてくれて、箸を置いた。
「俺、席はずそうか?」
にこりと笑って、あまね先パイがトレイを持って立ち上がった。
「あ~ありがとうございます♡」
「悪い、あまね」
「いいよ。じゃあね、天野くん」
「はい♡」
あまね先パイが去ると、一ノ瀬先パイが小声でいった。
「おい、あまねに飯食べさせてるんだから、今度からは邪魔するなよ」
過保護ですか。
あまね先パイ、食べないですもんね。
……食べれない、のかな。
「はーい、ごめんなさい♡」
気にしないふりして、無邪気にふるまう。
無邪気、って自分でいう時点で無邪気じゃないわ。
やっぱおれ腹黒いなあ。
「で、なに?」
「あー、えっと。ゆうと先パイのことなんですけど」
「うん」
「身体に傷、とかありますかね? 気にしてるっぽくて」
「ゆーとの、身体? ああ……人前で、脱がないよな」
「そうなんですよ。一ノ瀬先パイなら知ってるかなと思って」
「自分で聞けば? つきあってるんだろ」
あれ。バレてた?
「もう、ふられました~」
と、おれは正直にいう。
「え、うそ。いつも伊織のこと見てるじゃん」
「この前の遠征中に、終わりだっていわれたんです~」
「えー? ……じゃあ、お互い未練がある感じなんだなあ」
ゆうと先パイ、ふったくせに、おれに未練がある?
まさかあ。
「伊織って、実は自分のこと話さないよな? のらりくらりかわしてるの、うまい。ゆーと、伊織が教えてくれないって嘆いてたよ。つきあってたころか、あとかわかんないけど、そんなこといってた。もう一回正直に話してみたら?」
「のらりくらりって。おれにぴったりな言葉だ~」
「なあ、オレには天涯孤独っていえたのに、なんでゆーとに話せなかったんだよ。……ごめん、知ってると思って、それらしいこといっちゃったんだ。ゆーと驚いてた」
「も~なんでいっちゃうんですか~。まあいいですけど」
そういえば、ゆうと先パイ、海に寄り道したとき、わざわざ1年のバスにまできた。
答えてたら、ゆうと先パイも裸になってくれたのかな。
いや、むりでしょ。
ふられたあとだったし。
ん。
未練がある?
おれに未練がある?
好きだけど、ふった……?
「一ノ瀬先パイ~、ゆうと先パイって、おれのこと好きだったのかな」
「好きだろ。そんで、まだ好きだよ、たぶん」
そんな言い方する人だったなんて、百年の恋も覚めましたわ。はいはい。
もう、これはにこコーチにアプローチしてみよっかな。セフレにはなれるんじゃないかな。
いやいや、待って。
汚いだろ。気持ち悪いよな。
……これって、誰のこと?
さっきはカッとなってしまったけど、冷静になって考えてみたら、違う気がしてきた。
やさしい先パイが、見てもいないにこコーチの背中を、汚いだなんていうはずがない。
だって『汚い』のあと、おれのこと『きれい』っていったよね。
えっちしたとき、はだかにされたとき、おれの身体が『きれい』といった。
……自分のこと、だったのかな。
見せてくれない、先パイの身体。
「一ノ瀬先パイ~、お疲れ様です」
「お疲れ、伊織」
食堂で一ノ瀬先パイを見つけ、遠慮なくぐいぐいと横に座った。先パイの正面には、あまね先パイが座っていた。
「なんで今日練習休んだんですか~」
「えー、だっておれサッカー部じゃないだろ」
「いやもうサッカー部員でしょ。地区予選レギュラーだったじゃないですかぁ」
「一ノ瀬、やっぱサッカー部入ったら?」
くすくすとそばで笑うあまね先パイ。
「やだよ~部活しながら特進科はムリムリ」
「ゆうと先パイも、一ノ瀬先パイのこと待ってますからね~」
「ゆーとなあ~、今日怒ってた?」
「ゆうと先パイは怒ってないですけど、にこコーチが怒ってましたよ。今度からはしょっちゅうにこコーチが来るそうです~」
「フクフクコーチのこと? にこって名字なんだ。知らなかったな」
「ねえ、一ノ瀬先パイ~あとで部屋行ってもいいですか♡」
ちろり、とあまね先パイに目をむけた。先パイは気づいてくれて、箸を置いた。
「俺、席はずそうか?」
にこりと笑って、あまね先パイがトレイを持って立ち上がった。
「あ~ありがとうございます♡」
「悪い、あまね」
「いいよ。じゃあね、天野くん」
「はい♡」
あまね先パイが去ると、一ノ瀬先パイが小声でいった。
「おい、あまねに飯食べさせてるんだから、今度からは邪魔するなよ」
過保護ですか。
あまね先パイ、食べないですもんね。
……食べれない、のかな。
「はーい、ごめんなさい♡」
気にしないふりして、無邪気にふるまう。
無邪気、って自分でいう時点で無邪気じゃないわ。
やっぱおれ腹黒いなあ。
「で、なに?」
「あー、えっと。ゆうと先パイのことなんですけど」
「うん」
「身体に傷、とかありますかね? 気にしてるっぽくて」
「ゆーとの、身体? ああ……人前で、脱がないよな」
「そうなんですよ。一ノ瀬先パイなら知ってるかなと思って」
「自分で聞けば? つきあってるんだろ」
あれ。バレてた?
「もう、ふられました~」
と、おれは正直にいう。
「え、うそ。いつも伊織のこと見てるじゃん」
「この前の遠征中に、終わりだっていわれたんです~」
「えー? ……じゃあ、お互い未練がある感じなんだなあ」
ゆうと先パイ、ふったくせに、おれに未練がある?
まさかあ。
「伊織って、実は自分のこと話さないよな? のらりくらりかわしてるの、うまい。ゆーと、伊織が教えてくれないって嘆いてたよ。つきあってたころか、あとかわかんないけど、そんなこといってた。もう一回正直に話してみたら?」
「のらりくらりって。おれにぴったりな言葉だ~」
「なあ、オレには天涯孤独っていえたのに、なんでゆーとに話せなかったんだよ。……ごめん、知ってると思って、それらしいこといっちゃったんだ。ゆーと驚いてた」
「も~なんでいっちゃうんですか~。まあいいですけど」
そういえば、ゆうと先パイ、海に寄り道したとき、わざわざ1年のバスにまできた。
答えてたら、ゆうと先パイも裸になってくれたのかな。
いや、むりでしょ。
ふられたあとだったし。
ん。
未練がある?
おれに未練がある?
好きだけど、ふった……?
「一ノ瀬先パイ~、ゆうと先パイって、おれのこと好きだったのかな」
「好きだろ。そんで、まだ好きだよ、たぶん」
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
痴漢に勝てない肉便器のゆずきくん♡
しゃくな
BL
痴漢にあってぷるぷるしていた男子高校生があへあへ快楽堕ちするお話です。
主人公
花山 柚木(17)
ちっちゃくて可愛い男子高校生。電車通学。毎朝痴漢されている。
髪の色とか目の色はお好みでどうぞ。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
壊れたおもちゃ
ナツキ
BL
弟×兄
東京で暮らす兄弟の話。
働く気のないドS鬼畜な濱松悠成(18)のために、健気な兄の陽介(20)がウリ専で稼いでいる。
短編です。
2024/06/05一度完結
2024/06/15〜章を分けて再開しました。不定期です
皇帝の肉便器
眠りん
BL
この国の皇宮では、皇太子付きの肉便器というシステムがある。
男性限定で、死刑となった者に懲罰を与えた後、死ぬまで壁尻となる処刑法である。
懲罰による身体の傷と飢えの中犯され、殆どが三日で絶命する。
皇太子のウェルディスが十二歳となった時に、肉便器部屋で死刑囚を使った自慰行為を教わり、大人になって王位に就いてからも利用していた。
肉便器というのは、人間のとしての価値がなくなって後は処分するしかない存在だと教えられてきて、それに対し何も疑問に思った事がなかった。
死ねば役目を終え、処分されるだけだと──。
ある日、初めて一週間以上も死なずに耐え続けた肉便器がいた。
珍しい肉便器に興味を持ち、彼の処刑を取り消すよう働きかけようとした時、その肉便器が拘束されていた部屋から逃げ出して……。
続編で、『離宮の愛人』を投稿しています。
※ちょっとふざけて書きました。
※誤字脱字は許してください。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる