甘イキしながら生きてます

ナツキ

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いち。

なんなんですか~っ。

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「かわいいな、伊織」

「はぁっ♡はぁっ♡うれしぃ♡♡」





にこコーチってば、テクニシャン~♡おれ、きもちよーく簡単にイっちゃった。



「じゃあ、伊織の口借りようかな」

「はい♡」



ガチャッバタンッ



部室のドアが乱暴に開く音がしたから、あわてて下げられたズボンを元にもどす。にこコーチもおれから離れた。

あ、とばしたの、ふかなきゃ……




「あ、お疲れ様です、フクフクコーチ。今日はありがとうございました!」

ゆうと先パイだった。

「どうした?  忘れ物か?」

行為が中断されたせいなのか、にこコーチのかすかな苛立った声に、ちんこがまたじんじんときた。

「あー、ノート忘れて。そうだ、コーチ、今度からの練習メニューのこと、聞いてもいいですか」

「ん?  ああ。いいよ」

にこコーチはあきらめたのか、小さなため息をついて小さなテーブルの置いた場所へ移動した。おれは、自分のロッカーの前へ行き、着替える。2人がおれに背をむけて話してる間に、とんじゃった精液をタオルでふく。


着替え終わり、おれは挨拶をして部室を出た。




あー、にこコーチとライン交換するの忘れた。


今度チャンスあるかなあ。


自転車置き場で、スマホをいじってると、ゆうと先パイが走ってやってきた。




「ゆうと先パイ、打ち合わせ終わったんですか?」

「終わらせたんだよ。伊織と話したかったから」

「えー♡ふったのに、話しかけてくれるんですか」

ちょっとだけ、イヤミっぽくいっちゃう。


「副コーチと、つきあうつもり?」




あ、やっぱり。







先パイ、あのとき部室にいたんだ~。


ガチャ、って大きく開く音が聞こえるの、内側からドアノブ回したときだもんね。古くてちょっと壊れかけてるドアノブだから。




あの部室、入り口そばにサボれるスペースあるからな。おれよく使ってる。

そこにいたんですね。



「えー?」

おれはとぼける。


「……キス、そんなに気持ち良かったのか?」


ん?


しっと?



「おれ……ゆうと先パイにふられましたよね?  にこコーチのこと気にするんですか」


「別に」


な、なにさあ。


もう。



「おれが誰とどうなろうと、先パイには関係ないでしょっ」

ちょっと乱暴にいってみる。

どんな反応するかな。


「そうだな、悪かった」


あれま。

謝りますか。


「寮まで送るよ」

「……なんでですか」


うーん。

わからない。


もどかしい。


でも、おれはゆうと先パイに片思いしてるから、ほんとはうれしいけれど。

そんな態度したらまた離れていっちゃうだろうから、見せない。



とぼとぼ、自転車を押して向かう。

ゆうと先パイからは、なにもしゃべらなかった。

おれは声が聞きたいから、少しだけ会話することにした。

「ゆうと先パイ、フクフクコーチ、にこコーチって呼んで欲しいそうですよ。名前で」

「そうなんだ。わかった」

「プロだったらしいですね」

「あれ、知らなかったか?  3、4年前だぞ?」

「知らなーい」

「大きな事故に巻き込まれて、ニュースにもなった」

あ、そういえばプロサッカー選手が乗ってた車が事故ったとか昔ニュースで見た気がする。あの事故でケガしちゃったんだ。

「そっかあ、ほんとに生き抜いた証なんですね。重体とか、意識不明とか、そんな事故でしたよね」

それをタトゥーで見えなくしちゃうなんて、もったいなかったな。

おれだったら毎日ながめて、愛しくキスしてあげたい。

「背中の傷のこといってる?」

「そう。タトゥーで隠しちゃってますけど」

あ、タトゥーのことないしょっていわれたけど。
でもゆうと先パイ盗み聞きしてたからいっか。


「……汚いじゃん」


え?


「伊織はきれいだよな」



んん?






「じ、事故の傷のこと、汚いっていいました……?」


「汚いだろ。……気持ち悪い」





「━━━━っ」


おれは、おこった。

でも、言葉にはできなかった。

大好きだった、ゆうと先パイから聞きたくなかった。


おれは、自転車にまたがって、逃げるようにこいでその場を離れた。






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