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1・これが始まり
マンション1
しおりを挟む「えっろい顔だな」
「っっ!! せんせっ?」
先生の、あまり見かけたことない車種の車にチャリも積み込み、途中でコンビニに寄って先生のマンションにやってきた。ラグジュアリーなエントランスをくぐり抜け、エレベーターで最上階のボタンを先生が押したとき、汚れた黒シャツ姿の俺が鏡に映って、場違い感のあまり恥ずかしくなった。
玄関で靴を脱いでポカンとしていると、「リビング片付けるから先にシャワー行け」と風呂を催促された。
浴室を出ると着替えが置いてあり、洗濯機が回っていた。どうやら俺の服は洗ってくれているようだ。先生のTシャツを着てリビングに入ると先生はまたタバコを吸っていた。
この人ヘビースモーカーだな~とあきれつつも、指の先まで完璧な美をまとった先生に不覚にも見惚れてしまった。
「あー、やっぱ頬と首は痕あるな。身体はどう?」
「左手首が痛いような」
L字型のソファに座っていた先生はタバコを口に咥え、俺の両手を見比べ「若干腫れてるな……」と言い、テレビ台の下からケースを取り出して、湿布とテープで固定してくれた。
先生はラグに腰をおろして手当てしてくれたので、俺はソファから先生を見下ろす形でぼんやりと眺めていた。
先生は軟膏のチューブのキャップを開けると、視線を感じたのか、俺を見上げてフッと笑った。
「なに? オレのことめちゃくちゃ見てない?」
あっ!と声をあげ、「ご、ごめんなさい」と羞恥で顔を赤らめながら謝った。
「髪の毛、栗色ですごく綺麗だなーと思って。やわらかそうで」
「それはどうも。外国の血が少し入っててね」
言われ慣れてるのか、先生は軽く返事をした。
先生は人差し指に軟膏を出し、俺の切れた口の端をなぞった。
「っっ!!」
ドキッとした。心臓が、口から飛び出るぐらいに高鳴った。
「えっろい顔だな」
先生はゆっっくりと俺の顔に近づき、唇の左端にキスをした。
「っっ!! せんせっ?」
俺は驚いて声がうわずってしまう。先生は止めることなく、再び顔を寄せてきて舌でペロっと唇を舐めた。のけぞる俺の背中に手を回し、覆い被さるように俺を捕まえた。
「オレのこと好きだろ」
先生は濡れた舌で俺の唇をこじ開け、歯を舐め、ぬるりぬるりと口の中に侵入してきた。
俺の舌先に先生の舌が触れると、ちろりと舐め、そして唇を離した。
「先生……」
俺は恥ずかしくて顔はおろか全身真っ赤になった。
「男とやるの初めてだけど、キスは気持ちいいわ。あまねは?」
「お、俺も初めてです……」
カアーッと、顔が火照るのを感じる。
「寮ではこういうことないの」
「あ、えー……と……」
『キス』は、したことないが……とても先生には言えなくて、しどろもどろに答えた。
ククク、と先生は喉で笑って、ソファの背もたれ部分に俺の後頭部を押しつけ、左の耳元で「……お前、かわいいよ」と囁いた。先生のふわりとした髪が俺の頬にかかる。
ドクン、ドクンと高鳴る鼓動は、先生にも聞こえているんじゃないか。俺はこれ以上密着しないように、先生の肩に手を添えようとした。
「……新藤凪は、先輩の名前」
先生が、まさかのタイミングで話し出した。俺は、先生の下で硬直して動けない。
「当直医のバイトに行けなくなった先輩の代わりに、オレが行っただけ」
俺の首筋に先生の吐息がかかり、低音で囁かれた俺の耳はこれ以上ないくらいゾクゾクした。
「オレは一応ドクターだけど、まあ偽物だったから、初診の秋吉君を診るわけにはいかなかった。親も来てないし。それでケースワーカーとの面談だけで終わらせた」
「そう、だったんですか。……ね、先生、えーと……、そろそろ……離れてもらえますか」
「いやだ」
先生は優しく官能的に首筋にキスしてきた。
「っ!! 先生!!」
首についた痣を舌でペロリペロリと舐めていく。そして吸い付くようにキスをした。
「んっ……やめ……てっ」
「……あの子は、首筋を愛撫するとめちゃくちゃ喜んだけどなー……」
先生は独り言のように、小さく呟く。
「先生っ!! あっ、んンっ」
Tシャツの裾から手を入れられ、さわさわとわき腹から乳首あたりを触られた。くすぐったいやら、気持ちいいやらで思考がとろとろに溶けそうだ。
甘美な誘惑は俺の脳を狂わせていく。
寮の先輩と、冗談半分でやった行為よりもはるかに気持ちが良く、俺の股間はピクピクと反応しとろりと透明な液を出した。わずかに先生の身体と擦れ、それがますます刺激となってさらに硬く、反り立っていった。
━━━ああ、先生の狙いはこれか……
この行為をやめさせようと、俺は快楽を必死にこらえて声を放った。
「せんっせ……!! あの!! …………薬、盗もうとしてますよね」
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