上 下
3 / 102
1・これが始まり

マンション1

しおりを挟む


「えっろい顔だな」


「っっ!!  せんせっ?」






先生の、あまり見かけたことない車種の車にチャリも積み込み、途中でコンビニに寄って先生のマンションにやってきた。ラグジュアリーなエントランスをくぐり抜け、エレベーターで最上階のボタンを先生が押したとき、汚れた黒シャツ姿の俺が鏡に映って、場違い感のあまり恥ずかしくなった。

玄関で靴を脱いでポカンとしていると、「リビング片付けるから先にシャワー行け」と風呂を催促された。

浴室を出ると着替えが置いてあり、洗濯機が回っていた。どうやら俺の服は洗ってくれているようだ。先生のTシャツを着てリビングに入ると先生はまたタバコを吸っていた。
この人ヘビースモーカーだな~とあきれつつも、指の先まで完璧な美をまとった先生に不覚にも見惚れてしまった。

「あー、やっぱ頬と首は痕あるな。身体はどう?」

「左手首が痛いような」
L字型のソファに座っていた先生はタバコを口に咥え、俺の両手を見比べ「若干腫れてるな……」と言い、テレビ台の下からケースを取り出して、湿布とテープで固定してくれた。

先生はラグに腰をおろして手当てしてくれたので、俺はソファから先生を見下ろす形でぼんやりと眺めていた。
先生は軟膏のチューブのキャップを開けると、視線を感じたのか、俺を見上げてフッと笑った。
「なに?  オレのことめちゃくちゃ見てない?」

あっ!と声をあげ、「ご、ごめんなさい」と羞恥で顔を赤らめながら謝った。
「髪の毛、栗色ですごく綺麗だなーと思って。やわらかそうで」

「それはどうも。外国の血が少し入っててね」

言われ慣れてるのか、先生は軽く返事をした。


先生は人差し指に軟膏を出し、俺の切れた口の端をなぞった。
「っっ!!」

ドキッとした。心臓が、口から飛び出るぐらいに高鳴った。

「えっろい顔だな」

先生はゆっっくりと俺の顔に近づき、唇の左端にキスをした。

「っっ!!  せんせっ?」

俺は驚いて声がうわずってしまう。先生は止めることなく、再び顔を寄せてきて舌でペロっと唇を舐めた。のけぞる俺の背中に手を回し、覆い被さるように俺を捕まえた。

「オレのこと好きだろ」

先生は濡れた舌で俺の唇をこじ開け、歯を舐め、ぬるりぬるりと口の中に侵入してきた。

俺の舌先に先生の舌が触れると、ちろりと舐め、そして唇を離した。

「先生……」
俺は恥ずかしくて顔はおろか全身真っ赤になった。

「男とやるの初めてだけど、キスは気持ちいいわ。あまねは?」

「お、俺も初めてです……」
カアーッと、顔が火照るのを感じる。

「寮ではこういうことないの」
「あ、えー……と……」
『キス』は、したことないが……とても先生には言えなくて、しどろもどろに答えた。

ククク、と先生は喉で笑って、ソファの背もたれ部分に俺の後頭部を押しつけ、左の耳元で「……お前、かわいいよ」と囁いた。先生のふわりとした髪が俺の頬にかかる。
ドクン、ドクンと高鳴る鼓動は、先生にも聞こえているんじゃないか。俺はこれ以上密着しないように、先生の肩に手を添えようとした。

「……新藤凪は、先輩の名前」

先生が、まさかのタイミングで話し出した。俺は、先生の下で硬直して動けない。

「当直医のバイトに行けなくなった先輩の代わりに、オレが行っただけ」
俺の首筋に先生の吐息がかかり、低音で囁かれた俺の耳はこれ以上ないくらいゾクゾクした。

「オレは一応ドクターだけど、まあ偽物だったから、初診の秋吉君を診るわけにはいかなかった。親も来てないし。それでケースワーカーとの面談だけで終わらせた」

「そう、だったんですか。……ね、先生、えーと……、そろそろ……離れてもらえますか」

「いやだ」

先生は優しく官能的に首筋にキスしてきた。

「っ!!  先生!!」

首についた痣を舌でペロリペロリと舐めていく。そして吸い付くようにキスをした。

「んっ……やめ……てっ」

「……あの子は、首筋を愛撫するとめちゃくちゃ喜んだけどなー……」
先生は独り言のように、小さく呟く。

「先生っ!!  あっ、んンっ」

Tシャツの裾から手を入れられ、さわさわとわき腹から乳首あたりを触られた。くすぐったいやら、気持ちいいやらで思考がとろとろに溶けそうだ。

甘美な誘惑は俺の脳を狂わせていく。

寮の先輩と、冗談半分でやった行為よりもはるかに気持ちが良く、俺の股間はピクピクと反応しとろりと透明な液を出した。わずかに先生の身体と擦れ、それがますます刺激となってさらに硬く、反り立っていった。

━━━ああ、先生の狙いはこれか……


この行為をやめさせようと、俺は快楽を必死にこらえて声を放った。


「せんっせ……!!  あの!!  …………薬、盗もうとしてますよね」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

[R18]難攻不落!エロトラップダンジョン!

空き缶太郎
BL
(※R18) 代々ダンジョン作りを得意とする魔族の家系に生まれた主人公。 ダンジョン作りの才能にも恵まれ、当代一のダンジョンメーカーへと成長する……はずだった。 これは普通のダンジョンに飽きた魔族の青年が、唯一無二の渾身作として作った『エロトラップダンジョン』の物語である。 短編連作、頭を空っぽにして読めるBL(?)です。 2021/06/05 表紙絵をはちのす様に描いていただきました!

処理中です...