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花束の贈り主

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 1ヶ月前くらいだっただろうか。噂を聞いた私は、すぐにユージーンに苦言を呈したのだ。

「ユージーン、政略結婚で私のことを愛する気持ちがないのは理解しています。お互い様ですから。それでもいずれ結婚して夫婦となるのですから、関係を良好に保つ努力をしていただけませんか?」

 それに対するユージーンの反応に、私はため息をつかずにはいられなかった。

「何のことだ? ああ、ハンナのことか。ハンナは、いずれ別の女と結婚しなければならない僕の立場を理解してなお寄り添ってくれている心優しい子だ。彼女のことを悪くいうのは俺が許さない。そうだ、お前も恋人を作るといい。許可してやるぞ」

「そうです。ハンナさんのことです。そのハンナさんとのお付き合いを控えてほしいと婚約者である私からお願いしているのですが、聞き届けてはいただけないのですか? 度が過ぎるようならあなたのご両親にお伝えしなければなりませんよ」

 ユージーンは私を鋭い目でにらみつけた。

「ハンナと強引に引き離そうとしても、そうはいかないぞ。お前も俺のことが好きで嫉妬でもしているのかもしれないが、諦めろ」

 にやりと傲慢に笑う彼に、私はもう何も言う気になれなかった。
 いずれはこのユージーンと結婚して夫婦になるのだという不幸な事実に打ちのめされた。

 だが、彼は誕生日に花を贈ってくれるのだから、歩み寄ることはできるはずだ。
 そう思いつつも、友人が婚約者とのほほえましいエピソードを披露するたびに内心うらやましくてしかたがなかった。



「おい、聞いてるのか、キイラ」

 そんなことを考えていた私は、ユージーンに名前を呼ばれてはっと意識をユージーンに戻した。

「何でしょうか」

 ユージーンに問い返すと、剣呑な表情で詰め寄られて足がすくんだ。
 何が起こっているんだと周囲を取り囲んでいる人の中には知り合いもいるが、助け舟を出す気はなさそうだ。

「キイラ、お前との婚約は破棄させてもらう」

 何ですって?

「り、理由をお聞かせいただけますか?」

 ユージーンは隣に立つハンナさんの肩を抱き寄せた。

「お前、ハンナを階段から突き落としたらしいな」

「はい?」

 いきなり身に覚えのないことを言われてぽかんとした。
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