3 / 16
婚約解消と運命の女神
2
しおりを挟む
「お顔をお上げください!」
私は慌てた。優しいユーリのことだ、悩んだ末の結論だったのだろう。私との婚約を解消して南の国の王女が嫁いでくることで国民が幸せになるのなら、その方がいい。
「謝って済む問題ではないし、公爵にはまた怒られてしまうかもしれないが、賠償金も払わせてくれ。金の問題ではないが、多くあって困るものでもないだろう」
ユーリの誠意が伝わってくる。
「お心遣いありがとうございます。ありがたく受け取らせていただきます」
「これっぽっちもありがたくない! その程度は当たり前だ。いくら言葉や金をもらってもだ、ヘレネは誰に嫁げばいいんだ。もう碌な相手は残っていないんだぞ。離婚歴のある男か? 低位貴族か? 金とヘレネの美貌が目的の野郎か? ふざけるな!」
お父様の怒りは収まらない。
「落ち着いてください、お父様」
「逆におまえはなぜ落ち着いていられるんだ。おまえの人生がかかっているんだぞ」
私はため息をついた。この場に国王陛下がいるということは、これは決定事項なのでしょう。決まったことに文句を言っても疲れるだけ。黙って受け入れた方が楽だわ。
国王陛下がおもむろに口を開いた。
「公爵の言うとおりだ。こちらとしても、王家の事情で婚約を解消する以上代わりの相手を紹介するべきだと考えた」
国王陛下はユーリに視線を送り、ユーリが言葉をつないだ。
「実は今日王宮に呼んでいる。もし会って結婚しても良いと思えば、王家として祝福しよう。もちろん、相手として相応しくないと思ったら断ってもらって構わない。相手にもそのように許可は取ってある。希望するのであれば今すぐこの部屋に呼ぶが」
私たちは親子揃って目を見開いた。まさか、次の結婚候補が既に用意されているとは。
私はお父様をちらりと見た。お父様は渋い顔をして頷いた。
「ぜひ、お会いしたいです」
国王陛下が合図をすると、大広間の扉が開き、新たな結婚候補の男性が姿を現した。
その男性を見て、私は目を見開いた。彼は。
「紹介するよ。北の帝国の第3皇子のレオン殿だ。ヘレネは彼とは知り合いだよね」
ぽかんと口を開けた私は、ユーリの言葉に反応することもなく、レオン様を見つめた。彼が。どうして。
レオン様は私に歩み寄り、笑顔を見せた。冷たく見える知的な瞳が緩む。
「やあ、久しぶりだな」
その声を聞いた瞬間、さまざまな思いが頭を駆け巡った。
私は慌てた。優しいユーリのことだ、悩んだ末の結論だったのだろう。私との婚約を解消して南の国の王女が嫁いでくることで国民が幸せになるのなら、その方がいい。
「謝って済む問題ではないし、公爵にはまた怒られてしまうかもしれないが、賠償金も払わせてくれ。金の問題ではないが、多くあって困るものでもないだろう」
ユーリの誠意が伝わってくる。
「お心遣いありがとうございます。ありがたく受け取らせていただきます」
「これっぽっちもありがたくない! その程度は当たり前だ。いくら言葉や金をもらってもだ、ヘレネは誰に嫁げばいいんだ。もう碌な相手は残っていないんだぞ。離婚歴のある男か? 低位貴族か? 金とヘレネの美貌が目的の野郎か? ふざけるな!」
お父様の怒りは収まらない。
「落ち着いてください、お父様」
「逆におまえはなぜ落ち着いていられるんだ。おまえの人生がかかっているんだぞ」
私はため息をついた。この場に国王陛下がいるということは、これは決定事項なのでしょう。決まったことに文句を言っても疲れるだけ。黙って受け入れた方が楽だわ。
国王陛下がおもむろに口を開いた。
「公爵の言うとおりだ。こちらとしても、王家の事情で婚約を解消する以上代わりの相手を紹介するべきだと考えた」
国王陛下はユーリに視線を送り、ユーリが言葉をつないだ。
「実は今日王宮に呼んでいる。もし会って結婚しても良いと思えば、王家として祝福しよう。もちろん、相手として相応しくないと思ったら断ってもらって構わない。相手にもそのように許可は取ってある。希望するのであれば今すぐこの部屋に呼ぶが」
私たちは親子揃って目を見開いた。まさか、次の結婚候補が既に用意されているとは。
私はお父様をちらりと見た。お父様は渋い顔をして頷いた。
「ぜひ、お会いしたいです」
国王陛下が合図をすると、大広間の扉が開き、新たな結婚候補の男性が姿を現した。
その男性を見て、私は目を見開いた。彼は。
「紹介するよ。北の帝国の第3皇子のレオン殿だ。ヘレネは彼とは知り合いだよね」
ぽかんと口を開けた私は、ユーリの言葉に反応することもなく、レオン様を見つめた。彼が。どうして。
レオン様は私に歩み寄り、笑顔を見せた。冷たく見える知的な瞳が緩む。
「やあ、久しぶりだな」
その声を聞いた瞬間、さまざまな思いが頭を駆け巡った。
12
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
百合姫の恋煩い
Hk
恋愛
百合姫リリアは幼なじみである氷の騎士ロバートに初恋を拗らせていた。
公の場での接点はないが、ひょんなことから、姿と名前を変えた状態でロバートと交流を持つようになる。
リリアの初恋の話。
※視点移動しながら進みます。
※他サイトでも掲載しています。
※表紙はかんたん表紙メーカー様を使用しています。
時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。)
私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。
レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。
一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。
話が弾み、つい地がでそうになるが…。
そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。
朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。
そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。
レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。
第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞
浮気をした王太子が、真実を見つけた後の十日間
田尾風香
恋愛
婚姻式の当日に出会った侍女を、俺は側に置いていた。浮気と言われても仕方がない。ズレてしまった何かを、どう戻していいかが分からない。声には出せず「助けてくれ」と願う日々。
そんな中、風邪を引いたことがきっかけで、俺は自分が掴むべき手を見つけた。その掴むべき手……王太子妃であり妻であるマルティエナに、謝罪をした俺に許す条件として突きつけられたのは「十日間、マルティエナの好きなものを贈ること」だった。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる