初恋と想い出と勘違い

瀬野凜花

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75 告白1

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 私たち2人の視線が日記帳に集まる。

 あ、待って、そのページ、まさか。

 私が理解して拾い上げるより先に、ルーの手が日記帳をかっさらった。

「これ……」

 あああああ、本人に読まれた!

「フィーも、僕のこと」

 それ以上口にされたくなくて、両手でルーの口を覆った。
 みるみるほおが熱くなる。全身から火が出そう。

 そのページには、学園に入学してからのルーへの気持ちが綴られていた。書いた時は気持ちを整理したくて思いのままに書いたのだが、冷静になって読み返すと恥ずかしくて、でも破り取るのは気が引けて、残されていたのだ。

 ルーは笑いながら私の手を口から外した。されるがままに大人しく手を離す。
 ルーは、私の右手をすくいあげるように取った。ペリドットの瞳がとろりと甘い。

「ソフィア。好きだ。ずっと君のことを探していた」

 突然愛称ではなく「ソフィア」と呼ばれて心臓がはねた。

「私も。ルイスのことが好き」

 ルーの真似をして「ルイス」と呼ぶと、ルーは顔を赤くして左手の甲で口を覆った。仕返しは成功したようだ。
 耳まで赤い。かわいい。

「早いって思われるかもしれないけれど……」

 真っ赤な顔のままのルーと目が合う。

「僕の恋人になってくれませんか」

 私は目を見開いた。急展開に頭が追いつかない。
 それでも。
 私はルーにふわりとほほえみかけた。

「私でよければ。よろしくお願いします」

 ルーの瞳が安堵と喜びにとろけた。

 2人で幸せをかみしめる。
 ソファに並んで腰かけて、会えなかった数年を埋めるかのように、思いつく限りたくさんのことを話した。

 学園入学前のこと。髪の色が変わったこと。本当のことを打ち明けようと手紙を出したこと。エレナと友だちになったこと。学園に入学してからルーを改めて好きになったこと。

 ずっと学園入学を楽しみにしていたこと。手紙は届かなかったこと。アレン様と友だちになったこと。フィオナのこと。私のことを改めて好きになってくれたこと。

 話しているうちに、だんだんと心地よくなってくる。
 今はただ、この幸せを感じていたい。

 私はゆっくりと目を閉じた。
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