初恋と想い出と勘違い

瀬野凜花

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72 覚悟2

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「少し待っていてください」

 ドアを閉めたエレナが、「どうする?」と聞いてくれる。
 どうしよう。一度帰ってもらおうか。こんな精神状態でまともに話を聞くことができるだろうか。わたしにとっては良くない話でも受け止めることができるだろうか。

 少しの間逡巡して覚悟を決めた。あまり良いお話ではない気がするけれど、嫌なことは一気に終わった方がましかもしれないわ。

「話すわ」

 エレナが心配そうに私の手を取る。
 
「本当に、大丈夫? 2人で話さなくても良いのではないかしら。私も一緒にいられるようにルイス様にお願いしてみるわ」

「いいえ。ありがとう。大丈夫よ」

 エレナの心配そうな瞳を見つめる。

「本当に?」

「うーん、大丈夫、とは言い切れないけれど。もし大丈夫じゃなかったら、後でたくさんなぐさめてね」

「もちろんよ」

 大きく頷いたエレナは、私が深呼吸し終わるのを待ってドアを開けた。

 ドアがゆっくりと開かれる。

 入ってきたルイス様はいつもはきれいに整えてある髪が乱れていて、少し息も上がっていた。
 そんなに慌てて話したいことって何なのかしら。

「ソフィアを傷つけたら承知しないから」

 そう言い捨てたエレナはドアを閉めて2人にしてくれた。

「話したいこととは、何でしょうか」

 怖い。話を聞きたくない。だめ。聞かなきゃ。聞いて、エレナになぐさめてもらうのよ。頑張ったねって。
 ルイス様の顔が見られなくて目を伏せた。

 ルイス様が深く息を吸う気配を感じる。緊張しているのだろうか。

 私は目をぎゅっと閉じて覚悟を決めた。

 ルイス様が話し出すのをじっと待つ。

「僕は昔、友だちがいなかったんだ」

 私ははっとして顔をあげた。ルイス様と目が合う。あの頃の話を、するのだろうか。どうして、私に。フィオナじゃなくて。そうだ、フィオナはどうしたのだろう。
 それに、「僕」って。「私」ではなくて。

 ルイス様の話は続く。

「毎日毎日、僕の身分にしか興味がない貴族たちに囲まれていて嫌気がさしていた。そんなある日、出会ったんだ。森の妖精のような女の子に」
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