72 / 96
72 覚悟2
しおりを挟む
「少し待っていてください」
ドアを閉めたエレナが、「どうする?」と聞いてくれる。
どうしよう。一度帰ってもらおうか。こんな精神状態でまともに話を聞くことができるだろうか。わたしにとっては良くない話でも受け止めることができるだろうか。
少しの間逡巡して覚悟を決めた。あまり良いお話ではない気がするけれど、嫌なことは一気に終わった方がましかもしれないわ。
「話すわ」
エレナが心配そうに私の手を取る。
「本当に、大丈夫? 2人で話さなくても良いのではないかしら。私も一緒にいられるようにルイス様にお願いしてみるわ」
「いいえ。ありがとう。大丈夫よ」
エレナの心配そうな瞳を見つめる。
「本当に?」
「うーん、大丈夫、とは言い切れないけれど。もし大丈夫じゃなかったら、後でたくさんなぐさめてね」
「もちろんよ」
大きく頷いたエレナは、私が深呼吸し終わるのを待ってドアを開けた。
ドアがゆっくりと開かれる。
入ってきたルイス様はいつもはきれいに整えてある髪が乱れていて、少し息も上がっていた。
そんなに慌てて話したいことって何なのかしら。
「ソフィアを傷つけたら承知しないから」
そう言い捨てたエレナはドアを閉めて2人にしてくれた。
「話したいこととは、何でしょうか」
怖い。話を聞きたくない。だめ。聞かなきゃ。聞いて、エレナになぐさめてもらうのよ。頑張ったねって。
ルイス様の顔が見られなくて目を伏せた。
ルイス様が深く息を吸う気配を感じる。緊張しているのだろうか。
私は目をぎゅっと閉じて覚悟を決めた。
ルイス様が話し出すのをじっと待つ。
「僕は昔、友だちがいなかったんだ」
私ははっとして顔をあげた。ルイス様と目が合う。あの頃の話を、するのだろうか。どうして、私に。フィオナじゃなくて。そうだ、フィオナはどうしたのだろう。
それに、「僕」って。「私」ではなくて。
ルイス様の話は続く。
「毎日毎日、僕の身分にしか興味がない貴族たちに囲まれていて嫌気がさしていた。そんなある日、出会ったんだ。森の妖精のような女の子に」
ドアを閉めたエレナが、「どうする?」と聞いてくれる。
どうしよう。一度帰ってもらおうか。こんな精神状態でまともに話を聞くことができるだろうか。わたしにとっては良くない話でも受け止めることができるだろうか。
少しの間逡巡して覚悟を決めた。あまり良いお話ではない気がするけれど、嫌なことは一気に終わった方がましかもしれないわ。
「話すわ」
エレナが心配そうに私の手を取る。
「本当に、大丈夫? 2人で話さなくても良いのではないかしら。私も一緒にいられるようにルイス様にお願いしてみるわ」
「いいえ。ありがとう。大丈夫よ」
エレナの心配そうな瞳を見つめる。
「本当に?」
「うーん、大丈夫、とは言い切れないけれど。もし大丈夫じゃなかったら、後でたくさんなぐさめてね」
「もちろんよ」
大きく頷いたエレナは、私が深呼吸し終わるのを待ってドアを開けた。
ドアがゆっくりと開かれる。
入ってきたルイス様はいつもはきれいに整えてある髪が乱れていて、少し息も上がっていた。
そんなに慌てて話したいことって何なのかしら。
「ソフィアを傷つけたら承知しないから」
そう言い捨てたエレナはドアを閉めて2人にしてくれた。
「話したいこととは、何でしょうか」
怖い。話を聞きたくない。だめ。聞かなきゃ。聞いて、エレナになぐさめてもらうのよ。頑張ったねって。
ルイス様の顔が見られなくて目を伏せた。
ルイス様が深く息を吸う気配を感じる。緊張しているのだろうか。
私は目をぎゅっと閉じて覚悟を決めた。
ルイス様が話し出すのをじっと待つ。
「僕は昔、友だちがいなかったんだ」
私ははっとして顔をあげた。ルイス様と目が合う。あの頃の話を、するのだろうか。どうして、私に。フィオナじゃなくて。そうだ、フィオナはどうしたのだろう。
それに、「僕」って。「私」ではなくて。
ルイス様の話は続く。
「毎日毎日、僕の身分にしか興味がない貴族たちに囲まれていて嫌気がさしていた。そんなある日、出会ったんだ。森の妖精のような女の子に」
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる