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48 シチューを作ろう1
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グループ分けが無事に終わり、先生の誘導で私たちが向かったのはキッチンではなく、畑だった。
「どうして私が畑なんかに来ないといけないのよ。部屋に帰ろうかしら」
ぶつぶつと文句が聞こえてきて、私はこの合宿の内容に料理が含まれている理由を何となく理解した。令嬢は料理をしないのが普通であっても、料理がどのようにして出来上がって食卓に並んでいるかを理解しなくても良いということではないのだ。私は家族や使用人の皆に恵まれていたわね。
さすがに貴族たちに収穫を手伝えというわけではないらしく、私たちはシチューの材料にするにんじんと玉ねぎとカブの収穫の様子を見学した。
畑にはたくさんの植物が植えられていた。どこを見てもオレンジ色のにんじんも、丸っこい玉ねぎやカブもない。
そういえば、野菜の中には土の中に埋まっているものがあるのだったわね。
料理をしながら聞いた話を思い出して納得する。私が野菜を見るときには既にきれいに洗われて葉の部分は切り落とされているので、こうして土に埋まっている姿を見るのは初めてなのだ。
私からしてみれば周囲の葉と同じに見える葉も、くいっと引っ張られて土の中に埋まっていた部分が姿を見せると、そこにはオレンジ色のかたまりがぶら下がっている。
本当に土の中に埋まっているのだと、言葉だけで知っていた事実を私自身の目で確認することができて感動する。
ひと通り収穫作業を見学して満足して顔を上げると、見学する私の横に立っていたエレナがぼうっとして暇そうにしているのに気がついた。
「ごめんなさい、エレナ。しっかり見学ができたわ。待たせてしまったわね」
声をかけると、はっと意識をこちらに向けたエレナはにこっと笑った。
「いいのよ、熱心に見学していたわね。私は領地で見学したことがあったから特に目新しいことはなかったのだけれど、初めて見た時は新鮮よね」
「そうなの。野菜って本当に土に埋まっているのね!」
「どうして茶色い土の中から鮮やかなオレンジ色のにんじんが出てくるのか、不思議よね」
エレナの言葉に強く頷いた。本当にその通り。不思議。
周囲を見渡すと、それぞれが自由に見学をしている様子が見えた。ルイス様はアレン様と一緒に、シチューとは関係ない野菜も見学している。土の様子も触って確認しているようだ。畑に興味のない人たちは、会話に花を咲かせたり、勉強熱心なルイス様を見て感心したりしている。フィオナは少し離れたところに植えられていた白い花を眺めて楽しんでいるようだ。
その後再集合した私たちは、牛を遠くから見学した。のんびりと草をはんでいる。今日シチューに入れる牛肉の牛は、元々はあの牛たちと一緒に飼育されていたのだと説明があった。生きていた牛のお肉をいつも食べているのだと改めて認識した。おいしそうにのんびりと草を食べている様子を見ていると、心が痛む。
何人か倒れた令嬢もいたらしい。無理もないわ。私も倒れてしまうかと思ったもの。
「どうして私が畑なんかに来ないといけないのよ。部屋に帰ろうかしら」
ぶつぶつと文句が聞こえてきて、私はこの合宿の内容に料理が含まれている理由を何となく理解した。令嬢は料理をしないのが普通であっても、料理がどのようにして出来上がって食卓に並んでいるかを理解しなくても良いということではないのだ。私は家族や使用人の皆に恵まれていたわね。
さすがに貴族たちに収穫を手伝えというわけではないらしく、私たちはシチューの材料にするにんじんと玉ねぎとカブの収穫の様子を見学した。
畑にはたくさんの植物が植えられていた。どこを見てもオレンジ色のにんじんも、丸っこい玉ねぎやカブもない。
そういえば、野菜の中には土の中に埋まっているものがあるのだったわね。
料理をしながら聞いた話を思い出して納得する。私が野菜を見るときには既にきれいに洗われて葉の部分は切り落とされているので、こうして土に埋まっている姿を見るのは初めてなのだ。
私からしてみれば周囲の葉と同じに見える葉も、くいっと引っ張られて土の中に埋まっていた部分が姿を見せると、そこにはオレンジ色のかたまりがぶら下がっている。
本当に土の中に埋まっているのだと、言葉だけで知っていた事実を私自身の目で確認することができて感動する。
ひと通り収穫作業を見学して満足して顔を上げると、見学する私の横に立っていたエレナがぼうっとして暇そうにしているのに気がついた。
「ごめんなさい、エレナ。しっかり見学ができたわ。待たせてしまったわね」
声をかけると、はっと意識をこちらに向けたエレナはにこっと笑った。
「いいのよ、熱心に見学していたわね。私は領地で見学したことがあったから特に目新しいことはなかったのだけれど、初めて見た時は新鮮よね」
「そうなの。野菜って本当に土に埋まっているのね!」
「どうして茶色い土の中から鮮やかなオレンジ色のにんじんが出てくるのか、不思議よね」
エレナの言葉に強く頷いた。本当にその通り。不思議。
周囲を見渡すと、それぞれが自由に見学をしている様子が見えた。ルイス様はアレン様と一緒に、シチューとは関係ない野菜も見学している。土の様子も触って確認しているようだ。畑に興味のない人たちは、会話に花を咲かせたり、勉強熱心なルイス様を見て感心したりしている。フィオナは少し離れたところに植えられていた白い花を眺めて楽しんでいるようだ。
その後再集合した私たちは、牛を遠くから見学した。のんびりと草をはんでいる。今日シチューに入れる牛肉の牛は、元々はあの牛たちと一緒に飼育されていたのだと説明があった。生きていた牛のお肉をいつも食べているのだと改めて認識した。おいしそうにのんびりと草を食べている様子を見ていると、心が痛む。
何人か倒れた令嬢もいたらしい。無理もないわ。私も倒れてしまうかと思ったもの。
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