23 / 96
23 雨の日に ルイスside1
しおりを挟む
それから、僕の授業がない週に一度、僕たちは会って一緒に時を過ごした。フィーと初めて会った時に彼女が見上げていたつぼみは、やがて満開になって散っていった。舞い散る花びらに囲まれてはしゃぐフィーは、森の妖精ではなく今度は花の妖精のように見えた。
何回も会っているうちに、僕はフィーのことが好きなのだと、初めて会ったあの日に恋に落ちたのだと自覚した。
そんな僕の気持ちはジェームズにはお見通しだったようだ。
「僕はフィーに会えると嬉しくなって、フィーの笑顔を見るともっと笑顔が見たい、いつも笑っていてほしいと思うんだ。こんな気持ちは初めてだ。これが恋というものなのだろうか」
僕が悩んだ末にジェームズに打ち明けると、ジェームズはくすりと笑った。
「ルイス様はフィー様にお会いになっている時が一番生き生きとしていらっしゃいます。ルイス様のお考えになっている通りかと」
ジェームズに客観的に僕がどう見えていたのかを聞かされて、僕は赤面してジェームズから逃げた。
雨の日はフィーと会う約束はキャンセルだ。フィーと話し合って決めたことだったが、雨が降ると僕はふてくされて一日中ベッドの上でごろごろして過ごした。フィーも僕と会えなくて寂しいと思ってくれているだろうか。
雨の音を聞きながら、フィーのことばかり考えた。
フィーが僕の立場を目当てに友だちになったのではないかという疑念はもう浮かばなくなっていた。何度も会っているが、彼女からそのような気配を感じたことはなかった。
フィーは僕のことを純粋に友だちだと思ってくれている。僕もフィーに対して確かに友情も感じている。しかし、僕の気持ちはそれだけではない。
フィーが僕のことを好きになってくれたら。フィーと両想いになれたら。そんなことが思い浮かぶたびに、その考えを必死に投げ捨てる。
考えてはいけない。期待してはいけない。僕は公爵家の後継者だ。いずれ公爵家にふさわしい女性を妻として公爵家を継ぐ。貴族ではない女性と結婚することはできない。貴族であったとしても子爵令嬢や男爵令嬢であれば、その人脈や領地の特産品など、なんらかのメリットがなければ選ぶことはできない。
愛する人と結婚すれば、僕は幸せかもしれない。でも公爵夫人にふさわしい身分を持たない女性と結婚すれば、苦労するのは愛する人や、家族や、使用人たちや、公爵領の領民たちだ。領民たちの生活を守るのが、僕たち貴族の義務だ。
何回も会っているうちに、僕はフィーのことが好きなのだと、初めて会ったあの日に恋に落ちたのだと自覚した。
そんな僕の気持ちはジェームズにはお見通しだったようだ。
「僕はフィーに会えると嬉しくなって、フィーの笑顔を見るともっと笑顔が見たい、いつも笑っていてほしいと思うんだ。こんな気持ちは初めてだ。これが恋というものなのだろうか」
僕が悩んだ末にジェームズに打ち明けると、ジェームズはくすりと笑った。
「ルイス様はフィー様にお会いになっている時が一番生き生きとしていらっしゃいます。ルイス様のお考えになっている通りかと」
ジェームズに客観的に僕がどう見えていたのかを聞かされて、僕は赤面してジェームズから逃げた。
雨の日はフィーと会う約束はキャンセルだ。フィーと話し合って決めたことだったが、雨が降ると僕はふてくされて一日中ベッドの上でごろごろして過ごした。フィーも僕と会えなくて寂しいと思ってくれているだろうか。
雨の音を聞きながら、フィーのことばかり考えた。
フィーが僕の立場を目当てに友だちになったのではないかという疑念はもう浮かばなくなっていた。何度も会っているが、彼女からそのような気配を感じたことはなかった。
フィーは僕のことを純粋に友だちだと思ってくれている。僕もフィーに対して確かに友情も感じている。しかし、僕の気持ちはそれだけではない。
フィーが僕のことを好きになってくれたら。フィーと両想いになれたら。そんなことが思い浮かぶたびに、その考えを必死に投げ捨てる。
考えてはいけない。期待してはいけない。僕は公爵家の後継者だ。いずれ公爵家にふさわしい女性を妻として公爵家を継ぐ。貴族ではない女性と結婚することはできない。貴族であったとしても子爵令嬢や男爵令嬢であれば、その人脈や領地の特産品など、なんらかのメリットがなければ選ぶことはできない。
愛する人と結婚すれば、僕は幸せかもしれない。でも公爵夫人にふさわしい身分を持たない女性と結婚すれば、苦労するのは愛する人や、家族や、使用人たちや、公爵領の領民たちだ。領民たちの生活を守るのが、僕たち貴族の義務だ。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる