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19:危険因子
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落ち着いたジャズの音色に包まれ、ホワイトローズは今日も多くの客の溜り場となっている。
いつものカウンター席では、ネクタイを外したジニーだけがバーテンダーと楽しげに一杯やっていた。
「へぇえ、ウェインの噂の掃除婦を見たのかい、どうだった、かわいかった?」
「ああ、やべぇくらいかわいかった! 野に咲く白花みてぇな子だ」
「あいつが住み込ませるなんざ、その子には絶対なんかあるぞ。いいぞ、いいぞ。その白花ちゃんと結婚しろ! 結局、あいつもかわいい子なら家に入れちゃうただの男だったってことだ。ハッハッハッ」
バーテンダーと一緒にジニーもジントニックをグビッと飲んでゲラゲラと笑った。どんなに間違っても、さすがに結婚なんてバカなことにはならないだろうが、なんだか面白いことになってきた。
二人の大笑いを聞きつけて、その辺にいたワイシャツ姿の男性客二人もジニーの周りに寄ってくる。
「おい、ウェインが女を家に入れるなんてのは、ただごとじゃねぇだろ、その家政婦、大丈夫なのか?」
「おいおい、俺のダチを誰だと思ってんだよ。女嫌いのウェインだぞ。あいつは、女に、しかもあんな子供みてぇな子に手は出さねぇよ」
「いや、ガキったって良い歳の娘なんだろ? ウェインに酒飲ませて婚姻届にサインさせることは可能じゃねぇか」
「いやいや、あの子はそんな子じゃねぇよ。誘拐されたり、夜の繁華街を一人でうろついたり、頭ん中花咲いてて確かに助けてやりたくなるような子なんだ。ウェインには妹がいるからさ、その感覚で面倒みてんだと思うよ」
「そんな感覚、あの冷血漢にあんのかよ」
男達がああだこうだ言いながら、すっきりしない様子でその場から立ち去ると、隣の椅子にカクテルグラスを持ったキャロルがやって来て、ツンとした顔で髪をかきあげた。
「何が、妹感覚よ。ジニーまでまんまと騙されてんじゃないわよ。それはどう考えたって下心よ。下心。ああいう根暗な男ってそういうもんでしょ」
「俺もそう思ったんだけどさ、よく考えたらあいつの過去の女は見た目がみんなフジコ・ミネだったんだよ。知ってるか? フジコ・ミネ。でもあの子は胸が大きくなかった」
「え、そうなの? それは確かにおかしいわね」
「なんだぁ、それじゃぁ本当に見当違いかよ」
キャロルとバーテンダーがそろって納得した。
ジニーも頷いた。
「そうそう、それにあいつはもう女には相当懲りてるだろ。何度か預金全部持ってかれて無一文になってるからな」
「あっははは! 知ってる。あの人酔っ払うと恋人に銀行のキャッシュカードと暗証番号渡しちゃうんでしょ! そのままトンズラされるってすごい話よねぇ」
「あいつがバカと呼ばれる所以だな。ちょろいもんだぜ。家買って正解だろ。家なら持ってかれねぇからな」
バーテンダーが手をポンと叩いた。
「思い出した。キャロルもその金が目的でこいつらと飲みはじめたんじゃなかったっけ。ウェインにギッタギタの木っ端みじんに振られてたの懐かしいな」
「うるさいわね。あの人、私とはお酒飲むんだからそれなりに脈はあるはずなのよね……」
「ねぇよ。お前は酒が入るとやべぇくらい他所の会社の内部情報漏らしてくれるからすげぇ助かるんだよ」
「え、そんな理由だったの!?」
「うん」
ジニーはジントニックをグビッと飲んだ。
「俺の予想では、あいつは無愛想すぎるからお前みてぇな金目当ての女しか寄ってこねぇんだろうな。女不信にもなるはずさ」
「しょうがないじゃない。あの人からお金を取ったら何も残らないわ」
「ひでぇな……。まあ、あいつも自業自得なんだけどさ――そう考えると、白花ちゃんてのはやっぱりダークホースかもしれねぇな……あの子、ウェインに気があるみてぇなんだ」
「「はぁ?」」
キャロルとバーテンダーがジニーを見た。
「あれは明らかに恋をしていた。雰囲気からいっても純愛っぽいんだよな……。なんで良い子ってああいう根暗な奴に惹かれちゃうの? いいよなぁ……俺もあんな子に好かれてみてぇよ……」
「やだ、ちょっとそれ問題ありじゃない。危険因子よ、危険因子! ジニー、なんとかしてよ。その子がウェインを誘惑して電撃デキ婚なんてことになったらどうするのよ!」
「ねぇよ」
ジニーとバーテンダーが噴き出した、その時。
後方のテーブル席からガシャーン! と酒ビンの割れる大きな音が聞こえた。
ケンカでも始まったのかと、同じフロアにいた全員がそちらを振り向いた。
「殺せよぉおおお! なんで殺さなかったんだよぉおおお!!!!」
店の中央、六人がけソファテーブルで、黒髪の男が胸元の開いた黒シャツ姿で仁王立ちし、隣のテーブルを睨み付けている。床がドンペリロゼで水浸しになっている。
ジニーが苦い顔をして小さく呟いた。
「うわぁ……またキースさんだよ……」
キースの横には、美しい人形のような澄まし顔をしたアレックスがおり、二人のボディガードが立って隣のテーブルの下を注視している。そこには、四つんばいで頭を押さえ、うずくまっている中年の男がいた。
背が低く、小汚い作業服を着たその男は、怯えきった様子で甲高い声を発した。
「あ、あんたには関係ねぇじゃねぇかい……」
「あるよぉ、大ありだよぉ。ウェインの家に住み込みの掃除婦だってぇ? そいつは絶対にウェインの女だよ、女ぁ! なんで殺さなかったんだよぉおお!!!!」
男は床に小さくなって返事をする。
「ち、違うよ。ウェインはあの子を見殺しにしようとしたんだ。俺ぁ、あの子に恨みはねぇんだ、殺す必要なんかねぇじゃねぇか」
この男は、そう、誘拐犯レッグだ。彼は事件後、ヘレンが本当に警察に訴えなかったため何のお咎めもなかったことを勲章のように言いふらしていたら、キースに絡まれてしまったのだ。
酔っているのか、それとも素なのか、キースは鼻の上に狂ったようにしわを寄せた。
「お前の見解なんかどうでも良いんだよぉおっ!!!!」
「キース、落ち着いて。ウェインはその子を見殺しにしようとしたんだって」
アレックスに腕を触れられ、キースは鼻息も荒いままソファにドサリと座りこんだ。
「……あーあ……つまんないなぁ。ウェインの女なんて、こんな良い獲物はないのにさ、僕はあいつの顔が悲しみに泣き歪むのを見てみたいんだよ。なんか面白いことないかなぁ…………」
言葉の最後には薄気味悪い笑い声も混じっていた。
それがカウンター席にまで届き、ジニーたちは慌てて前へ向きなおした。
「あー、怖え……ヘレンちゃんに注意しといた方がいいな……」
「ねぇ、バーテンさん、噂で聞いたけど、キースさんもあの賭けに参加してるって本当?」
キャロルが顔を近づけて問うと、バーテンダーも手を口にあてて声のトーンを落とす。
「ああ、本当だよ。一億ガドル。ウェインと同じ額さ」
「一億ガドル!?」
「ああ、しかも『ウェインは結婚する』方に一億だ」
「ええ!?」
ジニーもバーテンダーに顔を近づけた。
「なんでだよ、キースさんはウェインに女ができたら真っ先にぶち壊しに行くタイプだろ」
「そう思うだろ、でもあの時キースさんも酔っ払っててさ、何でもいいからウェインに勝ちたかったんだろうな。あいつとは逆の目に同じ額を賭けちまったのさ」
ジニーは目頭を押さえてうな垂れた。
「つまり、キースさんにとっちゃ一億ガドルも遊ぶ金ってことかぁ……」
「――ってことはよ、あの人、ウェインが女と付き合うのは許せないけど、ウェインが女と結婚しないと賭けに負けちゃうんだわ」
キャロルがスプモーニに口を付けながらワクワク顔で呟いたのでジニーが噴出した。
「そうなるな。この国じゃ同性婚もできねぇしな」
「あははっ。なんだか複雑な人ねぇ」
いつものカウンター席では、ネクタイを外したジニーだけがバーテンダーと楽しげに一杯やっていた。
「へぇえ、ウェインの噂の掃除婦を見たのかい、どうだった、かわいかった?」
「ああ、やべぇくらいかわいかった! 野に咲く白花みてぇな子だ」
「あいつが住み込ませるなんざ、その子には絶対なんかあるぞ。いいぞ、いいぞ。その白花ちゃんと結婚しろ! 結局、あいつもかわいい子なら家に入れちゃうただの男だったってことだ。ハッハッハッ」
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「おい、ウェインが女を家に入れるなんてのは、ただごとじゃねぇだろ、その家政婦、大丈夫なのか?」
「おいおい、俺のダチを誰だと思ってんだよ。女嫌いのウェインだぞ。あいつは、女に、しかもあんな子供みてぇな子に手は出さねぇよ」
「いや、ガキったって良い歳の娘なんだろ? ウェインに酒飲ませて婚姻届にサインさせることは可能じゃねぇか」
「いやいや、あの子はそんな子じゃねぇよ。誘拐されたり、夜の繁華街を一人でうろついたり、頭ん中花咲いてて確かに助けてやりたくなるような子なんだ。ウェインには妹がいるからさ、その感覚で面倒みてんだと思うよ」
「そんな感覚、あの冷血漢にあんのかよ」
男達がああだこうだ言いながら、すっきりしない様子でその場から立ち去ると、隣の椅子にカクテルグラスを持ったキャロルがやって来て、ツンとした顔で髪をかきあげた。
「何が、妹感覚よ。ジニーまでまんまと騙されてんじゃないわよ。それはどう考えたって下心よ。下心。ああいう根暗な男ってそういうもんでしょ」
「俺もそう思ったんだけどさ、よく考えたらあいつの過去の女は見た目がみんなフジコ・ミネだったんだよ。知ってるか? フジコ・ミネ。でもあの子は胸が大きくなかった」
「え、そうなの? それは確かにおかしいわね」
「なんだぁ、それじゃぁ本当に見当違いかよ」
キャロルとバーテンダーがそろって納得した。
ジニーも頷いた。
「そうそう、それにあいつはもう女には相当懲りてるだろ。何度か預金全部持ってかれて無一文になってるからな」
「あっははは! 知ってる。あの人酔っ払うと恋人に銀行のキャッシュカードと暗証番号渡しちゃうんでしょ! そのままトンズラされるってすごい話よねぇ」
「あいつがバカと呼ばれる所以だな。ちょろいもんだぜ。家買って正解だろ。家なら持ってかれねぇからな」
バーテンダーが手をポンと叩いた。
「思い出した。キャロルもその金が目的でこいつらと飲みはじめたんじゃなかったっけ。ウェインにギッタギタの木っ端みじんに振られてたの懐かしいな」
「うるさいわね。あの人、私とはお酒飲むんだからそれなりに脈はあるはずなのよね……」
「ねぇよ。お前は酒が入るとやべぇくらい他所の会社の内部情報漏らしてくれるからすげぇ助かるんだよ」
「え、そんな理由だったの!?」
「うん」
ジニーはジントニックをグビッと飲んだ。
「俺の予想では、あいつは無愛想すぎるからお前みてぇな金目当ての女しか寄ってこねぇんだろうな。女不信にもなるはずさ」
「しょうがないじゃない。あの人からお金を取ったら何も残らないわ」
「ひでぇな……。まあ、あいつも自業自得なんだけどさ――そう考えると、白花ちゃんてのはやっぱりダークホースかもしれねぇな……あの子、ウェインに気があるみてぇなんだ」
「「はぁ?」」
キャロルとバーテンダーがジニーを見た。
「あれは明らかに恋をしていた。雰囲気からいっても純愛っぽいんだよな……。なんで良い子ってああいう根暗な奴に惹かれちゃうの? いいよなぁ……俺もあんな子に好かれてみてぇよ……」
「やだ、ちょっとそれ問題ありじゃない。危険因子よ、危険因子! ジニー、なんとかしてよ。その子がウェインを誘惑して電撃デキ婚なんてことになったらどうするのよ!」
「ねぇよ」
ジニーとバーテンダーが噴き出した、その時。
後方のテーブル席からガシャーン! と酒ビンの割れる大きな音が聞こえた。
ケンカでも始まったのかと、同じフロアにいた全員がそちらを振り向いた。
「殺せよぉおおお! なんで殺さなかったんだよぉおおお!!!!」
店の中央、六人がけソファテーブルで、黒髪の男が胸元の開いた黒シャツ姿で仁王立ちし、隣のテーブルを睨み付けている。床がドンペリロゼで水浸しになっている。
ジニーが苦い顔をして小さく呟いた。
「うわぁ……またキースさんだよ……」
キースの横には、美しい人形のような澄まし顔をしたアレックスがおり、二人のボディガードが立って隣のテーブルの下を注視している。そこには、四つんばいで頭を押さえ、うずくまっている中年の男がいた。
背が低く、小汚い作業服を着たその男は、怯えきった様子で甲高い声を発した。
「あ、あんたには関係ねぇじゃねぇかい……」
「あるよぉ、大ありだよぉ。ウェインの家に住み込みの掃除婦だってぇ? そいつは絶対にウェインの女だよ、女ぁ! なんで殺さなかったんだよぉおお!!!!」
男は床に小さくなって返事をする。
「ち、違うよ。ウェインはあの子を見殺しにしようとしたんだ。俺ぁ、あの子に恨みはねぇんだ、殺す必要なんかねぇじゃねぇか」
この男は、そう、誘拐犯レッグだ。彼は事件後、ヘレンが本当に警察に訴えなかったため何のお咎めもなかったことを勲章のように言いふらしていたら、キースに絡まれてしまったのだ。
酔っているのか、それとも素なのか、キースは鼻の上に狂ったようにしわを寄せた。
「お前の見解なんかどうでも良いんだよぉおっ!!!!」
「キース、落ち着いて。ウェインはその子を見殺しにしようとしたんだって」
アレックスに腕を触れられ、キースは鼻息も荒いままソファにドサリと座りこんだ。
「……あーあ……つまんないなぁ。ウェインの女なんて、こんな良い獲物はないのにさ、僕はあいつの顔が悲しみに泣き歪むのを見てみたいんだよ。なんか面白いことないかなぁ…………」
言葉の最後には薄気味悪い笑い声も混じっていた。
それがカウンター席にまで届き、ジニーたちは慌てて前へ向きなおした。
「あー、怖え……ヘレンちゃんに注意しといた方がいいな……」
「ねぇ、バーテンさん、噂で聞いたけど、キースさんもあの賭けに参加してるって本当?」
キャロルが顔を近づけて問うと、バーテンダーも手を口にあてて声のトーンを落とす。
「ああ、本当だよ。一億ガドル。ウェインと同じ額さ」
「一億ガドル!?」
「ああ、しかも『ウェインは結婚する』方に一億だ」
「ええ!?」
ジニーもバーテンダーに顔を近づけた。
「なんでだよ、キースさんはウェインに女ができたら真っ先にぶち壊しに行くタイプだろ」
「そう思うだろ、でもあの時キースさんも酔っ払っててさ、何でもいいからウェインに勝ちたかったんだろうな。あいつとは逆の目に同じ額を賭けちまったのさ」
ジニーは目頭を押さえてうな垂れた。
「つまり、キースさんにとっちゃ一億ガドルも遊ぶ金ってことかぁ……」
「――ってことはよ、あの人、ウェインが女と付き合うのは許せないけど、ウェインが女と結婚しないと賭けに負けちゃうんだわ」
キャロルがスプモーニに口を付けながらワクワク顔で呟いたのでジニーが噴出した。
「そうなるな。この国じゃ同性婚もできねぇしな」
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