上 下
44 / 44

手探り

しおりを挟む
「シアは、その…ゲームの内容は詳しく知らないのかい?」

「ごめんなさい…あまり覚えていないの…多分、まだそんなにやり込んでなかったんじゃないかな…」

「そっか…」

「あ! でも、他のゲームや小説を参考にして、定番のイベントなら…」

「それでいいよ、教えて」

私はお兄様達に思い付くだけの基本イベントを挙げつらねた。

「そうねぇ……『所持品や教材の紛失、破損』『生まれや育ちへの誹謗ひぼう、中傷』『足を引っ掛けて転ばす』『噴水へ突き飛ばす』『空き教室へ閉じ込める』『階段から突き落とす』『破落戸ごろつきに襲わせる』なんかが定番ね」

わずかな沈黙の後、お父様がつぶやいた。

「………それを、貴族令嬢がやるのか…?」

うん。 その気持ちは解る…
身分制度を知らない、現代っ子向けの分かりやすいイジメだものね…

「と言うか、私がヒロインにそういった事をやっちゃう?」

すると、ゲイルが私の額をツンっと押す。

「お前じゃなくて、ゲームの中のフェリシアが、だろ?」

「そうだよ…シアがそんな事する訳無いよ。 そもそも、する必要も無いんだから」

「うん…」

「話を戻すぞ」とゲイルが言って、王子達の事を話し始めた。

「さっきも言ったが、王子達へ流し込む魔力はティーカップ1杯分だ。それ以上になると違和感で気付かれる」

「ゲイル君の見立てでは、どの位の期間が必要かな?」

「魔力が馴染むまでに時間が掛かるから、1日置きにやるとして…3ヶ月だな」

「その間に、魅了を重ね掛けされたらどうする?」

「そうだな…分かり易く言うと、普通の魔力が水なら聖なる銀の魔力は油だ」

「私の魔力が魅了を弾くって事?」

「お前……今のはあくまで例えだからな? 単なる俺のイメージだぞ?」

「わ、わかってるわよ…!?」

そんな、阿保の子を見る様な顔しないで?

お父様もお兄様も、微笑まし気な顔をしないっ!

「とにかく、恐らくだが銀の魔力は魅了の影響を受けないと考えて、改竄かいざんされた記憶を本来の状態に戻す…魅了が解けるかは未知数だがな…」

「記憶が戻れば、殿下達も攻撃的では無くなるだろうしな…」

「アルフォードと僕には、いつ?」

「ジルベール達は今日だ。あいつは後で俺が学園まで迎えに行って来る」

わぁ…何気に隣国の第2王子と会うのは初めてだわね…

魅了は解けているらしいし、お兄様と親しい人なら心配無い…かな?



しおりを挟む
感想 12

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(12件)

赤服の馴鹿
2022.02.07 赤服の馴鹿

記憶改竄、認識改変、守る手段が限定的で実質防御不可能、「魅了」というより「傀儡」といった方がよいほどの極悪性能ですね。糸を無理矢理繋げて、無理矢理動かして壊して、本当にただの人形にしちゃうみたいな
心を操るキューピッドですら好意と嫌悪は別の矢を使うのに
被害者たちが悲しいことにならないことを祈ってます
これで王子たちが非難されるのは「突然やって来た濁流をただの人間の体ひとつで止められなかったのは情けない」と言われてるみたいであんまりにも可哀想です

解除
李杏38
2021.09.30 李杏38

私の勝手なモヤモヤが募って感想を送っていたことに、わざわざご丁寧な返事をありがとうございます。
これまでに様々な作品を読んできましたが、感想を投稿しようとは思わなかった(思っても投稿しなかった)のに我慢できないくらいこの作品には引き込まれているみたいで、とうとう感想投稿してしまったのですが、私の理解不足とかで失礼なこととかはなかったでしょうか?あったのなら申し訳ありませんでした。

完結まで楽しみに応援していますので、くれぐれもお体には気をつけてくださいね。

ねこママ
2021.10.01 ねこママ

初の感想投稿を頂いたという事ですね! ありがとうございます(o^-^o)

失礼などとんでもないです。
引き込まれていると言って頂いてとても嬉しいです。
これからも宜しくお願いします。(*- -)(*_ _)ペコリ

解除
2021.09.15 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

ねこママ
2021.09.16 ねこママ

読んで貰えて嬉しいです♪

王子達の恋心は薄れてはいなかったと思いますが、それだけこの世界の魅了魔法は厄介だと言う事ですね。
フェリシア的に、王子との結婚は嫌だったんですけど、最終的に決定事項で決まってしまったので契約という手段になった訳ですね。
断罪が魅了によるものなのか洗脳なのか、それとも嫌われていたのか理由は定かではなかったけど、それが未来で必ず起こるという前提で交わした契約なので、フェリシアには全く結婚するという意思は無かったと思いますね。

更新が亀さんですが、これからも宜しくお願いします(*^ワ^*)

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

婚約破棄するんだったら、その代わりに復讐してもいいですか?

tartan321
恋愛
ちょっとした腹いせに、復讐しちゃおうかな? 「パミーナ!君との婚約を破棄する!」 あなたに捧げた愛と時間とお金……ああっ、もう許せない!私、あなたに復讐したいです!あなたの秘密、結構知っているんですよ?ばらしたら、国が崩壊しちゃうかな? 隣国に行ったら、そこには新たな婚約者の姫様がいた。さあ、次はどうしようか?

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

【完】婚約破棄ですか? これが普通ですよね

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
王国の夜会で第一王子のフィリップからアマーリエ公爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。よくある婚約破棄の一場面です。ゆるっとふわっと仕様です。 Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完結】ヒロインであれば何をしても許される……わけがないでしょう

凛 伊緒
恋愛
シルディンス王国・王太子の婚約者である侯爵令嬢のセスアは、伯爵令嬢であるルーシアにとある名で呼ばれていた。 『悪役令嬢』……と。 セスアの婚約者である王太子に擦り寄り、次々と無礼を働くルーシア。 セスアはついに我慢出来なくなり、反撃に出る。 しかし予想外の事態が…? ざまぁ&ハッピーエンドです。

その悪役令嬢、問題児につき

ニコ
恋愛
 婚約破棄された悪役令嬢がストッパーが無くなり暴走するお話。 ※結構ぶっ飛んでます。もうご都合主義の塊です。難しく考えたら負け!

メイドの方が可愛くて婚約破棄?

岡暁舟
恋愛
メイドの方が好きなんて、許さない!令嬢は怒った。

悪役令嬢の大きな勘違い

神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。 もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし 封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。 お気に入り、感想お願いします!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。