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これでダメなら…

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「ゲイル…」

俺を見るジルベールの眼はいつもと変わらない。

「………」

ミランダルの王子は…殺気までは無いが、敵意がき出しだな…

「なかなか帰って来ないからフェリシアが心配してるぞ」

「あぁ…今、アルフォードの屋敷に滞在してるんだ」

「そちらの彼が…隣国の第2王子殿下なのか?」

「そうだよ」

「………アルフォード・ミランダルだ」

第2王子が名を言った後、ジルベールが耳打ちしてきた。

《彼、君の正体を知っていたよ…》

それを聞いて納得した。

(そうか…あの国の王族なら、知っていても不思議じゃないな)

「ならば、かしこまる必要は無いな。 ここは目立つ。 場所を変えるぞ」




魔法学院を出てほどなく、魔法事故などが起こった時の為に学院と街を分断している森林区域へ入る。

「この辺りは少しひらけているな…ここで話そう」

確実に誰も来ないと言う保障はないから、俺達の周囲20Mに結界を張りめぐらし外部と遮断しておく。

「っ!? これは…」

「どうした? アルフォード」

「結界が張られた様だ…何をするつもりだ!?」

「ほぉ…よく気付いたな。 余程魔力が高くなければ分からない結界なんだが」

「ゲイル、何故結界を?」

「ジルベール…お前が真面まともな状態で、フェリシアに心配掛けてまでその王子の屋敷に滞在している理由は何だ?」

「それは…」

「そこの王子の様子がおかしいからじゃないのか?」

「っ!? どうして…」

「はぁ…外交問題になるからと、自国の王子より優先したのは流石さすがだよ。 …だが、何故誰にも相談しなかった!?」

「………」

ジルベールは悔しそうに両手を握りしめてうつむく。

「さっきから、随分な言われ様だな…たかが伯爵家の人間風情が何様のつもりだ!」

「!? アルフォード…?」

俺も驚いたが、ジルベールはもっと驚いた様だ。
目を見開き第2王子を凝視している…

「お前…まさかゲイルが誰か…分からないのか?」

「? 何を言っている? 此奴こいつはお前の妹の腰巾着だろう?」

「ははっ!! お前、記憶まで改竄かいざんされたのかよ」

「何だとっ!? 無礼な!!」

「アルフォードっ! ゲイルは…「ジルベール、無駄だ」…っ!?」

「今のこ奴に何を言っても通じない」

俺はフェリシアから流れて来る銀の魔力を凝縮し、右手に集めた。

「本性を現したか! ジルベール、此奴こいつはお前の妹と共謀してアリエルを害しているんだ!」

―――第2王子の魔力が膨れ上がって行く。

(へぇ…フェリシア以外でここまで魔力量が多い人間は初めて見たな)

だが、それでも精々1万前後か…
この魔力量だと魔法には掛かりにくい筈なのだが、魅了とはそれ程に強力なものなのか。

「ゲイルっ! こいつを殺さないでくれ!」

「心配するな、殺しはしない」

(聖なる銀の魔力…これで元に戻ればいいのだが…)

「ハァアアッ!!!」

第2王子の額に向けて、凝縮した銀の魔力をはなった!

「くっ…!!」

第2王子が懸命にふせごうとするが、魔力の質と量が桁外れに違う。

「ぐァああっ!!」

銀の魔力玉は第2王子の額に直撃した!

第2王子の魔力が衝撃で霧散する。

激しい魔力渦が起こり、結界内を破壊して行った。

「ジルベールっ! まだ近付くな!!」

怪我をしない様にジルベールを保護膜でおおう。

第2王子を中心に、魔力渦が徐々におさまって行く。

「ゲイル…彼は大丈夫なのか!?」

「分からん。 これで元に戻らなければ俺に出来る事はもう無い」

「そんな……彼は、毎晩うなされているんだ…自分の中から何かを追い出そうとしていた…」

(ふ…ん、魅了に掛かりながらも抵抗はしていたのか…)

「いつからおかしくなっていたんだ?」

「試験休み前だ…丁度その頃から殿下達の様子も変わって行った」

「何があったんだ? そんな風に成る切っ掛けが在った筈だが」

「恐らく…インジャスタ男爵令嬢と話した事だと思う…あの令嬢は、どこか変なんだ」

「変…?」

「あの話し合いの最中、僕は終始頭痛がして…」

「………指は痛くなかったか…?」

「そう言えば…確かに指が痛かった…頭痛の方が酷くて忘れていたけど」

「そうか…」

(数を増やした事で効力が弱まった所為せいもあるが、やはり指輪では防ぎきれなかったか…)


「う……」

「アルフォード!」

第2王子が目を覚ました様だ。
さて―――元に戻っていればいいが……


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