35 / 44
これでダメなら…
しおりを挟む
「ゲイル…」
俺を見るジルベールの眼はいつもと変わらない。
「………」
ミランダルの王子は…殺気までは無いが、敵意が剥き出しだな…
「なかなか帰って来ないからフェリシアが心配してるぞ」
「あぁ…今、アルフォードの屋敷に滞在してるんだ」
「そちらの彼が…隣国の第2王子殿下なのか?」
「そうだよ」
「………アルフォード・ミランダルだ」
第2王子が名を言った後、ジルベールが耳打ちしてきた。
《彼、君の正体を知っていたよ…》
それを聞いて納得した。
(そうか…あの国の王族なら、知っていても不思議じゃないな)
「ならば、畏まる必要は無いな。 ここは目立つ。 場所を変えるぞ」
魔法学院を出て程なく、魔法事故などが起こった時の為に学院と街を分断している森林区域へ入る。
「この辺りは少し開けているな…ここで話そう」
確実に誰も来ないと言う保障はないから、俺達の周囲20Mに結界を張り巡らし外部と遮断しておく。
「っ!? これは…」
「どうした? アルフォード」
「結界が張られた様だ…何をするつもりだ!?」
「ほぉ…よく気付いたな。 余程魔力が高くなければ分からない結界なんだが」
「ゲイル、何故結界を?」
「ジルベール…お前が真面な状態で、フェリシアに心配掛けてまでその王子の屋敷に滞在している理由は何だ?」
「それは…」
「そこの王子の様子がおかしいからじゃないのか?」
「っ!? どうして…」
「はぁ…外交問題になるからと、自国の王子より優先したのは流石だよ。 …だが、何故誰にも相談しなかった!?」
「………」
ジルベールは悔しそうに両手を握りしめて俯く。
「さっきから、随分な言われ様だな…たかが伯爵家の人間風情が何様のつもりだ!」
「!? アルフォード…?」
俺も驚いたが、ジルベールはもっと驚いた様だ。
目を見開き第2王子を凝視している…
「お前…まさかゲイルが誰か…分からないのか?」
「? 何を言っている? 此奴はお前の妹の腰巾着だろう?」
「ははっ!! お前、記憶まで改竄されたのかよ」
「何だとっ!? 無礼な!!」
「アルフォードっ! ゲイルは…「ジルベール、無駄だ」…っ!?」
「今のこ奴に何を言っても通じない」
俺はフェリシアから流れて来る銀の魔力を凝縮し、右手に集めた。
「本性を現したか! ジルベール、此奴はお前の妹と共謀してアリエルを害しているんだ!」
―――第2王子の魔力が膨れ上がって行く。
(へぇ…フェリシア以外でここまで魔力量が多い人間は初めて見たな)
だが、それでも精々1万前後か…
この魔力量だと魔法には掛かり難い筈なのだが、魅了とはそれ程に強力なものなのか。
「ゲイルっ! こいつを殺さないでくれ!」
「心配するな、殺しはしない」
(聖なる銀の魔力…これで元に戻ればいいのだが…)
「ハァアアッ!!!」
第2王子の額に向けて、凝縮した銀の魔力を放った!
「くっ…!!」
第2王子が懸命に防ごうとするが、魔力の質と量が桁外れに違う。
「ぐァああっ!!」
銀の魔力玉は第2王子の額に直撃した!
第2王子の魔力が衝撃で霧散する。
激しい魔力渦が起こり、結界内を破壊して行った。
「ジルベールっ! まだ近付くな!!」
怪我をしない様にジルベールを保護膜で覆う。
第2王子を中心に、魔力渦が徐々に治まって行く。
「ゲイル…彼は大丈夫なのか!?」
「分からん。 これで元に戻らなければ俺に出来る事はもう無い」
「そんな……彼は、毎晩魘されているんだ…自分の中から何かを追い出そうとしていた…」
(ふ…ん、魅了に掛かりながらも抵抗はしていたのか…)
「いつからおかしくなっていたんだ?」
「試験休み前だ…丁度その頃から殿下達の様子も変わって行った」
「何があったんだ? そんな風に成る切っ掛けが在った筈だが」
「恐らく…インジャスタ男爵令嬢と話した事だと思う…あの令嬢は、どこか変なんだ」
「変…?」
「あの話し合いの最中、僕は終始頭痛がして…」
「………指は痛くなかったか…?」
「そう言えば…確かに指が痛かった…頭痛の方が酷くて忘れていたけど」
「そうか…」
(数を増やした事で効力が弱まった所為もあるが、やはり指輪では防ぎきれなかったか…)
「う……」
「アルフォード!」
第2王子が目を覚ました様だ。
さて―――元に戻っていればいいが……
俺を見るジルベールの眼はいつもと変わらない。
「………」
ミランダルの王子は…殺気までは無いが、敵意が剥き出しだな…
「なかなか帰って来ないからフェリシアが心配してるぞ」
「あぁ…今、アルフォードの屋敷に滞在してるんだ」
「そちらの彼が…隣国の第2王子殿下なのか?」
「そうだよ」
「………アルフォード・ミランダルだ」
第2王子が名を言った後、ジルベールが耳打ちしてきた。
《彼、君の正体を知っていたよ…》
それを聞いて納得した。
(そうか…あの国の王族なら、知っていても不思議じゃないな)
「ならば、畏まる必要は無いな。 ここは目立つ。 場所を変えるぞ」
魔法学院を出て程なく、魔法事故などが起こった時の為に学院と街を分断している森林区域へ入る。
「この辺りは少し開けているな…ここで話そう」
確実に誰も来ないと言う保障はないから、俺達の周囲20Mに結界を張り巡らし外部と遮断しておく。
「っ!? これは…」
「どうした? アルフォード」
「結界が張られた様だ…何をするつもりだ!?」
「ほぉ…よく気付いたな。 余程魔力が高くなければ分からない結界なんだが」
「ゲイル、何故結界を?」
「ジルベール…お前が真面な状態で、フェリシアに心配掛けてまでその王子の屋敷に滞在している理由は何だ?」
「それは…」
「そこの王子の様子がおかしいからじゃないのか?」
「っ!? どうして…」
「はぁ…外交問題になるからと、自国の王子より優先したのは流石だよ。 …だが、何故誰にも相談しなかった!?」
「………」
ジルベールは悔しそうに両手を握りしめて俯く。
「さっきから、随分な言われ様だな…たかが伯爵家の人間風情が何様のつもりだ!」
「!? アルフォード…?」
俺も驚いたが、ジルベールはもっと驚いた様だ。
目を見開き第2王子を凝視している…
「お前…まさかゲイルが誰か…分からないのか?」
「? 何を言っている? 此奴はお前の妹の腰巾着だろう?」
「ははっ!! お前、記憶まで改竄されたのかよ」
「何だとっ!? 無礼な!!」
「アルフォードっ! ゲイルは…「ジルベール、無駄だ」…っ!?」
「今のこ奴に何を言っても通じない」
俺はフェリシアから流れて来る銀の魔力を凝縮し、右手に集めた。
「本性を現したか! ジルベール、此奴はお前の妹と共謀してアリエルを害しているんだ!」
―――第2王子の魔力が膨れ上がって行く。
(へぇ…フェリシア以外でここまで魔力量が多い人間は初めて見たな)
だが、それでも精々1万前後か…
この魔力量だと魔法には掛かり難い筈なのだが、魅了とはそれ程に強力なものなのか。
「ゲイルっ! こいつを殺さないでくれ!」
「心配するな、殺しはしない」
(聖なる銀の魔力…これで元に戻ればいいのだが…)
「ハァアアッ!!!」
第2王子の額に向けて、凝縮した銀の魔力を放った!
「くっ…!!」
第2王子が懸命に防ごうとするが、魔力の質と量が桁外れに違う。
「ぐァああっ!!」
銀の魔力玉は第2王子の額に直撃した!
第2王子の魔力が衝撃で霧散する。
激しい魔力渦が起こり、結界内を破壊して行った。
「ジルベールっ! まだ近付くな!!」
怪我をしない様にジルベールを保護膜で覆う。
第2王子を中心に、魔力渦が徐々に治まって行く。
「ゲイル…彼は大丈夫なのか!?」
「分からん。 これで元に戻らなければ俺に出来る事はもう無い」
「そんな……彼は、毎晩魘されているんだ…自分の中から何かを追い出そうとしていた…」
(ふ…ん、魅了に掛かりながらも抵抗はしていたのか…)
「いつからおかしくなっていたんだ?」
「試験休み前だ…丁度その頃から殿下達の様子も変わって行った」
「何があったんだ? そんな風に成る切っ掛けが在った筈だが」
「恐らく…インジャスタ男爵令嬢と話した事だと思う…あの令嬢は、どこか変なんだ」
「変…?」
「あの話し合いの最中、僕は終始頭痛がして…」
「………指は痛くなかったか…?」
「そう言えば…確かに指が痛かった…頭痛の方が酷くて忘れていたけど」
「そうか…」
(数を増やした事で効力が弱まった所為もあるが、やはり指輪では防ぎきれなかったか…)
「う……」
「アルフォード!」
第2王子が目を覚ました様だ。
さて―――元に戻っていればいいが……
0
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説
[完結]貴方なんか、要りません
シマ
恋愛
私、ロゼッタ・チャールストン15歳には婚約者がいる。
バカで女にだらしなくて、ギャンブル好きのクズだ。公爵家当主に土下座する勢いで頼まれた婚約だったから断われなかった。
だから、条件を付けて学園を卒業するまでに、全てクリアする事を約束した筈なのに……
一つもクリア出来ない貴方なんか要りません。絶対に婚約破棄します。
ヒロインでも悪役でもない…モブ?…でもなかった
callas
恋愛
お互いが転生者のヒロインと悪役令嬢。ヒロインは悪役令嬢をざまぁしようと、悪役令嬢はヒロインを返り討ちにしようとした最終決戦の卒業パーティー。しかし、彼女は全てを持っていった…
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
【完】婚約破棄ですか? これが普通ですよね
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
王国の夜会で第一王子のフィリップからアマーリエ公爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。よくある婚約破棄の一場面です。ゆるっとふわっと仕様です。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】ヒロインであれば何をしても許される……わけがないでしょう
凛 伊緒
恋愛
シルディンス王国・王太子の婚約者である侯爵令嬢のセスアは、伯爵令嬢であるルーシアにとある名で呼ばれていた。
『悪役令嬢』……と。
セスアの婚約者である王太子に擦り寄り、次々と無礼を働くルーシア。
セスアはついに我慢出来なくなり、反撃に出る。
しかし予想外の事態が…?
ざまぁ&ハッピーエンドです。
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる