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スザンヌ・ドランダム

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別棟へ辿たどり着いた私は、ヴェルド殿下がおっしゃった図書室へ来ました。

中に入ると共用スペースに、6人掛けのテーブルと椅子が並んでいます。
奥を見ると、明らかに高位貴族用と判るテーブルとソファが在る様です。

私も、婚約者であるトリスタンも、公爵家の人間ですので迷わずそちらへ向かったのですが…


「やだ~、トリスタン様ったら~ぁ」


(何ですの? この品の無い口調は…)


「何をしているのですか!?」

問い掛けた私に彼が振り返り…眉間に皺を寄せて私を睨みました…

(彼が私を睨むなんて…)

そして、不機嫌を隠そうともせず言ったのです。

。何をしに来たのですか?」

「…………は!?」

一瞬、私の思考が停止しました。

10歳の時に婚約してからは、家名ではなく名前で呼び合っていましたのに…彼は今、確かにドランダム公爵令嬢と言ったのです。

「トリスタン…貴方どうしましたの!?」

「えっと、スザンヌ様でしたっけ?トリスタン様に何か御用ですかぁ?」

「貴女誰ですの? 私はトリスタンと話しているのです。口を挟まないで下さいな」

「ひどい…聞いただけなのに…」

彼女は目に涙を溜めて、悲しそうに私を見た後、助けを求める様にトリスタンへ視線を向けました。
すると、彼が立ち上がり、まるで彼女を守る様にに立ったのです。

「君は、いつもそんな高圧的な物言いをしているのですか!?」

「何を言ってますの? 私がいつそんな…」

「トリスタン様。もういいですぅ。 きっと私がいけなかったんです…」

「可哀そうに、アリエル嬢…」

そう言って、彼女を慰めようと肩に手を置こうとした時…


バシッ!!


私はその手を叩き落としました。


「っ!! どういうつもりだ…?」

「…それはこちらのセリフですわ!」

剣呑な状況の中、場にそぐわない声を発する者が1人居た…

「スザンヌ様ひどいですぅ。どぉしてトリスタン様を叩くんですかぁ?」

「アリエル嬢、危ないので私の後ろへ…」

トリスタンは、前へ出てこようとした彼女を手で制し、自分の後ろに庇いました。

私がその行動に異を唱えようとした時、背後から声を掛ける者が居た。

「何をしているのかな? トリスタン…」

「ゲイル様…」

彼は私の隣に立ち、トリスタンへ冷たい視線を向けています。

「ゲイルか…君には関係ない事だよ」

「そうでもないよ。 スザンヌ嬢は友達だからね…彼女が傷つけばフェリシアが悲しむだろう?」

「どぉしてスザンヌ様が傷つくんですかぁ?」

トリスタンの後ろから、彼女が涙目で問い掛けて来ますが…

「…君知らないの? 彼はスザンヌ嬢の婚約者だよ」

「え!?」

彼女は私とトリスタンを交互に見る。
その驚き様から見ても、本当に知らなかったのだろう。

「何でトリスタンに婚約者が…前は居なかったのに…」と、ぶつぶつ何か呟いていますが、声が小さくて聞こえませんでした。



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