上 下
16 / 44

アリエルside

しおりを挟む
私はアリエル・インジャスタ男爵令嬢。

1ヶ月前、インジャスタ男爵の庶子として引き取られた孤児だ。


そして…私は転生者である……しかも2回目のね…

1回目は日本の成瀬綾子りょうこの記憶を持ってこの世界に来た。

8歳で男爵に引き取られ、15歳の魔力検査で前世を思い出したの。


綾子りょうこには好きな人が居たのだけど、その人には恋人が居たわ…



澤近さわちか麻衣子!)



やっとマンションを探し出し、持ってたナイフで刺し殺したのにっ!

あの女にたらし込まれた所為せいで! 彼は…私に見向きもしてくれなかった。


その内、警察が来て女子刑務所に送られたわ…

陰湿な虐めとリンチ……恐らくその過程で私は死んだのね。


気が付いたら15歳のアリエルになっていた。

あの乙女ゲーム…『あなたを癒す光の乙女』の世界だと分かった時は歓喜したわね…

シナリオ通り進めて第1王子を手に入れた時は楽しかった。

悪役令嬢フェリシア・カストリアを断罪し、断頭台送りにしてやったわ。

最高の気分だった……なのに、何故!?


今度はその記憶を持ったまま8歳に戻っていた…

(あのままだったらまた、あの継母ままははしいたげられるとこだったわね)


私は母に、貴族がこの辺りをうろついてると教えた。

少なくとも、あの継母ままははが死ぬ15歳までは父から逃げなくては…



ゲームの設定では…

『ヒロインの曾祖母が亡国の王女だった。

乳母の孫と1日違いで産まれて離宮で一緒に育てられていたけど、隣国に攻め込まれて乳母が涙ながらに入れ替えた。

知り合いの行商にまぎれて遥々はるばるこのフェザクール王国へ来て住みついた。

成人した曾祖母は画商と恋仲になり娘を産む。それがヒロインの祖母だ。

祖母が成人し結婚した相手は、画商に出入りしていた画家だった。

祖母と画家の間にまたもや娘が産まれ、画家が娘の成長を絵に描いた。それがヒロインの母親だ。

16歳の時の絵を男爵家の息子が気に入り、専属侍女にされ半年ほどで襲われた。

男爵家から逃げ出しヒロインが生まれて隠れる様に暮らしていた。

男爵の息子が家を継いで結婚したが子供が出来ず、はらませた専属侍女を探してヒロインを連れ去る。

その時母親が馬車にかれて死んでしまう。ヒロインが8歳の時だった。

8歳から継母ままははに虐げられ続け、15歳でようや継母ままははが死ぬ。

ヒロインが15歳になった時、魔力検査で光魔法を発動。

亡国の王族が誇っていた光魔法が隔世遺伝かくせいいでんで発現したのだ』



これがヒロインである私の前提設定…


だけど、前回は発現した光の魔力が、今回は何故か発現しなかった…

どうして…?

8歳の時に父から逃げたからシナリオが変わった?

でも、そんな事で魔力の質なんて変わらない筈でしょ?


何故真逆である闇の魔力が現れるのよっ!

ここは前回と同じ世界じゃないのかしら…?

似てるけど、違う世界…?

まさか検査前に前世の記憶があったからとか…?


これで、光の魔力での精神操作系魔法は使えなくなったけど…

(私自身の特殊スキルに魅了があるからまぁ、何とかなるかな?)




そして、入学式を迎えた今日。


学園に着くと、ヴェルドカインが弟王子と入り口に立っていた。

側を通る時、わざと段差につまづいた…


「あっ!」

「っ!! 大丈夫か?」

「ありがとうございま…す…!?」

「? どこか痛めたか?」

「あ…いえ……以前、馬車に…」

「ん?……ああ! あの時の」

「その節はご迷惑を…」

「いや、気にするな。 それにしても…貴族の御令嬢だったのか」

「あ…はい。 最近、インジャスタ男爵に引き取られまして…」

「そうか。 急に環境が変わるのは大変だろうが、男爵令嬢としてこの学園でよく学ぶといい」

「はい。では失礼します」


おかしいわね…前回は精神操作を主に使っていたからかしら…?
前と反応が違うわ…

やはり魅了だけだと、急には変わらないのかも知れないわね…

(これは…時間を掛けて浸透させていかなきゃね…)



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪女扱いした上に婚約破棄したいですって?

冬月光輝
恋愛
 私ことアレクトロン皇国の公爵令嬢、グレイス=アルティメシアは婚約者であるグラインシュバイツ皇太子殿下に呼び出され、平民の中で【聖女】と呼ばれているクラリスという女性との「真実の愛」について長々と聞かされた挙句、婚約破棄を迫られました。  この国では有責側から婚約破棄することが出来ないと理性的に話をしましたが、頭がお花畑の皇太子は激高し、私を悪女扱いして制裁を加えると宣い、あげく暴力を奮ってきたのです。  この瞬間、私は決意しました。必ずや強い女になり、この男にどちらが制裁を受ける側なのか教えようということを――。  一人娘の私は今まで自由に生きたいという感情を殺して家のために、良い縁談を得る為にひたすら努力をして生きていました。  それが無駄に終わった今日からは自分の為に戦いましょう。どちらかが灰になるまで――。  しかし、頭の悪い皇太子はともかく誰からも愛され、都合の良い展開に持っていく、まるで【物語のヒロイン】のような体質をもったクラリスは思った以上の強敵だったのです。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!

神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう....... だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!? 全8話完結 完結保証!!

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

悪役令嬢が死んだ後

ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。 被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢 男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。 公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。 殺害理由はなんなのか? 視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は? *一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」 婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで← うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

処理中です...