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彼女は…!?

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家族会議の翌日、疾風はやては出掛けて行った。

1日で戻ると言っていたから明日には帰って来ると思うけど…

「この部屋…こんなに広かったかしら…」

いつも一緒に居た疾風はやてが居ないだけで、こんなに寂しくなるなんてね…


「シア、入っていいかい?」

扉をノックしてお兄様が来ました。

「フェリシア様!」

「まあ! クリスティアナ様」

扉を開けてから顔を出したのは、今日会おうと思っていたクリスティアナだった。

「シアが外出禁止だから寂しいと思ってね。使いをやって呼んだんだ」

「嬉しいですわ! お兄様、ありがとうございます」

外出禁止にしたのはお兄様ですけどね。ふふっ。

「下でジェシカが茶会の用意をしてくれているよ」

「直ぐ行きますわ!」

私達が行った時には、もうお茶会の準備が出来ていた。
そして席に座っていたのはキャロライン…

「お兄様、お義姉様も呼んでくれたのね!」

「フェリシア。 会いたかったわ」

「私もです。 会えて嬉しいわ」

「さあ、シア。茶会を始めよう」

私達は席に着いて4人でお茶会を始めました。
外出禁止にはなりましたが、こういう所…お兄様は本当、私に甘いです。


少し経った頃、フェルドアが来ました。

「兄様、姉様。ずるいです、僕も入れて下さいよ…」

「フェル。授業は終わったの?」

「フェルドアはこの後、剣術の指導が入ってたんじゃなかったか?」

「うっ…そうでした…」(ちぇっ…姉様とお茶出来ると思ったのになぁ)

「フェルは将来、剣術に秀でたサーヴェント侯爵家を継ぐのですもの。頑張らなくてはね」

「可愛いマリベルの為なら、厳しい指導にも耐えて見せますよ」

そう、フェルドアは去年、マリベル・サーヴェント侯爵令嬢と婚約したのです。
今のフェルの言葉通り、相思相愛の仲ですわ。

フェルは攻略対象じゃないから、私の知る婚約関係では一番安心出来るカップルね。

ここにいるキャロライン、クリスティアナ、そしてミリアンナとスザンヌ…
皆、攻略対象の婚約者…

このまま行けば、不幸になるのは私だけじゃ無いと言う事よね。

ヒロインを放って置けば、皆…婚約破棄されてしまうのよ…

(私だけ、処刑なんだけどね……はぁ…)

「姉様? どうかしましたか?」

「ううん。何でもないわ。 剣術、頑張ってね」

「はい。 行って来ます!」

フェルドアは私達に手を振って、剣術の指導を受けに行った。


そして、楽しいお茶会は終わり…2人を見送った後…

「シア!!」

私はまた、倒れて意識を手放した。




「父上。 シアの容態は…?」

「心配無い。 魔力の枯渇こかつだ……疾風はやての方で魔力が必要だったのかも知れんな…」

「そうか…シアは疾風はやてと契約で繋がっているから…」

「そういう事だ…」

「これは予想して無かったけど…外出禁止にしておいて良かった…」

「そうだな。 疾風はやてが出掛ける時は外出禁止にしよう。どこで倒れるか分からんからな…」




―――疾風はやてside―――


(予定よりかなり遅くなってしまったな…)

俺は姿を消したまま直走ひたはしっていたが…
もうすぐ王都に着くという距離で、1台の馬車が目に付いた。

(もしかして、王家の馬車か…?)

いつも使っている馬車より、幾分か抑えた装飾の物だ…
直ぐに追い抜く事も出来たが、何となく後ろに着いて走っていた。

王都に入り、しばらくした頃…子供が馬車の前に飛び出して来た。
すると…子供を助けようと、ひとりの娘がその子供を突き飛ばした。

馬車は何とか直前で止まり、中から出て来たのは…

(第1王子か…!?)

王族として王家直轄領に視察へ出ていたのだろう…装飾を控えた大人し目の服装をしている。
馬車から出て来た事で、護衛に止められているが…

彼奴あいつはあれでも責任感の強い男だからな…)


「お嬢さん、大丈夫か?」

「あ、はい。私は平気です…あっ! さっきの子供はっ!?」

馬車の前に飛び出した子供は、面倒事に巻き込まれたくない親が連れて逃げた様だな。

(仕方あるまい…どうみても貴族の馬車だからな…)


「あれ? いない!?」

「怖くなって親が連れ帰ったのだろう…」

「でも…怪我が無いなら良いのだけど…」

「それよりも…君こそあんな事をしては危ないぞ?」

「すみません…」

「では、気を付けてな」

「はい」

王子は馬車に乗り込み、去って行った。

俺が後を追おうとした時、その娘がわらっていたような気がしたが…

(…? 気の所為せいか…?)


貴族街に入り少し走ると、カストリア邸が見えて来た。
敷地に入り人目の無い所で人型になる。

中に入るとセレムが迎えてくれた。

「ゲイル様、お帰りなさいませ」

「あぁ…フェリシアは?」

「また魔力の枯渇こかつで、昨日からお休み頂いております」

(あゝやはりか…)

「分かった。 マクシム殿は帰っておられるか?」

「はい。 書斎の方にいらっしゃいます」

「分かった。ありがとう」

フェリシアが寝ているなら、先に親御殿へ魔道具を渡すか。
明日にでも、国王へ届けて貰おう…

俺は書斎へ向かった。



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