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私、死にたくない
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―――ここはフェザクールの王宮だ。
おや……美しい庭園に囲まれた広場で、お茶会の準備をしているね…
その様子を2階のテラスから見ている2人の男の子が居るようだ―――
「なぁクィン。お前どんな令嬢が好みだ?」
「僕は母上みたいに綺麗で優しい令嬢がいいです。ヴェル兄様は?」
「俺か? 俺は面白い娘がいいな。見てて飽きない奴」
「そんな令嬢は居ないと思いますけど…」
「だろうな。 だから全然期待してないさ。大体婚約者なんて早過ぎなんだよ、そんなの学園に入ってからでも遅くないし…」
―――その時、2人の背後から1人の女性が近付いて来た―――
「あなた達が婚約者を決めないと、近い年齢の令嬢達が困るのですよ」
「「母上!」」
「何故令嬢達が困るのでしょうか?」
「自分の娘をあなた達の婚約者にしたいと言う親達が沢山いるからです」
「俺達に婚約者がいないと、今日来る令嬢達の親が諦めないという事?」
「その通りです。 ですからちゃんと選びましょうね?」
「はい」
「俺は……分かりました…」
「では、もうすぐ時間ですよ。 支度してきなさいな」
「「はい」」
―――片方は何か言いたげだったが、王子達は自室へ向かった。
その場に残った王妃はテラスの下、王子達の婚約者選別の為に設けられたお茶会の会場に目を向け呟いた―――
「息子達はどんな令嬢を選ぶのでしょうねぇ…」
―――――――――――――
―――――――――
――――――
――――
―――1台の豪華な馬車が、先程の王宮に向かって走っている。
この馬車の中には、綺麗なドレスを着た幼くも美しく、可愛らしい少女とその両親が乗っている様だ―――
「お父様、あれが王宮ですの?」
「そうだよ、フェリシア。大きいだろう」
「ええ、大きくってとても綺麗ですわ!」
「まぁフェリシア、お行儀悪いですよ。ちゃんとお座りなさい」
「ごめんなさい、お母様」
(いけない、つい興奮しちゃったわ)
「今日は王子様達が居るのですよ、きちんとご挨拶できますわね?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「ははっ! フェリシアは大丈夫さ」
「もう…貴方が甘やかすから、わたくしが厳しくするしかないのですよ」
「お母様のおかげで淑女らしく振舞えるのですわ」
「くっくっ……ジルベールもフェリシアには甘いからなぁ。 まだ小さいフェルドアは懐いているし…」
「フェルもお兄様も今日のお茶会に来れたら良かったですのに」
「仕方ないさ、今日は令嬢しか呼ばれていないからね」
「2人共、そろそろ着きますわよ」
今日は王宮で、10歳前後の令嬢を集めてお茶会を開催するそうですの。
子息達まで集めると、庭園の会場がいっぱいになってしまうらしく、男女で分けてまた別の日にするそうですわ。
この国の王子様は2人いて、その方達は男女両方のお茶会に出席するそうです。
「まあっ! 素敵な庭園ですわ!」
「フェリシア、騒いではなりませんよ」
「はい、お母様。 ねぇ、お父様…わたくし達が最後なのかしら」
「ん~、受付を片付けているからそうだと思うなぁ」
「お母様、あの奥の方へお花を見に行ってていいですか?」
「構いませんよ。 時間になったら戻っていらっしゃいね」
「分かりましたわ」
わぁ…庭園の奥はさらに美しいわねぇ。
あら? あっちに珍しい色の薔薇が咲いてるわ…
―――フェリシアは庭園に魅入られた様に奥へ奥へと入り込んで行った。
いつの間にか周りには誰もいなくなるが花に夢中で気付いていない―――
「薔薇に紫の色だなんて………とても綺麗だわ」
「お前は茶会の出席者なのか? 何故こんな場所に居る!」
「きゃあ!」
突然後ろから声を掛けられたので驚いて振り返ってみると、2人の男の子が立っていました。
「君は誰? ここは入って来てはいけない場所ですよ」
「え?」
言われて周りを見てみれば……他の令嬢達の姿が無いわ。
「ごめんなさい。珍しい色の綺麗な薔薇が見えて、好きな色だったからつい夢中になってしまったみたい」
謝ってから入り込んだ理由を告げると、何でだか2人共目を見開いたまま黙ってしまったわ。
「? あの…」
「その色……好きなのか?」
「ええ。とっても好きですわ!」
本当に好きな色だったので満面の笑みを浮かべて答えましたわ。
「「――っ!!」」
…また動かなくなりましたわ。2人共顔が赤いし、熱でもあるのかしら。
「どうかしました? 体調が悪いんですの?」
「なっ、なんでもない!」
「…体調は悪くないです」
「なら良かったですわ」
「……お前、名は?」
「あら。相手の名前を聞く時は、まず自分から名乗らないとですわよ?」
「っ! 俺はヴェルドカイン・フェザクールだ」
「…僕はクィンザルダン・フェザクールです」
―――相手の名前を聞いた瞬間、今度はフェリシアが固まった様だ―――
え? ヴェルドカインとクィンザルダンってこの国の第1王子と第2王子の名前じゃなかった?
そういえば今日子息は…というかこの2人の顔と名前をどこかで………
っ!? あ、頭の中に映像と声が……これは何?
『貴様に公開処刑を言い渡す!』
『あの世でアリエルに詫びるといいよ』
『彼女が受けた苦しみをその身を以て知るがいい!』
『楽に死ねるとは思うなよ』
『貴女の様な毒婦にはお似合いの末路ですよ』
『我が国で裁けたなら騎士達の慰み者にでもしてやったものを』
『お前の様な者が妹などと…我がカストリア家の恥晒しが!』
え? カストリア家って…
この人達は確か…それに、最後の人は…あ…場面が変わる……
ここは…牢屋!? 中にいるのは……私?
あっ! 彼女に…引き込まれるっ!!
『惨めだなフェリシア。さぁ出て来い! 貴様に相応しい所へ行くぞ!』
この人は第1王子?
痛いっ! 引っ張らないでっ!
『見えるか。貴様の為に特別に用意した物だ……刃がぼろぼろのな!』
あれは、断頭台!? まさかこれからっ!?
やめて!
いやっ!
離してっ!
死にたくないっ!!
『仰向けにしろ!! たっぷり恐怖を味わうがいい!』
いやああああああああっ!!!
『縄を切って刃を落とせっ!』
ザシュッ!
ガラガラガラガラッ!
ザンッ!!!!!
「きゃああああああああああああっ!!」
「っ!! お前っ!」
あ……れ? 目の…前…が……暗く………な…………って……
「大丈夫ですかっ!」
「誰か! 誰か居ないか!!」
「殿下っ! 何事ですかっ!」
「宰相! こいつがいきなり叫んで倒れたんだ!」
「この少女はっ! 急いでカストリア公爵を呼んで来るのだ!!」
「「「はっ!!!」」」
おや……美しい庭園に囲まれた広場で、お茶会の準備をしているね…
その様子を2階のテラスから見ている2人の男の子が居るようだ―――
「なぁクィン。お前どんな令嬢が好みだ?」
「僕は母上みたいに綺麗で優しい令嬢がいいです。ヴェル兄様は?」
「俺か? 俺は面白い娘がいいな。見てて飽きない奴」
「そんな令嬢は居ないと思いますけど…」
「だろうな。 だから全然期待してないさ。大体婚約者なんて早過ぎなんだよ、そんなの学園に入ってからでも遅くないし…」
―――その時、2人の背後から1人の女性が近付いて来た―――
「あなた達が婚約者を決めないと、近い年齢の令嬢達が困るのですよ」
「「母上!」」
「何故令嬢達が困るのでしょうか?」
「自分の娘をあなた達の婚約者にしたいと言う親達が沢山いるからです」
「俺達に婚約者がいないと、今日来る令嬢達の親が諦めないという事?」
「その通りです。 ですからちゃんと選びましょうね?」
「はい」
「俺は……分かりました…」
「では、もうすぐ時間ですよ。 支度してきなさいな」
「「はい」」
―――片方は何か言いたげだったが、王子達は自室へ向かった。
その場に残った王妃はテラスの下、王子達の婚約者選別の為に設けられたお茶会の会場に目を向け呟いた―――
「息子達はどんな令嬢を選ぶのでしょうねぇ…」
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―――1台の豪華な馬車が、先程の王宮に向かって走っている。
この馬車の中には、綺麗なドレスを着た幼くも美しく、可愛らしい少女とその両親が乗っている様だ―――
「お父様、あれが王宮ですの?」
「そうだよ、フェリシア。大きいだろう」
「ええ、大きくってとても綺麗ですわ!」
「まぁフェリシア、お行儀悪いですよ。ちゃんとお座りなさい」
「ごめんなさい、お母様」
(いけない、つい興奮しちゃったわ)
「今日は王子様達が居るのですよ、きちんとご挨拶できますわね?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「ははっ! フェリシアは大丈夫さ」
「もう…貴方が甘やかすから、わたくしが厳しくするしかないのですよ」
「お母様のおかげで淑女らしく振舞えるのですわ」
「くっくっ……ジルベールもフェリシアには甘いからなぁ。 まだ小さいフェルドアは懐いているし…」
「フェルもお兄様も今日のお茶会に来れたら良かったですのに」
「仕方ないさ、今日は令嬢しか呼ばれていないからね」
「2人共、そろそろ着きますわよ」
今日は王宮で、10歳前後の令嬢を集めてお茶会を開催するそうですの。
子息達まで集めると、庭園の会場がいっぱいになってしまうらしく、男女で分けてまた別の日にするそうですわ。
この国の王子様は2人いて、その方達は男女両方のお茶会に出席するそうです。
「まあっ! 素敵な庭園ですわ!」
「フェリシア、騒いではなりませんよ」
「はい、お母様。 ねぇ、お父様…わたくし達が最後なのかしら」
「ん~、受付を片付けているからそうだと思うなぁ」
「お母様、あの奥の方へお花を見に行ってていいですか?」
「構いませんよ。 時間になったら戻っていらっしゃいね」
「分かりましたわ」
わぁ…庭園の奥はさらに美しいわねぇ。
あら? あっちに珍しい色の薔薇が咲いてるわ…
―――フェリシアは庭園に魅入られた様に奥へ奥へと入り込んで行った。
いつの間にか周りには誰もいなくなるが花に夢中で気付いていない―――
「薔薇に紫の色だなんて………とても綺麗だわ」
「お前は茶会の出席者なのか? 何故こんな場所に居る!」
「きゃあ!」
突然後ろから声を掛けられたので驚いて振り返ってみると、2人の男の子が立っていました。
「君は誰? ここは入って来てはいけない場所ですよ」
「え?」
言われて周りを見てみれば……他の令嬢達の姿が無いわ。
「ごめんなさい。珍しい色の綺麗な薔薇が見えて、好きな色だったからつい夢中になってしまったみたい」
謝ってから入り込んだ理由を告げると、何でだか2人共目を見開いたまま黙ってしまったわ。
「? あの…」
「その色……好きなのか?」
「ええ。とっても好きですわ!」
本当に好きな色だったので満面の笑みを浮かべて答えましたわ。
「「――っ!!」」
…また動かなくなりましたわ。2人共顔が赤いし、熱でもあるのかしら。
「どうかしました? 体調が悪いんですの?」
「なっ、なんでもない!」
「…体調は悪くないです」
「なら良かったですわ」
「……お前、名は?」
「あら。相手の名前を聞く時は、まず自分から名乗らないとですわよ?」
「っ! 俺はヴェルドカイン・フェザクールだ」
「…僕はクィンザルダン・フェザクールです」
―――相手の名前を聞いた瞬間、今度はフェリシアが固まった様だ―――
え? ヴェルドカインとクィンザルダンってこの国の第1王子と第2王子の名前じゃなかった?
そういえば今日子息は…というかこの2人の顔と名前をどこかで………
っ!? あ、頭の中に映像と声が……これは何?
『貴様に公開処刑を言い渡す!』
『あの世でアリエルに詫びるといいよ』
『彼女が受けた苦しみをその身を以て知るがいい!』
『楽に死ねるとは思うなよ』
『貴女の様な毒婦にはお似合いの末路ですよ』
『我が国で裁けたなら騎士達の慰み者にでもしてやったものを』
『お前の様な者が妹などと…我がカストリア家の恥晒しが!』
え? カストリア家って…
この人達は確か…それに、最後の人は…あ…場面が変わる……
ここは…牢屋!? 中にいるのは……私?
あっ! 彼女に…引き込まれるっ!!
『惨めだなフェリシア。さぁ出て来い! 貴様に相応しい所へ行くぞ!』
この人は第1王子?
痛いっ! 引っ張らないでっ!
『見えるか。貴様の為に特別に用意した物だ……刃がぼろぼろのな!』
あれは、断頭台!? まさかこれからっ!?
やめて!
いやっ!
離してっ!
死にたくないっ!!
『仰向けにしろ!! たっぷり恐怖を味わうがいい!』
いやああああああああっ!!!
『縄を切って刃を落とせっ!』
ザシュッ!
ガラガラガラガラッ!
ザンッ!!!!!
「きゃああああああああああああっ!!」
「っ!! お前っ!」
あ……れ? 目の…前…が……暗く………な…………って……
「大丈夫ですかっ!」
「誰か! 誰か居ないか!!」
「殿下っ! 何事ですかっ!」
「宰相! こいつがいきなり叫んで倒れたんだ!」
「この少女はっ! 急いでカストリア公爵を呼んで来るのだ!!」
「「「はっ!!!」」」
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