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 第28話:卑怯だと思うの!

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 冒険者ギルドから逃げて再び噴水広場のベンチへと戻った愛那は悩んでいた。
 冒険者登録が出来ないことは残念だったが、攻撃魔法が使えるようになったことは収穫だった。
(だけど、ファンタジーな異世界のくせにステータスが無いなんて詐欺だわ・・・・・・)
 それよりも、これからどうしたらいいのかわからない。
 冒険者ギルドに行った一番の目的はお金を稼ぐためだった。
(衣食住のためにはお金。お金がいるの! ホントにもう・・・・・・)
「どうしよぉ・・・・・・」
(犯罪者にはなりたくないし・・・・・・)
「困ったなぁ。冒険者ギルドがダメならどこで稼げばいいのよぉ」
 泣き言を言っていたらどんどん寂しくなってきた。
 家に帰りたい。
 おじいちゃん。
 おばあちゃん。
 お母さん。
 みんな・・・・・・。
 元の世界に戻りたい。
「お腹すいたよぉ、今日どこで寝ればいいのよぉ・・・・・・」
 きゅるきゅる。
(あ、お腹が切なすぎて涙が出てきた)
 すん。と愛那が鼻を鳴らしたその時、背後から聞こえてきた足音。
 振り向いて確認しようとしたその前に。
(!?)
 突然、後ろから抱きしめられた。
「・・・・・・えっと、ごめんね? 捕まえた」
 愛那は硬直し、思考も停止した。
 いやらしさを感じないから嫌悪感はないが。
 若い、男の人?
「マナ。どうか逃げないで欲しい。君と話がしたいんだ」
 少し低音の優しい声。
(何? 誰? 何で私の名前を知ってるの? ていうか! 誰か分からないけど! そのッ・・・・・・!)
 フルフルと震えだす。
(このシチュエーションで、しかも! 私にその声でその台詞は! ・・・・・・卑怯だと思うの!)
 愛那は熱くなった顔を両手で覆った。


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