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第二章 下剋上編
第七話 作戦
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「南グループの情報機関に予告状、太陽が送れってうるさいから送ったけど千佳はさっさと敵陣に乗り込んじまえばいいと思うゾ?」
女がぼやく。
「…そう慌てなさんな…。…風の赴くままに…。」
男が静かにそう呟くと、
「報告です。S級舎弟の大地の王リソス様が…」
と平原に部隊を率いる集団に後からきた男が何かを女に伝えにきた。
「おおッ!でかしたゾ土屋!これはちょっと面白い遊びができそうだゾ!天宮!あの『兄弟』を呼ぶゾ!」
「………。」
「『兄弟』って…まさかあの『兄弟』ですか…?」
「そうだゾ!そして千佳達で祭りを始めるんだゾ!なあ天宮!」
「太陽殿にことわらぬのか…?」
「ちょっとぐらい大丈夫だゾ!ニシシシ!」
………………
「とは言ったものの、向こう側の要求を呑む訳にはいきませんし、こちら側から仕掛けるか、相手側の出方を待つか、どうしましょうか。」
黎は周りの意見を仰いだ。
「相手は何処にいるか分からないし、相手の出方を待つにしても、何処が襲われるかわからないわね…。海斗は深海に咲といることを考えると、私達には到達できない領域だし。そして何より反革命軍とはいえ…」
「十の掟其の四に基づいて死なせてはならない。ですよね。」
「ええ…。十の掟もそうだけど、なにより革命に反対してはいてもやっぱり私の舎弟だから、私は最後まで信じたい。」
お嬢はどこまでも素直だ。例え相手が寝返って自分の命を狙う者であろうとかつて仲間であった舎弟に対しての信頼、ここまで芯を曲げないのは流石だと黎は常々感じる。だがそんなお嬢だからこそ黎はお嬢が気がかりになる。
「八代、現段階で俺達が取るべき行動について何か案はありますか?」
「はい。まず御4方の性格について整理しましょう。まずは先程お話に上がりました。海斗様です。彼は江戸村様にお仕えしているので深海から陸に上がってくることは滅多にないかと思われますしとても慎重な方です。自ら何も考えずに飛び出してくる可能性は非常に低いかと思われます。」
4人は頷く。
「そして千佳様。革命前はリソス様に仕えているような身でしたがかなり気まぐれな方で事あるごとに問題を起こしてはリソス様と何度も衝突しているので一番最初に行動に出るのは彼女かと思われます。」
「なんか、主人に似てしまったんですかね…。」
「ええ、性格上一番の要注意人物かもしれないわね。」
「続いて天宮様です。彼も気分屋な所がありますが千佳様と違い自然に身を委ねている様子で自らの意思で他者に危害を加えることは滅多にありませんが、戦闘前の予兆の感度の高さは勿論のこと、一度戦闘の態勢に入るとその集中力は凄まじいものになります。」
「黎兄ちゃんの気配にもすぐに気づかれちゃうのかな?」
「ええ、恐らく彼なら俺の気配に気づくことは可能でしょう。」
「そして最後に太陽様ですね。彼は4人の中で最も強いと言われていますが卑怯な戦い方を嫌い、これはワタクシの予想ですが恐らく情報機関に予告状を送ったのも彼か、あるいは彼に命じられた誰かに送らせたものでしょう。ただ、恐らく文面的に彼本人のものではないと思うので後者の仮説の方が有力な気がします。」
「その予告状って記録みたいなものはあるのですか?」
「はい。こちらになります。」
『南グループは千佳達が占領するゾ?でももし降伏するのなら千佳達の傘下に入れてやってもいいゾ?ちゃーんと賢い選択をするんだゾ?』
4人は目を丸くして、その視線は八代に集まった。
「花梨ちゃーん?もしかしてあなた最初からぜーんぶわかってたのかしらー?」
お嬢は顔は笑っているが心が笑ってない。
「いえいえいえいえいえ!とんでもございません!ワタクシもこれを今改めて見てようやく気づいたところでござますッ!アハ、アハハハハ…」
お嬢が八代に詰め寄る。
「花梨ちゃん、後で、お・し・お・き・♡」
お嬢が八代の顔を撫で回した。
「ひえええええええ!?どうしてでございますかーーーーー!???」
八代は悶絶した。
「誰がどう見たって分かるじゃない。全く…。」
お嬢はため息をついた。
「ていうか上司も部下もやっぱりアホなんですかね…。」
屍の塔にて…
「ぶえっくしょん!!!」
「リソス様~、大丈夫ですか~?」
「リソスちゃんってば風邪ひいちゃった~?馬鹿でも風邪引くんだね~♡おもしろ~い♡」
「誰が馬鹿だブチ殺すぞ!!誰かが俺様の噂でもしてるんじゃねーか?全く、こっちは忙しいっていうのによ。」
「桃香達もう死んでるから殺すとか言われても全然怖くな~い。」
「うるせぇっ!!ったく!俺様は次の亡骸を山から取ってくるから、テメェらちゃんと仕事してろよ!?俺様の愛しの妻のためによ。」
そうするとリソスは竜化して竜の山へ飛び立って行った。
「そんなこと言われても桃香達、二階堂様の護衛ってだけだからぁ、平和な今はやることなくてつまんなぁ~い。そうだ!市香~またあのゲームしよ~よ!生きてた頃によくやってたやつ!」
「いいね!でも私達もう死んじゃったからあの時のハラハラした気持ちは生きてたとき程は味わえないけどね…。」
「いいじゃんいいじゃん!じゃあ、桃香が先手ね!1手で何回にする!?3回!?4回!?」
桃香がりんごを取り出して市香の頭に置いて、市香は両腕を上げてそれを支えた。
「も~桃香ってばずるいよ~。とりあえず3回にしよっか。」
桃香が嬉しそうにナイフを取り出した。
「わかった!それじゃあいっくよ~♡位置について~、それッ♡」
「ザシュッ!」
桃香の投げたナイフが市香の頭のりんごに刺さったが、市香の支えてる右中指から1mm程しか離れていない。
「あっぶな~い♡市香の中指がお釈迦になるところだったぁ~♡」
「もぉ~桃香ってば絶対わざとでしょ~。」
「ちょっと二人とも~、そんなくだらないことして怪我でもしちゃったら誰が治すんですか~?」
「二階堂様でぇ~す。」
「二階堂様でぇ~す。」
2人は二階堂を見て声を揃えて言った。
「じゃあ次2回目ね~♡」
屍の塔のふもとにて…
「千佳ちゃ~ん、こんなところに俺達呼び出して、一体なんの用や?」
カーキ色の軍服のような物を着て青龍刀を持った男が嬉しそうに聞いた。
「兄ちゃん~、俺達久々にシャバに出れたんやで~?またあん時みたいに遊べるんとちゃうか~?」
同じくカーキ色の軍服のような物を着て自動歩槍を担いでる男も嬉しそうに言った。
「お前らを呼び出したのは他でもないゾ!この塔をお前らの好きなようにしていいゾ?」
「ほ~う?面白そやないか?ほんで、この塔には何があるんや?」
「ここは屍の塔だゾ!死んでも死んでも蘇るアンデッドが腐る程いるんだゾ!『殺し屋兄弟』と呼ばれたお前らには楽しい遊び場だゾ!」
「アンデッド~!?なんぼでも殺し放題やないか~。でも、人間のほうが殺しがいあるやないか~?なぁ兄ちゃん?」
「楽しいのはそれだけじゃないんだゾ!この屍の塔には屍を召喚する南グループA級舎弟の二階堂レナと、その護衛に当たるお前らと同じ殺し屋と呼ばれるイカれた二人の市香と桃香がいるんだゾ!」
「ほう?あの二人がこんなところにおったんか?」
「殺し屋で凶暴って言ったら、やっぱあいつらだよなぁ~。」
青龍刀を持った男の笑顔が一瞬にして強張った。そして自動歩創を持った男に振り向き、
「チャキィン!!」
青龍刀をその男の頬に向けて、
「おい、おどれの傷、もう千針縫わせたろか?殺し屋で凶暴なのはわしや。」
と言うと今度は自動歩創を持った男が青龍刀の男の体に振り返り、
「カチャッ…」
歩創の銃口を青龍刀の男の体に向けて、
「てめぇの内蔵、もういっぺん移植させてもらうようしむけたろか?」
一瞬の静けさが漂った。
「…囃し立てなさんな…。」
沈黙を破ったのは天宮だった。
すると二人は互いに顔を見合わせたまま笑みを浮かべ、
「…冗談や!冗談ッ!!」
「こんなんよくある芸やろ~?」
「千佳様…あの兄弟、本当に大丈夫でしょうか?」
土屋が不安そうに千佳に耳打ちした。
「南源蔵様が南グループのトップだった頃にB級舎弟だったイカれた殺し屋兄弟で、青龍刀の方は事実上天宮の部下だった『騎龍』、歩創の方は千佳の部下だった『騎馬』だゾ。二人とも革命後も殺しの快楽に溺れて何人もの人を殺し続けて現在の南グループから破門され、監獄の独房にそれぞれ隔離されたんだゾ。」
土屋はそれを聞いていて血の気が引いた。
「そんなことより千佳はちょっと心配だゾ?1年間もずっと動けずにいると動きが鈍っ…」
「チャキィン!」
騎龍の青龍刀が千佳の左頬を掠め出血した。
騎龍と騎馬の表情が強張っている。
「口の利き方に気ぃつけろや?」
騎龍の隣の騎馬が歩創を肩に担いで千佳に言い放った。
「あなた達!何をしているのですか!?」
土屋が叫んだ。
「………。」
天宮は黙っている。
「…話を元に戻すゾ。アンデッドは二階堂レナがいる限り蘇るゾ!しかしその二階堂レナは自身を蘇らせる事が出来ないんだゾ!だからお前らは二階堂レナを殺せば事実上この塔を制覇した事になるんだゾ!」
千佳は両腕を組んで言った。
すると兄弟は再びにっこりした表情で、
「せっかくの千佳ちゃんからの遊びの誘いやし、断れへんな~。」
騎龍が青龍刀を担ぎ直して言った。
「男はやっぱり外で遊ぶに限るやろ~。」
騎馬も肩を鳴らしていた。
一方その頃お屋敷では…
お嬢のトランシーバーから突然音声が入った。
「緊急報告です!監視されていた監獄に何者かが襲撃し、『例の兄弟』が脱獄しました!」
お嬢と黎の顔は青ざめた。
「詳しく聞かせてちょうだい!!」
次回 第八話 意表
女がぼやく。
「…そう慌てなさんな…。…風の赴くままに…。」
男が静かにそう呟くと、
「報告です。S級舎弟の大地の王リソス様が…」
と平原に部隊を率いる集団に後からきた男が何かを女に伝えにきた。
「おおッ!でかしたゾ土屋!これはちょっと面白い遊びができそうだゾ!天宮!あの『兄弟』を呼ぶゾ!」
「………。」
「『兄弟』って…まさかあの『兄弟』ですか…?」
「そうだゾ!そして千佳達で祭りを始めるんだゾ!なあ天宮!」
「太陽殿にことわらぬのか…?」
「ちょっとぐらい大丈夫だゾ!ニシシシ!」
………………
「とは言ったものの、向こう側の要求を呑む訳にはいきませんし、こちら側から仕掛けるか、相手側の出方を待つか、どうしましょうか。」
黎は周りの意見を仰いだ。
「相手は何処にいるか分からないし、相手の出方を待つにしても、何処が襲われるかわからないわね…。海斗は深海に咲といることを考えると、私達には到達できない領域だし。そして何より反革命軍とはいえ…」
「十の掟其の四に基づいて死なせてはならない。ですよね。」
「ええ…。十の掟もそうだけど、なにより革命に反対してはいてもやっぱり私の舎弟だから、私は最後まで信じたい。」
お嬢はどこまでも素直だ。例え相手が寝返って自分の命を狙う者であろうとかつて仲間であった舎弟に対しての信頼、ここまで芯を曲げないのは流石だと黎は常々感じる。だがそんなお嬢だからこそ黎はお嬢が気がかりになる。
「八代、現段階で俺達が取るべき行動について何か案はありますか?」
「はい。まず御4方の性格について整理しましょう。まずは先程お話に上がりました。海斗様です。彼は江戸村様にお仕えしているので深海から陸に上がってくることは滅多にないかと思われますしとても慎重な方です。自ら何も考えずに飛び出してくる可能性は非常に低いかと思われます。」
4人は頷く。
「そして千佳様。革命前はリソス様に仕えているような身でしたがかなり気まぐれな方で事あるごとに問題を起こしてはリソス様と何度も衝突しているので一番最初に行動に出るのは彼女かと思われます。」
「なんか、主人に似てしまったんですかね…。」
「ええ、性格上一番の要注意人物かもしれないわね。」
「続いて天宮様です。彼も気分屋な所がありますが千佳様と違い自然に身を委ねている様子で自らの意思で他者に危害を加えることは滅多にありませんが、戦闘前の予兆の感度の高さは勿論のこと、一度戦闘の態勢に入るとその集中力は凄まじいものになります。」
「黎兄ちゃんの気配にもすぐに気づかれちゃうのかな?」
「ええ、恐らく彼なら俺の気配に気づくことは可能でしょう。」
「そして最後に太陽様ですね。彼は4人の中で最も強いと言われていますが卑怯な戦い方を嫌い、これはワタクシの予想ですが恐らく情報機関に予告状を送ったのも彼か、あるいは彼に命じられた誰かに送らせたものでしょう。ただ、恐らく文面的に彼本人のものではないと思うので後者の仮説の方が有力な気がします。」
「その予告状って記録みたいなものはあるのですか?」
「はい。こちらになります。」
『南グループは千佳達が占領するゾ?でももし降伏するのなら千佳達の傘下に入れてやってもいいゾ?ちゃーんと賢い選択をするんだゾ?』
4人は目を丸くして、その視線は八代に集まった。
「花梨ちゃーん?もしかしてあなた最初からぜーんぶわかってたのかしらー?」
お嬢は顔は笑っているが心が笑ってない。
「いえいえいえいえいえ!とんでもございません!ワタクシもこれを今改めて見てようやく気づいたところでござますッ!アハ、アハハハハ…」
お嬢が八代に詰め寄る。
「花梨ちゃん、後で、お・し・お・き・♡」
お嬢が八代の顔を撫で回した。
「ひえええええええ!?どうしてでございますかーーーーー!???」
八代は悶絶した。
「誰がどう見たって分かるじゃない。全く…。」
お嬢はため息をついた。
「ていうか上司も部下もやっぱりアホなんですかね…。」
屍の塔にて…
「ぶえっくしょん!!!」
「リソス様~、大丈夫ですか~?」
「リソスちゃんってば風邪ひいちゃった~?馬鹿でも風邪引くんだね~♡おもしろ~い♡」
「誰が馬鹿だブチ殺すぞ!!誰かが俺様の噂でもしてるんじゃねーか?全く、こっちは忙しいっていうのによ。」
「桃香達もう死んでるから殺すとか言われても全然怖くな~い。」
「うるせぇっ!!ったく!俺様は次の亡骸を山から取ってくるから、テメェらちゃんと仕事してろよ!?俺様の愛しの妻のためによ。」
そうするとリソスは竜化して竜の山へ飛び立って行った。
「そんなこと言われても桃香達、二階堂様の護衛ってだけだからぁ、平和な今はやることなくてつまんなぁ~い。そうだ!市香~またあのゲームしよ~よ!生きてた頃によくやってたやつ!」
「いいね!でも私達もう死んじゃったからあの時のハラハラした気持ちは生きてたとき程は味わえないけどね…。」
「いいじゃんいいじゃん!じゃあ、桃香が先手ね!1手で何回にする!?3回!?4回!?」
桃香がりんごを取り出して市香の頭に置いて、市香は両腕を上げてそれを支えた。
「も~桃香ってばずるいよ~。とりあえず3回にしよっか。」
桃香が嬉しそうにナイフを取り出した。
「わかった!それじゃあいっくよ~♡位置について~、それッ♡」
「ザシュッ!」
桃香の投げたナイフが市香の頭のりんごに刺さったが、市香の支えてる右中指から1mm程しか離れていない。
「あっぶな~い♡市香の中指がお釈迦になるところだったぁ~♡」
「もぉ~桃香ってば絶対わざとでしょ~。」
「ちょっと二人とも~、そんなくだらないことして怪我でもしちゃったら誰が治すんですか~?」
「二階堂様でぇ~す。」
「二階堂様でぇ~す。」
2人は二階堂を見て声を揃えて言った。
「じゃあ次2回目ね~♡」
屍の塔のふもとにて…
「千佳ちゃ~ん、こんなところに俺達呼び出して、一体なんの用や?」
カーキ色の軍服のような物を着て青龍刀を持った男が嬉しそうに聞いた。
「兄ちゃん~、俺達久々にシャバに出れたんやで~?またあん時みたいに遊べるんとちゃうか~?」
同じくカーキ色の軍服のような物を着て自動歩槍を担いでる男も嬉しそうに言った。
「お前らを呼び出したのは他でもないゾ!この塔をお前らの好きなようにしていいゾ?」
「ほ~う?面白そやないか?ほんで、この塔には何があるんや?」
「ここは屍の塔だゾ!死んでも死んでも蘇るアンデッドが腐る程いるんだゾ!『殺し屋兄弟』と呼ばれたお前らには楽しい遊び場だゾ!」
「アンデッド~!?なんぼでも殺し放題やないか~。でも、人間のほうが殺しがいあるやないか~?なぁ兄ちゃん?」
「楽しいのはそれだけじゃないんだゾ!この屍の塔には屍を召喚する南グループA級舎弟の二階堂レナと、その護衛に当たるお前らと同じ殺し屋と呼ばれるイカれた二人の市香と桃香がいるんだゾ!」
「ほう?あの二人がこんなところにおったんか?」
「殺し屋で凶暴って言ったら、やっぱあいつらだよなぁ~。」
青龍刀を持った男の笑顔が一瞬にして強張った。そして自動歩創を持った男に振り向き、
「チャキィン!!」
青龍刀をその男の頬に向けて、
「おい、おどれの傷、もう千針縫わせたろか?殺し屋で凶暴なのはわしや。」
と言うと今度は自動歩創を持った男が青龍刀の男の体に振り返り、
「カチャッ…」
歩創の銃口を青龍刀の男の体に向けて、
「てめぇの内蔵、もういっぺん移植させてもらうようしむけたろか?」
一瞬の静けさが漂った。
「…囃し立てなさんな…。」
沈黙を破ったのは天宮だった。
すると二人は互いに顔を見合わせたまま笑みを浮かべ、
「…冗談や!冗談ッ!!」
「こんなんよくある芸やろ~?」
「千佳様…あの兄弟、本当に大丈夫でしょうか?」
土屋が不安そうに千佳に耳打ちした。
「南源蔵様が南グループのトップだった頃にB級舎弟だったイカれた殺し屋兄弟で、青龍刀の方は事実上天宮の部下だった『騎龍』、歩創の方は千佳の部下だった『騎馬』だゾ。二人とも革命後も殺しの快楽に溺れて何人もの人を殺し続けて現在の南グループから破門され、監獄の独房にそれぞれ隔離されたんだゾ。」
土屋はそれを聞いていて血の気が引いた。
「そんなことより千佳はちょっと心配だゾ?1年間もずっと動けずにいると動きが鈍っ…」
「チャキィン!」
騎龍の青龍刀が千佳の左頬を掠め出血した。
騎龍と騎馬の表情が強張っている。
「口の利き方に気ぃつけろや?」
騎龍の隣の騎馬が歩創を肩に担いで千佳に言い放った。
「あなた達!何をしているのですか!?」
土屋が叫んだ。
「………。」
天宮は黙っている。
「…話を元に戻すゾ。アンデッドは二階堂レナがいる限り蘇るゾ!しかしその二階堂レナは自身を蘇らせる事が出来ないんだゾ!だからお前らは二階堂レナを殺せば事実上この塔を制覇した事になるんだゾ!」
千佳は両腕を組んで言った。
すると兄弟は再びにっこりした表情で、
「せっかくの千佳ちゃんからの遊びの誘いやし、断れへんな~。」
騎龍が青龍刀を担ぎ直して言った。
「男はやっぱり外で遊ぶに限るやろ~。」
騎馬も肩を鳴らしていた。
一方その頃お屋敷では…
お嬢のトランシーバーから突然音声が入った。
「緊急報告です!監視されていた監獄に何者かが襲撃し、『例の兄弟』が脱獄しました!」
お嬢と黎の顔は青ざめた。
「詳しく聞かせてちょうだい!!」
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