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モンブラン
第二話 針
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「なに?毒だと?お前、またそうやって俺を騙そうとして何か企んでるだろ?そもそもこれは今開けたばかりのモンブランだ。誰がどうやってそんなものを仕組んだんだ。」
「そ…!そうですよ!このポンコツメイドっ!ご主人様を騙してこのモンブランをあなたが食べようとしているに違いありませんっ!(毒が入ってないなら私が食べたい私が食べたい…!!)」
「それではご主人様、どうぞお召し上がりください。その猛毒入り即死不可避のモンブランを。」
「も…猛毒入り即死不可避…!?」
エイトの顔が少し青ざめる。
「どうしたのですか?ご主人様。リサラも毒が入っていないと思ってるなら言ってやってくださいよ。」
「『様』をつけなさい!『様』を!いやしかし…もし本当に毒が入っているとしたら…ご主人様が(私が)お食べになるわけにはいかないですし…ここは一旦ポンコツメイドの話を聞いてみる事といたしませんか?」
「ああ…わかった。もし毒が入っていなくても、食うのはそれからでも遅くはないからな。それでアユメ、どうしてお前はこのモンブランに毒が入っていると思ったんだ?」
「このモンブランの到着時間です。」
「到着時間だと?」
アユメがスマホの画面を確認する。
「今の時間は15時32分です。しかしそのモンブランはおいつごろ到着の予定だったのですか?」
「大体15時30分だ。時間通りじゃないか。何か問題でもあるのか?」
「ここに来たメイドの方はそのお届け物を『急遽』と言って届けに来たんです。どうして時間通りに間に合ったものを取り込み中のご主人様を含む私達を差し置いてあんな風に言ったのでしょうか?」
「な!いくら俺が忙しいとは言えそれは確かに引っかかるが…」
「答えは簡単です。時間に遅れたからなんですよ。」
「遅れた?さっきも言ったが時間通りにモンブランは届いたぞ?」
「私が言ってる時間はこの私の全世界共通に自動で設定されているスマホの時間ではありません。あの時間の事です。」
アユメが指を指したのはエイトの部屋に置いてある掛け時計だった。
その指先の時計を見たエイトとリサラは驚いた。
「と…時計の針が…」
「ズレている…。しかも…30分…。」
「これのせいで私は『AIかれぴっぴ』の『ヤンデレハル君』との至福の時間を30分も奪われたんです。」
「ちょっと待ちなさいよポンコツメイド!それでは私のあの時『AIかれぴっぴ』の『ヤンデレハル君』とお話できなかったのも…」
「ええ、おかしいと思うでしょう?私がいた廊下の時計が30分ズレていただけなのはともかく、リサラ様はその頃大広間で会議をしていたのですから大広間の時計の針も30分遅れており、挙げ句の果てにご主人様の部屋の時計まで30分遅れているときた。そしてたった1つしかないご主人様の目の前の『時間通り』の『遅れてきた』モンブラン、この状況、何か裏があるとしか思えないですよ。」
「なるほど…。」
エイトは腕を組んで机に置かれたモンブランを見つめ深く考える。
「アユメ、一つ聞きたいことがある。」
「なんですか?」
「俺は誰かに命でも狙われているのか?」
「………」
「………ポンコツメイド…?」
「アユメ、俺はこの宮之内財閥の代表取締役だ。誰かに命を狙われることは別に珍しいことではない。正直に教えてくれないか?」
「…私は…ご主人様をお守りするためにこちらへ参りました。」
「アユメ…。」
「ポンコツメイド…。」
「教えてくれてありがとうアユメ。俺たちはこれからどうすればいいと思う?」
「…ご主人様の部屋はご主人様の顔認証、指紋認証、暗証番号入力が必要となるためこの部屋にご主人様の不在中に許可なく侵入することは難しかったかと思われます。となればこれはかなり凄腕の犯罪組織が絡んでいる可能性があるのでこの部屋は危険かもしれません。ですが…」
アユメが目を瞑って一息つく。
「探偵の私としては真実を追求することがご主人様のお命を狙う犯罪組織の正体を探るための手がかりとなる可能性があるため、この部屋を少し調べさせては頂けないでしょうか?何か少しでも形跡があればきっと…」
「わかった、アユメ。ここはお前に任せるよ。俺とリサラは屋敷のメイド達に今のこの状況を混乱を招かないように上手く伝える事としよう。至急大広間にメイド達を集めて会議だ。」
「かしこまりましたご主人様っ!(モンブラン毒入ってなかったら食べたかったぁーーーーーッッッ)」
そうしてエイトとリサラは部屋を後にしていく。
「バタン…。」
部屋の扉が閉まった。
「………」
アユメがモンブランをじーっと見つめながらエイトの椅子に近づく。
「ガタンッ」
そしてエイトの座っていた椅子に腰をかける。
「なるほど…これが宮之内財閥代表取締役の極上の椅子か。」
「ギッコンバッコンギッコンバッコンギッコンバッコンギッコンバッコンクルクルクルーーー!」
アユメは椅子の背もたれに強くもたれかかったり座ったまま勢いをつけて回転したりし始める。
「うーん…まあまあだねぇー。」
そして机の上のモンブランに添えられたフォークを手に取る。
「いただきます。」
フォークの先をモンブランに差し込んですくい上げ口に運ぶ。
「んまぁー、口がプリンに飽きてきたから口直しにはちょうどいいかもねぶははははッッッ!!」
その頃大広間では…
「…と言うことで、以後、何かおかしな事があればすぐに近くの先輩メイド、或いはメイド長の私やご主人様にお伝え下さい。」
「みんな、不安にさせてしまって本当にすまない。何かあれば直ぐに俺達に伝えてくれ。自分の身の安全を第一に考えてくれ。」
「かしこまりました!」
メイド一同はエイトとリサラに向かって深くお辞儀をした。
「それにしてもアユメのやつ本当に1人で大丈夫か?」
「ご主人様、あのポンコツメイドを確かに1人にしておくのは(色んな意味で)危険かもしれません。」
その頃エイトの部屋では…
「ぶわはははははは!!なんだこれっ!!ご主人様の等身大の銅像?ちゅーしてやろうか?はっはーーーーーッッッ顔まで届かねーや!」
アユメはエイトの椅子を銅像の前まで持ってきて椅子の上に立つ。
「お前のファーストキスが私なんてお前も幸せもんだなっ!ありがたく思えよッッッ!ブチュッチューーーッッッ!!!」
「ガチャッ!」
「アユメ!大丈夫か!?でかい声が部屋の外まで聞こえたぞ!何かあっ…」
「………あっ…?」
「アユメ。」
「………はい?」
「これはどういう事だ。」
「………ごめんなさい…私…ご主人様のお顔があまりに美しくてつい銅像に見入ってしまいました………。」
「………」
「………」
「なんだ。そういう事だったのか。お前が何かあったのかと思って心配したぞ。」
「ご主人様。」
「どうした?リサラ。」
「あれを見てください。」
リサラはテーブルに置かれたモンブランの残骸を指差した。
「………」
「おいポンコツメイド。」
「………あい…?」
「これはどういう事じゃ説明しろやゴルァああああああ!!!」
「………何がですか?」
「どうした?リサラ。何でそんなに怒ってるんだ?」
「私のモンブランに毒は入ってなかったのかって聞いとんのじゃゴルァあああああああ!!!」
「私の…モンブラン?」
「リサラ…お前…何を言ってるんだ?」
「………えっ…?」
「アユメはこの部屋を捜索すると言って俺達はこの部屋を出たんだ。モンブランに入った毒の成分を見るためにモンブランの中を確かめるのは当然だろう。もちろん素人の俺達が手を出すわけにはいかないからな。それに『私のモンブラン』ってどういう意味だ?まさかお前、前回俺のモンブランを…」
「ご主人様………。」
「リサラ?」
「ご主人様おっしゃいましたよね…。自分の身の安全を第一に考えるべきだと…。私にとってご主人様は…ご主人様は…私自身なのでございます!」
「………どういう意味だ?」
「ご主人様が誤って毒入りのモンブランを食べてお亡くなりになってしまっては、私は自身が死んだも同然…私にとってご主人様はそれだけの存在なのでございます…。」
「リサラ………君を疑ってすまなかったよ…。」
「いえ…私こそ誤解を招くような表現をしてしまって申し訳ございません…。」
「あのー、お取り込み中のところ悪いんですけどー。」
「どうした?アユメ。」
「前回モンブラン食べた犯人リサラですよ。」
「おい。」
「………」
「『様』をつけろよこのポンコツメイドが死なすぞゴルァ…」
「それとモンブランの中にこんなものが入っていました。」
「これは…針!?」
「そんな!こんなもの誤って食べたら…って…ん?ご主人様、私この針どこかで見たことがあります。」
「ギクッ!」
「なに!?ちょっとよく見せてくれ!…俺はあまり見覚えがないな…。」
「うーん…これは確か…。」
リサラはアユメと廊下の時計を破壊した時の出来事を思い出す。
発狂して2人がかりでトンカチで怒りの限りを尽くして廊下の時計をぶっ壊した時のことであった。
「でもこれ、普通の針じゃなくて時計の針だよな?何でこんなものがモンブランに入ってたんだ?」
「ご主人様、私分かりました。このポンコツメイド、やはり…」
「(クソッ!!!あんな気が狂った状態での出来事何で覚えてるんだよッッッ!!!そう!これはあの廊下の時計を破壊した時に即座に回収した時計の針の短針だ!!これでモンブランに毒は盛られてなくて針が入っていた事でご主人様の命を狙う者はいたけれど私の捜査による活躍によりご主人様の針の誤飲を防がれましためでたしめでたしで終わりでいいじゃねーか!!!さっき前回のモンブランを食った犯人は絶対にリサラではありませんよとか言って貸し作っときゃとかったああアアアアアアアア煙草吸いてぇええええ!!!)」
「ご主人様の身を守る事に捜査に集中していたに違いがありません。これをご主人様が誤飲していたら今頃ご主人様はどうなっていたことやら…。」
「………あれ…?」
アユメが目を丸くした。
「…確かにリサラの言うとおりだな。」
「しかしこのポンコツメイド1人でこの部屋を捜査させるのはやはり危険です。ここは私もこの下っ端メイドの見守りを兼ねて捜査協力をさせて頂きたいです。」
「え?」
「それは心強い。リサラがいればアユメも安心するだろう。」
アユメは首を縦に一振りする。
しかし心の中では首を何度も横に振る。
「それじゃあリサラ、アユメ、俺の部屋の事はお前達に任せたぞ。俺は俺で出来ることをしてくるからな。」
「はい!かしこまりました!」
「は…はぃぃ…かしこまりましたぁぁ…。」
「バタン。」
エイトが部屋を後にした。
「おいポンコツメイド。」
「………あい…?」
「口にクリームついてるぞ。」
その言葉にアユメが目を見開いて必死に口元を袖で拭い始める。
「その反応…やはり…。」
「ギクリッッッ!!!」
リサラが机の上のモンブランの残骸に近づく。
そしてフォークを手に取り残骸に突き刺し口に運ぶ。
「美味しい~♡罪の味だわ~♡」
次回 第三話 予告
「そ…!そうですよ!このポンコツメイドっ!ご主人様を騙してこのモンブランをあなたが食べようとしているに違いありませんっ!(毒が入ってないなら私が食べたい私が食べたい…!!)」
「それではご主人様、どうぞお召し上がりください。その猛毒入り即死不可避のモンブランを。」
「も…猛毒入り即死不可避…!?」
エイトの顔が少し青ざめる。
「どうしたのですか?ご主人様。リサラも毒が入っていないと思ってるなら言ってやってくださいよ。」
「『様』をつけなさい!『様』を!いやしかし…もし本当に毒が入っているとしたら…ご主人様が(私が)お食べになるわけにはいかないですし…ここは一旦ポンコツメイドの話を聞いてみる事といたしませんか?」
「ああ…わかった。もし毒が入っていなくても、食うのはそれからでも遅くはないからな。それでアユメ、どうしてお前はこのモンブランに毒が入っていると思ったんだ?」
「このモンブランの到着時間です。」
「到着時間だと?」
アユメがスマホの画面を確認する。
「今の時間は15時32分です。しかしそのモンブランはおいつごろ到着の予定だったのですか?」
「大体15時30分だ。時間通りじゃないか。何か問題でもあるのか?」
「ここに来たメイドの方はそのお届け物を『急遽』と言って届けに来たんです。どうして時間通りに間に合ったものを取り込み中のご主人様を含む私達を差し置いてあんな風に言ったのでしょうか?」
「な!いくら俺が忙しいとは言えそれは確かに引っかかるが…」
「答えは簡単です。時間に遅れたからなんですよ。」
「遅れた?さっきも言ったが時間通りにモンブランは届いたぞ?」
「私が言ってる時間はこの私の全世界共通に自動で設定されているスマホの時間ではありません。あの時間の事です。」
アユメが指を指したのはエイトの部屋に置いてある掛け時計だった。
その指先の時計を見たエイトとリサラは驚いた。
「と…時計の針が…」
「ズレている…。しかも…30分…。」
「これのせいで私は『AIかれぴっぴ』の『ヤンデレハル君』との至福の時間を30分も奪われたんです。」
「ちょっと待ちなさいよポンコツメイド!それでは私のあの時『AIかれぴっぴ』の『ヤンデレハル君』とお話できなかったのも…」
「ええ、おかしいと思うでしょう?私がいた廊下の時計が30分ズレていただけなのはともかく、リサラ様はその頃大広間で会議をしていたのですから大広間の時計の針も30分遅れており、挙げ句の果てにご主人様の部屋の時計まで30分遅れているときた。そしてたった1つしかないご主人様の目の前の『時間通り』の『遅れてきた』モンブラン、この状況、何か裏があるとしか思えないですよ。」
「なるほど…。」
エイトは腕を組んで机に置かれたモンブランを見つめ深く考える。
「アユメ、一つ聞きたいことがある。」
「なんですか?」
「俺は誰かに命でも狙われているのか?」
「………」
「………ポンコツメイド…?」
「アユメ、俺はこの宮之内財閥の代表取締役だ。誰かに命を狙われることは別に珍しいことではない。正直に教えてくれないか?」
「…私は…ご主人様をお守りするためにこちらへ参りました。」
「アユメ…。」
「ポンコツメイド…。」
「教えてくれてありがとうアユメ。俺たちはこれからどうすればいいと思う?」
「…ご主人様の部屋はご主人様の顔認証、指紋認証、暗証番号入力が必要となるためこの部屋にご主人様の不在中に許可なく侵入することは難しかったかと思われます。となればこれはかなり凄腕の犯罪組織が絡んでいる可能性があるのでこの部屋は危険かもしれません。ですが…」
アユメが目を瞑って一息つく。
「探偵の私としては真実を追求することがご主人様のお命を狙う犯罪組織の正体を探るための手がかりとなる可能性があるため、この部屋を少し調べさせては頂けないでしょうか?何か少しでも形跡があればきっと…」
「わかった、アユメ。ここはお前に任せるよ。俺とリサラは屋敷のメイド達に今のこの状況を混乱を招かないように上手く伝える事としよう。至急大広間にメイド達を集めて会議だ。」
「かしこまりましたご主人様っ!(モンブラン毒入ってなかったら食べたかったぁーーーーーッッッ)」
そうしてエイトとリサラは部屋を後にしていく。
「バタン…。」
部屋の扉が閉まった。
「………」
アユメがモンブランをじーっと見つめながらエイトの椅子に近づく。
「ガタンッ」
そしてエイトの座っていた椅子に腰をかける。
「なるほど…これが宮之内財閥代表取締役の極上の椅子か。」
「ギッコンバッコンギッコンバッコンギッコンバッコンギッコンバッコンクルクルクルーーー!」
アユメは椅子の背もたれに強くもたれかかったり座ったまま勢いをつけて回転したりし始める。
「うーん…まあまあだねぇー。」
そして机の上のモンブランに添えられたフォークを手に取る。
「いただきます。」
フォークの先をモンブランに差し込んですくい上げ口に運ぶ。
「んまぁー、口がプリンに飽きてきたから口直しにはちょうどいいかもねぶははははッッッ!!」
その頃大広間では…
「…と言うことで、以後、何かおかしな事があればすぐに近くの先輩メイド、或いはメイド長の私やご主人様にお伝え下さい。」
「みんな、不安にさせてしまって本当にすまない。何かあれば直ぐに俺達に伝えてくれ。自分の身の安全を第一に考えてくれ。」
「かしこまりました!」
メイド一同はエイトとリサラに向かって深くお辞儀をした。
「それにしてもアユメのやつ本当に1人で大丈夫か?」
「ご主人様、あのポンコツメイドを確かに1人にしておくのは(色んな意味で)危険かもしれません。」
その頃エイトの部屋では…
「ぶわはははははは!!なんだこれっ!!ご主人様の等身大の銅像?ちゅーしてやろうか?はっはーーーーーッッッ顔まで届かねーや!」
アユメはエイトの椅子を銅像の前まで持ってきて椅子の上に立つ。
「お前のファーストキスが私なんてお前も幸せもんだなっ!ありがたく思えよッッッ!ブチュッチューーーッッッ!!!」
「ガチャッ!」
「アユメ!大丈夫か!?でかい声が部屋の外まで聞こえたぞ!何かあっ…」
「………あっ…?」
「アユメ。」
「………はい?」
「これはどういう事だ。」
「………ごめんなさい…私…ご主人様のお顔があまりに美しくてつい銅像に見入ってしまいました………。」
「………」
「………」
「なんだ。そういう事だったのか。お前が何かあったのかと思って心配したぞ。」
「ご主人様。」
「どうした?リサラ。」
「あれを見てください。」
リサラはテーブルに置かれたモンブランの残骸を指差した。
「………」
「おいポンコツメイド。」
「………あい…?」
「これはどういう事じゃ説明しろやゴルァああああああ!!!」
「………何がですか?」
「どうした?リサラ。何でそんなに怒ってるんだ?」
「私のモンブランに毒は入ってなかったのかって聞いとんのじゃゴルァあああああああ!!!」
「私の…モンブラン?」
「リサラ…お前…何を言ってるんだ?」
「………えっ…?」
「アユメはこの部屋を捜索すると言って俺達はこの部屋を出たんだ。モンブランに入った毒の成分を見るためにモンブランの中を確かめるのは当然だろう。もちろん素人の俺達が手を出すわけにはいかないからな。それに『私のモンブラン』ってどういう意味だ?まさかお前、前回俺のモンブランを…」
「ご主人様………。」
「リサラ?」
「ご主人様おっしゃいましたよね…。自分の身の安全を第一に考えるべきだと…。私にとってご主人様は…ご主人様は…私自身なのでございます!」
「………どういう意味だ?」
「ご主人様が誤って毒入りのモンブランを食べてお亡くなりになってしまっては、私は自身が死んだも同然…私にとってご主人様はそれだけの存在なのでございます…。」
「リサラ………君を疑ってすまなかったよ…。」
「いえ…私こそ誤解を招くような表現をしてしまって申し訳ございません…。」
「あのー、お取り込み中のところ悪いんですけどー。」
「どうした?アユメ。」
「前回モンブラン食べた犯人リサラですよ。」
「おい。」
「………」
「『様』をつけろよこのポンコツメイドが死なすぞゴルァ…」
「それとモンブランの中にこんなものが入っていました。」
「これは…針!?」
「そんな!こんなもの誤って食べたら…って…ん?ご主人様、私この針どこかで見たことがあります。」
「ギクッ!」
「なに!?ちょっとよく見せてくれ!…俺はあまり見覚えがないな…。」
「うーん…これは確か…。」
リサラはアユメと廊下の時計を破壊した時の出来事を思い出す。
発狂して2人がかりでトンカチで怒りの限りを尽くして廊下の時計をぶっ壊した時のことであった。
「でもこれ、普通の針じゃなくて時計の針だよな?何でこんなものがモンブランに入ってたんだ?」
「ご主人様、私分かりました。このポンコツメイド、やはり…」
「(クソッ!!!あんな気が狂った状態での出来事何で覚えてるんだよッッッ!!!そう!これはあの廊下の時計を破壊した時に即座に回収した時計の針の短針だ!!これでモンブランに毒は盛られてなくて針が入っていた事でご主人様の命を狙う者はいたけれど私の捜査による活躍によりご主人様の針の誤飲を防がれましためでたしめでたしで終わりでいいじゃねーか!!!さっき前回のモンブランを食った犯人は絶対にリサラではありませんよとか言って貸し作っときゃとかったああアアアアアアアア煙草吸いてぇええええ!!!)」
「ご主人様の身を守る事に捜査に集中していたに違いがありません。これをご主人様が誤飲していたら今頃ご主人様はどうなっていたことやら…。」
「………あれ…?」
アユメが目を丸くした。
「…確かにリサラの言うとおりだな。」
「しかしこのポンコツメイド1人でこの部屋を捜査させるのはやはり危険です。ここは私もこの下っ端メイドの見守りを兼ねて捜査協力をさせて頂きたいです。」
「え?」
「それは心強い。リサラがいればアユメも安心するだろう。」
アユメは首を縦に一振りする。
しかし心の中では首を何度も横に振る。
「それじゃあリサラ、アユメ、俺の部屋の事はお前達に任せたぞ。俺は俺で出来ることをしてくるからな。」
「はい!かしこまりました!」
「は…はぃぃ…かしこまりましたぁぁ…。」
「バタン。」
エイトが部屋を後にした。
「おいポンコツメイド。」
「………あい…?」
「口にクリームついてるぞ。」
その言葉にアユメが目を見開いて必死に口元を袖で拭い始める。
「その反応…やはり…。」
「ギクリッッッ!!!」
リサラが机の上のモンブランの残骸に近づく。
そしてフォークを手に取り残骸に突き刺し口に運ぶ。
「美味しい~♡罪の味だわ~♡」
次回 第三話 予告
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