漢方薬局「泡影堂」調剤録

珈琲屋

文字の大きさ
上 下
65 / 71
葦 始めて生ず

49

しおりを挟む
1月は行き、2月は逃げて、3月は去るというけれど。
春までの短い冬の季節はあっという間に過ぎて、4月、俺たちは無事に3年生になった。
といっても、教室の移動もなけりゃ席替えもなしで、特に何かが新しくなることもなかったから、感慨はあまりない。
光のよく入る講堂で始業式のタラタラした行事進行に付き合いながら、今年入ってくるらしい目一杯緊張している雰囲気の新入生たちの様子を眺めて、こそこそと隣のソノに話しかける。
ちなみに今は、講堂に目一杯並んだパイプ椅子の後ろから数えた方が早い席に、入口近い方から、モモ、ハヤシ、航太、ソノ、俺の順で座っていた。

「……そういや、お前、新入生の勧誘は手伝わなくていいのか? 一年の子、じゃねえや、もう二年だったわ、あの子だけでやるのは荷が重すぎるんじゃね?」

今の所はまだ新入生の入場段階だから、こそこそ話してようが悪目立ちすることはない。
最近はずっと赤本齧りつきっぱなしのソノも、俺に言われてようやく手元の本から新入生の方へと顔を上げて、眩しそうにそちらを見た。
……わかる、新入生側に明り取りの天窓があるから、そっち側は日差しが良く入って眩しいのだ。

「そうだな、チラシ配りくらいは手伝うか……。航太には当然手伝わせるとして、藤谷は……1次が9月だっけか。余裕、あるか?」

「あるって程はないけど、チラシ配りくらいなら手伝うぞ。学校行事で、どうせ来月も遠足あるしさ」

「…………そういやあったな、謎行事……。なんで最終学年でやるかね……俺ら受験生だぞ」

「……え、なになに? なんの話?」

呼んでなくても、大体ソノと話してると混ざってくるのが航太で、案の定混ざったがためにソノにチラシ配り強制参加を言い渡されている。

「ええー、今年こそはやらなくて済むと思ったのに!」

「さすがに一人はツキオカが可哀想すぎるだろ、俺達があの部始めた頃だって俺とお前の二人はいたんだから」

「でもさー、まだ俺たちいるんだから、部員の最低人数は足りてるじゃん」

「6月頃には参加できなくなるだろうが。来年ツキオカ一人になっちゃうだろ、よく考えろ」

ソノに言われて渋々チラシ配りは承諾した航太が、今度は隣のハヤシに話しかけている。
……そういや、アイツも将棋部どうすんだかな。
そう思ってハヤシの方を向けば、航太に追い詰められながらも、視線がちらっと合った。

「……俺のトコは、去年の冬に一年……は進級してたな、二年が2人入ってくれてるから問題ない。チラシ配りは手伝い行くけどな」

「俺達のとこは入らないのに、なんで将棋は2人も来てるんだよ、あんなに写真で天文部いいぞアピールしたのに……!」

「……お前の写真に惹かれた奴らは写真部行っちゃったんじゃね?」

ソノの冷静なツッコミに暫く放心した後、俺の写真で集客するなんて!とプリプリ怒り始めた。

「……航太くん、そろそろ声潜めないと始業式始まっちゃうよ」

とうとう、見かねたモモに注意されてそれでも腹に据えかねるのか、ソノにブツブツぼやいて、最終的に頭を撫でて宥められている。
……そうか、思ったより自分の写真で来てくれるって自信あったんだな、航太。

何だか、今年も去年と変わらずゆるい感じの始まりで、ほんの少し肩の力が抜けた俺は、壇上に上がった校長のあいさつを聞きながら一つ欠伸をした。







俺の家の方は、妹が寮に入ってしまったので、母と二人になった。
つまり実質一人暮らしみたいなものだ。
去年の春には俺と妹、ミワコさんとタケルにケイコもいたからすごく賑やかで煩かったし、時間に全然余裕がなくて生活を回していくのはキツかったけど、それはそれで楽しかった。
考えてみれば、一人で暮らしたことは今まで一度もなかったんだな、と思い出す。

去年の今頃、こうして教室の机に座っていた頃は、就職したら一人暮らしでも始めるか、なんてのも気軽に頭の隅で考えていたのに。

思わず重いため息をついた俺に、隣から航太がチラッと視線を投げて、また手元の教科書に視線を戻す。
……まあ、今授業の真っ最中だからな。
来週は模試もやるらしく、そういえばそろそろ公務員試験の方の申込書も貰いに行かなきゃなと思い出す。
学校から家に帰る途中で市役所によればいいだけだから、スマホでなんかするより直接行って貰ってきた方が早い。

まあ、今すぐじゃないし、来月は英検1級の受験もあるし、今日も帰りはセンセん家だな。
母さんの分があるとはいえ俺しか食わないメシだとどうしても適当になるし、放っとくとセンセの食生活悪化するし、それならセンセんちで作った方が早い。
この後の算段を俺が考えているうちに、今日の最後の授業は終わって(日本史だった)さっそく航太が話しかけてきた。

「……で、チラシ配りいつする?」

「……え、まず俺じゃなくてソノに聞くべきだろ。……あー、お前じゃ聞きづらいのか……。でも、ソノが配るって言ってんだから遠慮せずに聞きに行けよ」

「あんまり邪魔したくないんだけどなー……ソノ、チラシ配りいつやる?」

ほとんど授業ノータッチで赤本捲ってたソノだが、俺と同じように担任と教科担任には事前に話を付けたらしく、あんまり文句は言われていない。
集中しきってたのか、しばらく経ってからのろのろと顔を上げて、そのままグーッと伸びをした。

「悪い、全然聞こえてなかった」

「うん、こっちこそ悪い、邪魔しちゃって。 ……チラシ配り、いつやる?朝のうちの方がいいよな、帰りだと俺らが手が空く頃にはもう一年の下校時間始まってるしさー」

「そうだな……そもそもまだチラシ用意してないしな。……ツキオカとも打ち合わせしなきゃならないし、来週までに用意しとくわ」

最後のひと声は俺に向けてだろう。
目線をこっちに合わせてくるので、分かったと一つ頷いて、参考書をかき集めて帰り支度をする。

「アレ、藤谷、もう帰るの?ホームルームは?」

「今日、担任の都合で帰りなしって朝言ってたぞ。……じゃあまた明日なー、バイト行くわ」

「……藤谷なのにちゃんと先生の話聞いてんのすごいな! ン、また明日―」

……俺なのにってどういうことだってちょっと思ったが、航太を一睨みするだけで止めておく。
モモとハヤシとソノには手を振って、そのまま教室を後にした。










帰り道は桜があちこちに咲いていて、完全に春めいていたけど、センセの薬局は特に春になっても変わらない。
精々、冬の間にあったストーブが撤去されたくらいで、暗くて古くて独特の匂いのするいつものままだ。

俺が店の方を覗きに行くとセンセはいつも通りに診察台でカルテだか薬だかのチェックをしていた。
足音を忍ばせるようにしてそっと近寄ると、ゆっくり穏やかに顔を上げて、メガネを持ち上げて俺を見て優しく笑う。

「……お帰り、キヨくん。始業式今日だったんでしょ?」

「はい。まあ、俺んとこは持ちあがりだし、教室もそのままで席替えもないんで、何にも代わり映えしなかったですけどね。でも、しばらくぶりにいつもの顔見れてちょっとホッとしました」

「……そうだね、咲子ちゃん、しばらくは寮だもんね……」

「そうですね……、よく考えたら今まで一人で暮らすってやってなかったなって気づいて。……いや、母は変わらずいるんですけど、いつも通りにすれ違いなんで」

カバンをいつものカウンターに置いて、軽く薬局を見回すと、今日はリンさんはいなかった。
センセに聞いてみると、どうも代休を取ってるらしい。

「日曜日の分?はしっかり休みたいって言われて。 まあ、リンちゃんはさ、ここはバイトみたいなもんだから。居てくれればありがたいけど、本業の方で疲れてるならちゃんと休んだ方がいいなと思って」

「春先だから患者さん増えちゃったんですかね……大変ですね、皮膚科も」

「美容とかニキビ関係の患者さんがたくさん来ちゃったみたいだね。それでも、リンちゃんが経営してるわけじゃないから、少しは楽なんだろうけど」

会話しながら、いつもの掃除準備を整えていつものように店内の清掃をする。
最近は昔ほど小汚い魔窟じゃなくなったせいか、それともセンセが定住するようになってきたせいか、段々と顧客も増えてきているようだ。
それでもまだ閑古鳥なのはかわらないけど。

「……そういえば、センセのお祝い、やらずじまいでしたけど」

呟いたとたん、センセがもういいよ、と苦笑した。

「俺もそんなに気にしてないし、そもそも過ぎちゃってるし。キヨくん優しいから気になるかもしれないけど、ホントに気にしないで」

「はい、それは分かってるんですけど……なんか欲しいものとかないですか?」

箒で床を掃く手を止めて、センセの方を振り返るとやっぱり困ったように微笑んでいたけど。
困らせてでも、これだけはどうしても聞きたかった。

「特には……、あ、じゃあ、週末泊まりにおいでよ。俺も一人だからワイワイすると楽しいし。エミさんは忙しいから難しいかな」

パン、と手を叩いてセンセが笑う。
うん、俺に気を使ってくれたんだなって聞いたとたんに分かった。
それでもセンセと一緒にいれるのは嬉しいので、頷いて掃除を続ける。

「分かりました、じゃあ週末また来ます」

俺がここに来れるのはギリギリでたぶん6月くらいまでだろう。
今まではずっとセンセに残せるものを、と思っていたけれど、たぶん残していくだけだとセンセが寂しがるだけだ。
すっかり空になった部屋半分の妹のスペースを見るたび、俺の心の何かが空っぽになる、それをセンセにも味あわせてしまうだけだ。

だから、俺は残すだけじゃ無くその先につなげたい。
ただ、センセへの恋心を殺すんじゃなく、諦めるんじゃなく、その先へ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何も知らなかった

まるまる⭐️
恋愛
「ディアーナ、お前との婚約を解消する。恨むんならお前の存在を最後まで認めなかったお前の祖父シナールを恨むんだな」 母を失ったばかりの私は、突然王太子殿下から婚約の解消を告げられた。 失意の中屋敷に戻ると其処には、見知らぬ女性と父によく似た男の子…。「今日からお前の母親となるバーバラと弟のエクメットだ」父は女性の肩を抱きながら、嬉しそうに2人を紹介した。え?まだお母様が亡くなったばかりなのに?お父様とお母様は深く愛し合っていたんじゃ無かったの?だからこそお母様は家族も地位も全てを捨ててお父様と駆け落ちまでしたのに…。 弟の存在から、父が母の存命中から不貞を働いていたのは明らかだ。 生まれて初めて父に反抗し、屋敷を追い出された私は街を彷徨い、そこで見知らぬ男達に攫われる。部屋に閉じ込められ絶望した私の前に現れたのは、私に婚約解消を告げたはずの王太子殿下だった…。    

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 4巻発売中☆ コミカライズ連載中、2024/08/23よりコミックシーモアにて先行販売開始】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロが苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。 母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。 俺は生まれつき魔力が多い。 魔力が多い子供を産むのは命がけだという。 父も兄弟も、お腹の子を諦めるよう母を説得したらしい。 それでも母は俺を庇った。 そして…母の命と引き換えに俺が生まれた、というわけである。 こうして生を受けた俺を待っていたのは、家族からの精神的な虐待だった。 父親からは居ないものとして扱われ、兄たちには敵意を向けられ…。 最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていたのである。 後に、ある人物の悪意の介在せいだったと分かったのだが。その時の俺には分からなかった。 1人ぼっちの部屋には、時折兄弟が来た。 「お母様を返してよ」 言葉の中身はよくわからなかったが、自分に向けられる敵意と憎しみは感じた。 ただ悲しかった。辛かった。 だれでもいいから、 暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。 ただそれだけを願って毎日を過ごした。 物ごごろがつき1人で歩けるようになると、俺はひとりで部屋から出て 屋敷の中をうろついた。 だれか俺に優しくしてくれる人がいるかもしれないと思ったのだ。 召使やらに話しかけてみたが、みな俺をいないものとして扱った。 それでも、みんなの会話を聞いたりやりとりを見たりして、俺は言葉を覚えた。 そして遂に自分のおかれた厳しい状況を…理解してしまったのである。 母の元侍女だという女の人が、教えてくれたのだ。 俺は「いらない子」なのだと。 (ぼくはかあさまをころしてうまれたんだ。 だから、みんなぼくのことがきらいなんだ。 だから、みんなぼくのことをにくんでいるんだ。 ぼくは「いらないこ」だった。 ぼくがあいされることはないんだ。) わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望しサフィ心は砕けはじめた。 そしてそんなサフィを救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったのである。 「いやいや、俺が悪いんじゃなくね?」 公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。 俺は今の家族を捨て、新たな家族と仲間を選んだのだ。 ★注意★ ご都合主義です。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。みんな主人公は激甘です。みんな幸せになります。 ひたすら主人公かわいいです。 苦手な方はそっ閉じを! 憎まれ3男の無双! 初投稿です。細かな矛盾などはお許しを… 感想など、コメント頂ければ作者モチベが上がりますw

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

私は悪くありません。黙って従うように言われたのですから。

田太 優
恋愛
お貴族様に見染められて幸せに暮らせるなんて物語の世界の中だけ。 領主様の次男であり街の代官という立場だけは立派な人に見染められたけど、私を待っていたのは厳しい現実だった。 酒癖が悪く無能な夫。 売れる物を売り払ってでも酒を用意しろと言われ、買い取りを頼もうと向かった店で私は再会してしまった。 かつて私に好意の眼差しを向けてくれた人。 私に協力してくれるのは好意から? それとも商人だから?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

処理中です...