84 / 96
第三章 パパ
84.トラウマ
しおりを挟む
* * *
………疲れた。
私は一体、どうしたいんだろう。
結局、安藤先輩からの電話には一度も出ていない。
家に帰ってからも、何度か掛かってきたけど……会いたくなかったし、声も聞きたくなかった。
どうせ大学へ行けば、取り巻きを沢山引き連れた先輩を見掛けるし……その中にはきっと、大山さんの姿もある。
……もう、関わりたくない。
巻き込まれたくもない。
マウント下位の私とは、考え方も生き方も違うんだから。
*
……ぴちゃ、クチュ……
下肢の方から聞こえる水音。
ベッドの上に横たわり、立てた膝を割り開いて空気に曝け出せば、その中心に菱沼先生が顔を埋める。
「……」
相変わらず、先生は優しい。
無理強いはしないし、丁寧だし……私を物としてではなく、一人の人間として扱ってくれる。
安心……してるのかな。
でも、好きとか嫌いとか、そういう次元じゃなくて……もっと違う繫がりを感じる。
何だか、不思議──
太腿に添えられていた先生の手が、不意に私の手と重なり……そこから伝わってくる、温もりと優しさ。
……だけど……絡めた指に感じる、永遠を誓うリング。
「……果穂」
顔を上げ、空いた片手で前髪を搔き上げた先生が、劣情を含んだ裸眼で私を見つめる。
「……」
整った顔立ち。
色気のある、大人の雰囲気。
普段は細縁眼鏡を掛け、目付きの悪そうなつり目と取っつきにくいオーラのせいで、それに気付く人は多分殆どいない。
こうして間近で見て、初めて知り得る事実。私だけが知ってる、ちょっとした優越感。
繋いだ手を解き、先生が手をついて上へと上がってくる。
「挿れても、いいかな?」
「………はい」
先生を見つめたまま答えれば、僅かに呼吸の乱れた先生が、優しく私の身体を覆い包む。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……
凄い心音。私まで、緊張してくる。
……どうして先生は、私なんかを抱きたいと思ったんだろう。
地味な私を見て、緊張したり興奮したりするなんて……やっぱり変わってる。
でも、嬉しい。
必要とされてるって感じるし、何より……守られてる感じがする。
………疲れた。
私は一体、どうしたいんだろう。
結局、安藤先輩からの電話には一度も出ていない。
家に帰ってからも、何度か掛かってきたけど……会いたくなかったし、声も聞きたくなかった。
どうせ大学へ行けば、取り巻きを沢山引き連れた先輩を見掛けるし……その中にはきっと、大山さんの姿もある。
……もう、関わりたくない。
巻き込まれたくもない。
マウント下位の私とは、考え方も生き方も違うんだから。
*
……ぴちゃ、クチュ……
下肢の方から聞こえる水音。
ベッドの上に横たわり、立てた膝を割り開いて空気に曝け出せば、その中心に菱沼先生が顔を埋める。
「……」
相変わらず、先生は優しい。
無理強いはしないし、丁寧だし……私を物としてではなく、一人の人間として扱ってくれる。
安心……してるのかな。
でも、好きとか嫌いとか、そういう次元じゃなくて……もっと違う繫がりを感じる。
何だか、不思議──
太腿に添えられていた先生の手が、不意に私の手と重なり……そこから伝わってくる、温もりと優しさ。
……だけど……絡めた指に感じる、永遠を誓うリング。
「……果穂」
顔を上げ、空いた片手で前髪を搔き上げた先生が、劣情を含んだ裸眼で私を見つめる。
「……」
整った顔立ち。
色気のある、大人の雰囲気。
普段は細縁眼鏡を掛け、目付きの悪そうなつり目と取っつきにくいオーラのせいで、それに気付く人は多分殆どいない。
こうして間近で見て、初めて知り得る事実。私だけが知ってる、ちょっとした優越感。
繋いだ手を解き、先生が手をついて上へと上がってくる。
「挿れても、いいかな?」
「………はい」
先生を見つめたまま答えれば、僅かに呼吸の乱れた先生が、優しく私の身体を覆い包む。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……
凄い心音。私まで、緊張してくる。
……どうして先生は、私なんかを抱きたいと思ったんだろう。
地味な私を見て、緊張したり興奮したりするなんて……やっぱり変わってる。
でも、嬉しい。
必要とされてるって感じるし、何より……守られてる感じがする。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる