私を抱いて…離さないで

真田晃

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第三章 パパ

66.

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ブッブッ……

《この前は出来なかったから、今回は君とヤりたいんだけど、いい?》

私がオンラインである事に気付いたのか。新しいメッセージが直ぐに送られてくる。

「……」

当たり前のように、グイグイと押して畳み掛けようとする姿勢に嫌悪感が増す。
このはかせって人も、それだけ必死なんだろうけど。

〈解りました。待ち合わせはどこにしますか?〉
《じゃあ、駅前にある××ホテル。そこの○号室にいるから、今から来れる?》

「……」

××ホテルは、その界隈では名の通ったビジネスホテル。この近くだと、大学の最寄り駅にある。

〈ごめんなさい。今はその近くにいないので……〉

咄嗟にそう打ち込む。
待ち合わせ場所がいきなりホテルだなんて、幾ら何でも危険すぎる。
嫌悪感が不信感へと変わる。この危機察知能力でもある直感を信じて、送信ボタンに指を掛けた──時だった。


「──!」

背後から伸びる手。それに、軽々と携帯を奪い取られる。
驚いて振り返れば──そこには、安藤先輩の取り巻きの二人が立っていて、私を冷たく見下ろしていた。

「………へぇぇ。果穂ちゃんって、やっぱこーんな事してたんだぁー」
「見た目に反して、結構イタイ子じゃーん?!」

携帯を奪ったボブヘアの彼女が、画面を見ながら嫌な笑みを浮かべれば……もう一人のストレートロングヘアの彼女が、その画面を覗き込み、馬鹿にしたような笑い声を上げた。

「……」

どうしよう……ここが大学内の食堂だって事、すっかり忘れてた。
二人の顔色を窺う私を無視し、ボブヘアの子が親指を動かして何やら文字を打ち込む。

「……“オッケー。今からいくね♡ いっぱいサービスしてあげるー♡♡”」
「なに、ちょっこれ……由美のと文体全然違うんだけど」
「アハハ。ホントだぁー。何このやりとり。真面目過ぎて吐きそぉー」

過去ログを見ているのか。バカ笑いしながら画面をスクロールしている。先程の文を送信したのかは不明だけど、もしされてしまったのなら、直ぐに訂正文を送らないと……

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