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第二章 人と、金と…
57.
しおりを挟む「……はい、これ」
講義を終えた教室内で、いつものようにノートを纏めていると、突然視界の端に用紙を持った手が現れた。
顔を上げて見れば、案の定、そこには安藤先輩が。
「……」
「休んでた分のコピー」
「………ありがとう、ございます」
戸惑いながら受け取ろうとすれば、スッと意地悪く引っ込められる。
「へぇ。ノート、綺麗に纏めてるんだね」
「……」
私の横に立ち、片手を机に付いた先輩が、上からノートを覗き込む。
ふわりと香る、ミントグリーンの爽やかな匂い。その匂いに包まれ、整った横顔がすぐ近くにあれば、幾ら好きでは無くても……ドキドキ位はする。
でも、本当にそれだけ。
筆を止めたまま微動だにしなければ、先輩の唇がスッと耳元に近付き……
「……今日、家に来れる?」
「──!」
甘い囁き。熱い吐息。
それが耳にふわりと掛かれば、反射的に肩が竦み、驚きと警戒した目を先輩に向ける。
「………今日は、バイトがあるので……」
「……」
この前の夜といい、今日の昼間といい。どうして先輩は、私に拘るの?
どうして皆の前で『俺の彼女』だなんて言うの?
私は先輩が望むような、可愛くもないし、綺麗でもない。清楚でもギャルでもない。
もし本当に、仲間内で私をオトす罰ゲームでもしているのだとしたら……もう、終わりにしていいんじゃないの?
お持ち帰りした時点で、もう達成したんだから──
「そっか」
「……」
「じゃあ、ひとつだけ忠告しておくよ」
私の背後──背もたれ部分にもう片方の手を付き、先輩が再び私に顔を近付ける。
どの角度が自分にとって格好良く見えるのか、解っててやっているんだろうか。わざとらしくもなく絶妙な角度を保ち、外から差し込まれる光を含ませる瞳。その蜂蜜のように甘く潤んだ瞳で私を捉えながら、警告するように、少し尖らせる。
「アイツらに何言われても、誘いに乗っちゃ駄目だから」
「………」
「絶対、ね」
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