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第二章 人と、金と…
47.
しおりを挟むそれから暫く、何事も無かった。
すっかり風邪は治り、いつも通りの日常へと戻る。
「……果穂ちゃん!」
大学内にある図書館へと向かう私に、誰かが声を掛けてくる。
振り返ってみれば、それは、爽やかな笑顔を浮かべた安藤先輩で。侍らせた華やかな女子達が、地味な私を見てざわついた。
「……」
何も、こんなタイミングで声を掛けてこなくても……
居心地が悪くなり、ろくに返事もせず顔を背け、図書館へと駆け込む。
取り巻きの中に、大山さんの姿が見当たらなかっただけ、まだマシ。
ブッブッ……
窓際の通路を歩いていれば、ポケットの中にある携帯が震えた。
徐に取り出し、その画面を見れば──
《風邪、治ったみたいだね。良かった》
笑顔を浮かべたうさぎのキャラクターが、一文の後にスタンプされる。
「……」
こういうマメさには、感心する。
隙が無いというか……油断した途端、あの取り巻きの一員にされそうで。
……先輩自身、そう望んではないかもしれないけれど……
〈その節は、お世話になりました〉
何の色気も可愛げもない、淡々とした返事。
送信完了してから、気付く。……お礼がまだだったって事に。
〈色々助かりました。ありがとうございました。
タクシー代と差し入れの代金は、後でお返し致します〉
「……」
追加で文を打った後、送信ボタンを押そうとして……止めた。
幾ら何でも、素っ気なさすぎる。こういうのは面と向かって言わないと……
全文を消しホーム画面に戻すと、携帯を仕舞った。
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