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第二章 人と、金と…
41.おはようの、キス
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* * *
何だか……酷く身体が怠い。
頭もガンガンするし、心なしか吐き気さえする。
重い瞼をそのままに、片手で額を押さえながら、ごそごそとベッドの中で蠢く。
何となく感じる違和感。でもそれが何なのかまでは、解らない。
爽やかな匂いが私の身体を纏い、鼻孔を優しく擽る。
……この匂い、何処かで……
少しだけ、重い瞼を持ち上げた。
見知らぬ天井。
その瞬間。微睡みから一気に目が覚める。
……ここ、は……
殺風景な自分の部屋とは違い、綺麗でお洒落な部屋。インテリアやモノクロの色使いから、男性っぽさを感じた。
ケットから剥き出された部分が、何となく肌寒い。
天井から自分の胸元辺りに視線を移せば、それは──
「……おはよう、果穂」
聞き覚えのある声。
それに驚き、露出した肌を隠すように勢い良くケットを引っ張り上げ、首元まで覆う。
……え、どうして……
何で……ベッドに、裸で……
「よく眠れた?」
「……」
声のある方へと顔を向ければ、ベランダとは反対側の対面キッチンから、爽やかな笑顔を見せる──安藤先輩。
「………え、」
状況がよく飲み込めず、思わず声が漏れる。そんな私に、先輩が爽やかな笑顔を見せる。
「スープ作ったんだけど、飲む?」
「……」
「はは。……飲めたらでいいよ」
「………はい」
身体を起こそうとして、裸なのを思い出し、止める。
何で私が先輩の家にいるのか……それすらまだよく思い出せない。
キッチンから抜け出してくる先輩。
ベッド近くのローテーブルに、スープの入ったカップボウルがふたつ置かれる。
湯気の立つそのスープは透き通っていて、あっさりとした出汁の香りが辺りに広がった。
「……あの、私……」
声を掛けると、先輩がベッド端に腰を下ろす。
片手を付き、私の顔を覗き込めば、徐にもう片方の手が伸び、私の前髪にそっと触れる。
「おはようのキス、していい……?」
「……え……」
横髪と一緒に梳いた長い指先が、頬骨辺りまで滑り降り、優しく包む。
先輩の、潤んだ瞳。
瞬きもせず、その瞳をじっと見つめ返していれば……先輩の顔が視界一杯に迫り──
「……、!」
唇に触れられる、柔らかな熱。
一度軽く離された後、今度は少しだけ角度を変え、深いキスへと変わる。
「……ん、」
先輩の舌先が、閉じた私の唇をノックし、誠実な手段で咥内へと入ってくる。
歯列、顎裏、頬裏、……と優しく丁寧に咥内《ナカ》を愛撫され、舌に絡みつき、熱が与えられていく。
キスなんて、援交以外でした事なんかなくて。こんなに穏やかで、甘酸っぱくて、温かで、……気持ちいいものだなんて、知らなかった。
もしこれが、好きな人とのキスなら……どうなってしまうんだろう。
もっと、胸が高鳴って……もっと、多幸感に溢れるんだろうか……
そんな事を思いながら、ケットを離した手を、先輩の鎖骨辺りにそっと当てる。
──あれ、この感じ……
不意に、デジャブのような、不思議な感覚に襲われた。
何だか……酷く身体が怠い。
頭もガンガンするし、心なしか吐き気さえする。
重い瞼をそのままに、片手で額を押さえながら、ごそごそとベッドの中で蠢く。
何となく感じる違和感。でもそれが何なのかまでは、解らない。
爽やかな匂いが私の身体を纏い、鼻孔を優しく擽る。
……この匂い、何処かで……
少しだけ、重い瞼を持ち上げた。
見知らぬ天井。
その瞬間。微睡みから一気に目が覚める。
……ここ、は……
殺風景な自分の部屋とは違い、綺麗でお洒落な部屋。インテリアやモノクロの色使いから、男性っぽさを感じた。
ケットから剥き出された部分が、何となく肌寒い。
天井から自分の胸元辺りに視線を移せば、それは──
「……おはよう、果穂」
聞き覚えのある声。
それに驚き、露出した肌を隠すように勢い良くケットを引っ張り上げ、首元まで覆う。
……え、どうして……
何で……ベッドに、裸で……
「よく眠れた?」
「……」
声のある方へと顔を向ければ、ベランダとは反対側の対面キッチンから、爽やかな笑顔を見せる──安藤先輩。
「………え、」
状況がよく飲み込めず、思わず声が漏れる。そんな私に、先輩が爽やかな笑顔を見せる。
「スープ作ったんだけど、飲む?」
「……」
「はは。……飲めたらでいいよ」
「………はい」
身体を起こそうとして、裸なのを思い出し、止める。
何で私が先輩の家にいるのか……それすらまだよく思い出せない。
キッチンから抜け出してくる先輩。
ベッド近くのローテーブルに、スープの入ったカップボウルがふたつ置かれる。
湯気の立つそのスープは透き通っていて、あっさりとした出汁の香りが辺りに広がった。
「……あの、私……」
声を掛けると、先輩がベッド端に腰を下ろす。
片手を付き、私の顔を覗き込めば、徐にもう片方の手が伸び、私の前髪にそっと触れる。
「おはようのキス、していい……?」
「……え……」
横髪と一緒に梳いた長い指先が、頬骨辺りまで滑り降り、優しく包む。
先輩の、潤んだ瞳。
瞬きもせず、その瞳をじっと見つめ返していれば……先輩の顔が視界一杯に迫り──
「……、!」
唇に触れられる、柔らかな熱。
一度軽く離された後、今度は少しだけ角度を変え、深いキスへと変わる。
「……ん、」
先輩の舌先が、閉じた私の唇をノックし、誠実な手段で咥内へと入ってくる。
歯列、顎裏、頬裏、……と優しく丁寧に咥内《ナカ》を愛撫され、舌に絡みつき、熱が与えられていく。
キスなんて、援交以外でした事なんかなくて。こんなに穏やかで、甘酸っぱくて、温かで、……気持ちいいものだなんて、知らなかった。
もしこれが、好きな人とのキスなら……どうなってしまうんだろう。
もっと、胸が高鳴って……もっと、多幸感に溢れるんだろうか……
そんな事を思いながら、ケットを離した手を、先輩の鎖骨辺りにそっと当てる。
──あれ、この感じ……
不意に、デジャブのような、不思議な感覚に襲われた。
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