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第一章 初恋の人
7.
しおりを挟む「一気にスベって。全員、口ぱっかーんって開いちゃって。
……で、先輩が、『スベらんな~。ってスベるわ。てか冷めるわアホ!』って……」
「………あ、あの」
膝の上に置いた手をギュッと握り締める。
自虐ネタだったんだろう。笑顔で話す彼の言葉を遮ってしまった。
でも、そうしておきながら、次の言葉が中々出て来ない。
チラリと隣に目をやれば、楽しげに談笑する大山は、斜向かいに座るホストの方へと身体を向けている。
「………その、施設の話……って……?」
「ああ。別に………んー、
その話したら、きっと冷めるから……」
「──いえ。聞きたい、です」
美麗の表情が、少しだけ曇る。
相変わらずの笑顔だけれど、目が泳いで落ち着かない。
「…………参ったな。
あー、じゃあ。……うん。解った。
話すけど、引かないでね。嘘でも笑ってよ。絶対。……約束」
こくんと頷けば、立てた小指を出され……おずおずと、立てた小指を差し出す。
指切りげんまん──
指を絡め、触れた所が……熱い。
「えーっと、俺、……小二の時、かな。
施設に預けられた事あって。
そこ、こじんまりとした園みたいな所じゃなくて、学校並にでかくてさ。……まぁ、その分人数も多くて」
──マンモス施設。
確か、そう呼ばれていた。
近隣住民からは、施設があるから治安が悪くなったとか言われて。余り良く思われてなくて。何かトラブルがあるとすぐ、『施設の子』がやったに違いないと怒鳴り込まれた事が何度もあった。
「……で、学校で給食費が盗まれる事件があってさ。問答無用で、俺、居残りさせられて。
でも、他にも帰んないで席座ったままの奴がいるから、そいつらの顔見たら……全員、施設の奴らでさ」
「……」
……うん。あったね。
私も……居残り組だった。
あの時は皆、理不尽だって……ぶつくさ言いながら帰ってたんだよね。
「で、結局。先生が保管する場所間違えてただけっていう、オチ」
はは、と美麗が笑う。
なるべく場がしらけないように。
……でも、ごめん……
やっぱり、笑えない……
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