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しおりを挟むぶるぶるぶる……
上手く手に力が入らなくて。可笑しいほどに身体が震えてしまう。
「……」
助かった……筈なのに。
今になって襲い掛かる、強烈な恐怖。
「もう、大丈夫ッスよ」
半ばパニックに陥り、酷く震えながら浅い呼吸を繰り返すだけの僕を──モルが抱き締め、優しく受け止めてくれる。
「……」
その温かさに、安心する。
太一の時も、凌の時も……モルはずっと味方でいてくれたから。
「大丈夫ッスから……俺のコート、着て下さいッス」
この異様な光景を目の当たりにした岩瀬が、僕とモルから離れ、閉じられた玄関ドアを開ける。
「………! 若葉さんッ!!」
脱いだ春コートを僕の肩に掛けてくれたモルが、岩瀨の叫び声に反応する。
「ちょっと、待ってて下さいッス」
コートの前を閉じたモルが、僕から離れ岩瀬の元へと走って行く。
「……」
ドア向こうに消えていく岩瀨。
それを追うモル。
その様子をぼんやりと眺めながら、ふと脳裏を過ったのは──闇の中で鋭く光る、凶器。
「……アゲハ」
唇から溢れ落ちる、弱々しい声。
袖を通さず、春コートの前を内側から合わせた状態で、二人の後に続こうと足を一歩踏み出せば──
「───来るなッ!」
僕の動きに勘付いたのか、モルが強い言葉で制す。
「っ、……」
その衝撃に、心が竦む。
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