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しおりを挟むだけど直ぐに、嫌悪感を抱く。
まるで校則の模範生──真面目を絵に描いたような身形をしたこの男に、どうしてそんな事を聞かれなきゃいけないんだ。
「……ぼ、僕は、その……君に憧れを抱いています。
決められたレールの上を自ら退き、鋳型に嵌まらない自由な生き方をしていて。……そんなの、僕には到底真似できそうにないから」
「……」
突然、何を言い出すんだろう。
顔を真っ赤にして。僕なんかに緊張して。声まで震えて……
「格好いいです。……す、素敵です」
「……」
「……す、すす……す…き、……です……!」
言い終わるか終わらないかのうちに、伏せられる顔。瞼をギュッと閉じ、耳まで真っ赤に染めて。
「……」
驚いた。
まさかこんな所で、告白されるなんて……
「……べ、別に、僕は……男が好きって訳じゃない……と思う。男とキスなんて、想像しただけで気持ち悪いし……」
「……」
「でっ、でも! 君となら、抵抗がないというか。……し、してみたいって思える。
君の事を考えるだけで、勉強が手に付かなくなるし。君と……その、抱き合ったりキスをしたりする所を想像するだけで、この胸が熱くなって……堪らなくドキドキするんだ」
「……」
「これも、……男が好きって事に、なるのかな……」
ゆっくりと瞼を持ち上げ、少しだけ潤んだ瞳を伏せたまま握った右手を胸に当てる。
「……」
そんなの、考えた事もなかった。
竜一に初めてを奪われた時──心と心が重なったような感覚に陥り、そこから生まれた感情を自然と受け入れてしまっていたから。戸惑ったり悩んだり、疑問にさえ思わなかった。
もし、彼のように真っ当な人生を送っていたとしたら……僕も同じように、思い悩んでいたのだろうか。
性別を越えて芽生えてしまったこの感情が、憧れなのか、恋なのか。それすらも解らずに……
スッ、
左手を上げ、彼の方へと伸ばす。
色んなものを全部すっ飛ばしちゃったから、僕には何も答える事はできないけど──もしかしたら僕は、彼自身だったかもしれない。
「……」
そう思ったら、視線を上げ驚いた顔を見せる彼をそっと抱き締めていた。
若葉が僕に、そうしてくれたように……
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