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しおりを挟む「……」
そんなの、解ってる。
アゲハに近付こうと僕を踏み台にする女達が、決まって気持ち悪い程の笑顔を貼り付けながら、味方のフリをしてきたんだから。
「最近は報道も沈下して、ジャーナリスト達の姿を見掛けなくなったが……気を緩めない方がいい」
「……」
「“デジタルタトゥー”って言葉、知ってるかな? 一度ネットに流出してしまった:被害者リスト(データ)は、どんなに削除をしたとしても、決してこの世から消えたりしないんだ。誰かの端末に残っている限り、ね」
真剣な眼差しをした岩瀨が教えを説く。僕の気持ちなど、考えずに。
「……」
解ってるよ。
だから、怖いんじゃないか。
今までは、アゲハ目当てだろう女達を警戒すれば良かった。
けど……今は違う。どんな人が、どんな目的で僕を狙っているのかも解らない。
この前の暴漢のように、突然襲われるかもしれない。凌みたいに、長い時間を掛けて僕を貶めてくるかもしれない。
でも、この世の全ての人間を疑わなければならないなんて。
確かに僕は性悪だし、捻くれた性格をしているけれど。落とした鍵を拾ってくれた人にまで、疑惑を抱かなければならないなんて……僕には無理だ。
「兎に角、気をつけるんだよ」
正義感の塊のような笑顔を見せ、岩瀨の肉厚な手が僕の肩を二度叩く。
「……」
じゃあ、どう気をつければいいんですか?──去って行く岩瀨の背中を見送りながら、そう問いかけてやる。
きっとこの人は、双六のマス目とサイコロの出目に恵まれた人生を送ってきたんだろう。正に、人生の勝ち組。男らしい見た目も相まって、弱者側に立った事なんてないんだ。
だから、教科書に書かれたような知識を並べ立て、正論を振りかざしたただけの薄っぺらい内容ばかりで。脅すだけ脅しておいて、僕にとっての最良な解決策を親身になって考えはくれないんだ。警察官の癖に。
「……」
チリン……
握り締めた鍵をジーンズのポケットに押し込み、袋詰めの作業に戻る。
……でも。
倒れた僕の代わりに引っ越しの手続きをしてくれたのは、岩瀨だ。
若葉の友人みたいだし。そのお礼だけは、今度会ったらちゃんとしなくちゃ……
モヤモヤとした気持ちを飲み込み、レジ袋に詰める手を速める。
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