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ハイジの、匂い。息遣い。
合わせた肌と肌が……心地良い程に温かい。

「……」

一通り暴れて力尽きた僕は、電池の切れたおもちゃの如く事切れて、ハイジに身を委ねていた。

揺れた視界に映る、黒い揚羽蝶。
酷いミミズ腫れ。滲む鮮血。見るも無惨なその姿に、申し訳なさよりも安堵感の方が勝っていた。
これでもう、優雅に舞い飛ぶ事はないんだろう、と……

「………僕には、アゲハという兄がいて……」

それをぼんやり眺めながら、静かに口を開く。

「その兄を尋ねてきた、兄の友人に……突然、初めてを奪われたの──」
「……!」

竜一との間にあった事を、ゆっくりと打ち明ける。






『ぃたっ……、』

いつもは後ろからなのに。
僕をベッドに沈めた後、軽々と仰向けにひっくり返す。
乱暴にズボンと下着を剥ぎ取られ、膝裏に手を掛けられ──

「痛ぇの、好きだろ」

まだ傷の癒えていない窄まりに、男のいきり立った切っ先が宛がわれると、容赦なく最奥まで一気に打ち込まれる。


『……ぃ″ぃぁ、あ″ぁぁ″あ、っ──!』


三回目にしてこの体勢は、初めてで。ガラス玉の様に無機質な二つの眼が、悲鳴を上げ顔を歪める僕をじっと見下ろす。
その視線から逃れようと顔を横に傾ければ、晒した僕の首筋に男が顔を埋める。

『アゲハに似てんな』──瞬間、脳裏を過ったのは、初めて襲われた日の台詞。

……何者でもない。僕は、アゲハの身代わり。只の人形。
否応なく、思い知らされる。儀式の前に与えられる温もりも、重なり合う心音さえも……全て、アゲハのものなんだって。

全てを諦め、手放してしまえば少しは楽なのに──それが上手く出来ない。


……チリッ、
首筋を食まれた後、強く吸われ、火傷したように熱く痛む。

激しい律動。それに合わせ、ギシギシと軋むベッド。
腹の中で、男のモノが太く硬く育っていく。その度に感じる、強い圧迫感。後孔の襞が抉られるように擦れる度に、鋭い痛みが脳天を突き抜けていく。

ガクガクと手足が震えてしまうのは、この行為が……怖いから。

ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……
痛さから逃れる為に、何度も浅い呼吸を繰り返し、麻痺していく思考の中で……手を伸ばして竜一の腕を掴む。


───ガチャッ、

その時、ドアの開く音がした。
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